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3/11(土)社説

東日本大震災から今日で12年を迎える。現在も約3万1,000人が避難生活を強いられ、その内9割は福島の住民である。放射線量の高い自治体では、多くの住民が戻らず、復興が遅れている。
 特に福島県浪江町では、現在の人口は事故前の1割以下にとどまる状況である。浪江の山あいにある津島では全域が居住できず、かつてそこに住んでいた住民650人が国と東電を相手取り、線量を事故前の水準に戻すことを求めた訴訟については、1審が認められず決着がついていない。また、第1原発に溜まり続ける処理水や汚染土の受入れ先も決まっていない。
 こうした難題が積もる中で、昨年には原発事故で暮らしが一変した人たちの神経を逆撫でするかのような政策転換があった。既存原発の運転期間の実質的な延長や、原発建て替え推進に関する政策である。
 原発事故に早く区切りをつけたい政府と、長引く事故の影響から逃れられない元住民の間には大きな隔たりがある。しかし、住民は古里を奪われ、親しい人たちと交わりながら暮らす幸せも奪われ続けている。政府は原発回帰を急がず、住民の支援に力を入れる責任がある。

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