【詩】朱い道

朱い道を一人の女が歩く

導かれた日にだけ潮が引く

一心不乱に女が歩く

朱い 朱い 一本道を 女は歩く

なんびとも決して近寄れぬ

朱い 朱い 濡れた道があるという

なんびとも決して見ることの出来ぬ

朱い 朱い 燃えた道があるという


宿では心臓や脳や目や耳や鼻や口や諸々の肉がつくられては眠りをくりかえす


迷うことなく女は歩く

朱い 朱い 一本道を 女は歩く

顔色ひとつ変えないで

招かれた日にだけ現れる道を女は行く

なんびとも止めることなど出来ぬ

もういっさいのことは邪魔なのだ

朱い 朱い 一本道は

女の背中が見えなくなると

干上がるように消えていった


 


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