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【山羊日記#25】年々トトロ

先週はラピュタ。
今週は『となりのトトロ』だ。
金曜ロードショーさんと過ぎ行く夏。
今年もありがとうございます。

僕は年々トトロの見方が穏やかになってゆく。
「穏やか」
このニュアンス。

個人的な何かが幼少期にあったのか、僕は昔、トトロを観ると少し心の波にのまれていた。
ちょいと憂鬱な。

でも、ファンタジーだよね、トトロ、かわいい。観ていて癒される。なんて声の中でそんなこと言えなかった。

サツキとメイがもしかしたらお母さん、病気で死んじゃうんじゃないかと常に不安と隣り合わせでトトロにしがみついて夜の空を飛んで風になったり。夢だったけど夢じゃない朝を迎えたり。あったかい本当のおばあちゃんみたいなかんちゃんのおばあちゃんが野菜をくれたり、米をといでくれたり。

でも、お姉さんとしてしっかりしようとサツキは一生懸命メイの面倒をみたり、迷子のメイを汗だくになり、白い履き物も汚して遠くまで全力で駆けたり。

そんなサツキもついには顔をくしゃくしゃにして泣いたり。

メイはとうもろこし(とうもころし)をひしっと抱きしめ走っては派手に転んだり。

健気な姿が幼い僕をちょっぴり憂鬱にさせた。

ノスタルジーなんて感情もない頃の話です。

今は随所、台詞のない何気ない場面でぐっと涙の塩っぽい匂いがこみあげてくる。

トトロは色んな考察がされてるけど、僕はハッピーエンドのお話として上塗りしてゆきたい。

新しい発見もできるようになってきた。
庭に菖蒲(あやめ)が咲いていた。
エンディングでお母さんがサツキとメイに読んであげていた絵本のタイトルが『三匹の山羊』だった。
象徴的なのは沢山歯を見せるとこ。
わーーーーっと大きく口を開ける。
おとなになるとしなくなる感情を目一杯表情に出すこと。
ジブリ作品の中でもきっと一番虫歯のない歯をみせている。(トトロ、虫歯ない)

こんな風に色んなことに気がつくのはきっと今になってやっとトトロの世界に入ることができるようになったからなのだと思う。

となりのトトロはサツキとメイのお友達。

そう、このお話は悲しいお話じゃない。

このお話はおばけのトトロに出会った姉妹の一夏の物語。
お母さんの退院を心待ちにして、新しい友達や不思議な猫のバスで冒険した物語。

これからも観る度にとなりのトトロを「穏やか」に上塗りしてゆきたい。

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