4/44 はてしない物語

ある本を読んでいた時、なつかしい本が引用されていた。

『はてしない物語上』ミヒャエル・エンデ著 上田 真而子、佐藤 真理子 訳

『ネバーエンディングストーリー』という映画にもなり、小学生の頃に読んだ人は多いのではないかと思う。

残念なことに、私はこの本を小学生の頃に読んだ記憶はない。この本の引用を読み、「大人になってから子ども向けの本を読んでも面白いかもしれない、もしかしたら、昔よりも今の方が深く理解できるのではないか?」と思い、この本を読んでみた。

主人公は、残念なくらい地味な少年である。太っていて、美しくなく、スポーツも勉強もできない。いじめられっ子として、いつもいじめっ子に追いかけられている。でも、純粋な心と想像力は誰よりも光る才能を持っていた。

この物語がはじまる日も、朝からいじめっ子から逃げるために必死だった。いじめっ子から逃げるために入った不思議な書店、これが、彼と『はてしない物語』と書かれた本との出会いだった。少年は、その本の世界に引き込まれていく。そして、彼の冒険がはじまる。もういじめられっ子ではなく、勇敢に冒険を続け、世界を救う存在だ。

この本は子どもだけでなく、大人に対しても人生を示唆する言葉やストーリーが含まれている。

私は読み終わった時に、彼が持つ想像力と感じる力に嫉妬した。

私も彼のように、純粋に誰かのため、何かのために信じて進んでいる時があった。また、何時間も夢の世界に浸ることもあった。その夢の世界を実際に起きていることのように感じることが幸せな時間だった。もちろん、今もそのように楽しむ時間を持つこともある。しかし、この少年のように、そして、私が幼かった時のような大胆さや感性とは違う。

大人になる過程の中で、経験値が増える。そして、これは出来る、これは出来ないと、自分でルール、可能性、枠を設定する。この無意識に行われる判断で、夢を見るよりも過去の出来事から今と将来を見て、想像することよりも実現する可能性を取るようになる。これはよく目にし、耳にすること。

同時に、こうも考えてみた。

経験が増えるのだから、想像する力、夢を見る力も経験値と同様増えていくことも可能ではないか?ということ。

大人だって、想像する力や夢を見る力は持っている。

こんな世界になったらいいな。こんな商品があったらいいな。

現実社会の仕事でも、このような話をする。特に、世界が同時に大激変を強いられている今、全世界でつくりたい未来について想像し、語られている。

夢を語ることを躊躇するようになったのはいつのことだろう?

その答えは分からない。

『はてしない物語』に出てくる冴えない少年は、私に想像すること、夢を見ること、心で感じることの大切さを教えてくれたように思える。

大人になってから読む懐かしい本は、当時感じたことや、感じただろうこととは違った何かを教えてくれるかもしれない。そして、それが自分の価値観に大きな影響を与えるかもしれない。









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