17/44 ぜんぶ、すてれば

私が住んでいるカリフォルニア州パロアルトも、秋を感じる日々になった。

日中は真夏のように強い日差しがさすけれども、冷んやりとする風に触れた時に、もう夏から季節は秋に移り変わったのだと実感する。

2020年は世界中の人々にとって、能動的にも受動的にも変化する年になった。特に目に見える大きな変化はなかった人にとっても、心の中で静かに変化したものはあったのではないか?

もちろん、私にも大きな変化があった。

仕事に対する価値観、人生観、人間関係への考え方、ビジネスパートナー、生活スタイル。

そして、本当に自分が大切なものは何か?と問うこと。自分へ問うことが一番の変化だったのではないか。

本日の本は、

『ぜんぶ、すてれば』中野 善壽著

長く続く物質主義の世界の中でも、近年は、自分に本当に必要な最低限のモノや考えだけを大切に生きている人たちを見ることができる。

本人が持つポリシー、一貫した姿勢に、私もそうなりたいけれども、なかなか捨てきれないものを抱えているなぁと自分自身を振り返る。

シリコンバレーにも有名なミニマリストがいた。

スティーブ・ジョブス

そして、現在だったら

マーク・ザッカーバーグ

を想像する人が多いのではないか?

著者である中野氏は、伊勢丹、鈴屋、寺田倉庫と日本を代表する大々的に変革を実現した方であり、日本だけでなく、台湾・ニューヨーク・パリなど海外での生活も長く、私が目指し尊敬する前例のない生き方を実現している方である。

彼は、十分に持つことができる環境にいながらも、自由さを求めて所有しない生き方、執着のない生き方をしている。

持つことができない人が、持たないことを主張するよりも、持つことができる人が持たない主義を貫く方が説得力があるように感じる。

確かに、自分の立場や持ち物に執着をするばかりに、不自由になっている人がいる。世の人に自分をもっと大きく見せたいと、さらに持ち物を増やして身動きが取れなくなっている人を多く見てきた。

それで本人が幸せなら大いに結構な生き方だと思。そのような人を見て動機付けされる人々もいるのだから、私は大切な存在だと思う。

この本を読み終わった時に、10年以上前、ちょうど私が後継経営者として会社を継がせて頂く準備をしていた時のことを思い出した。

私がとても尊敬する女性経営者の方が、印象的な言葉を静かに発した。

「中小企業の経営者と政治家は、一生辞められないものよ。」これは、一生責任を取り続けるために辞められないという意味ではなく、確かにリスクや責任は大きいけれども、仕事のやりがいやその立場で受ける恩恵の大きさは手放せないくらい魅力的なもの。

という意味である。

私はこの時に、自分がいつ自分の会社を去るか決めた。なぜならば、いつまでも自分が主役で大きな顔をしているつもりはないからだ。今の私は、当時決めた時期よりも、もっと早く会社を去ることを決めている。

中野氏は、いくつもの大きな事業やプロジェクトの中で、自分のセンスを発揮してきているが、自分で時期を見定めたらスッキリと去る、住む国も、人間関係もそう。ドライな考えではなく、かなりウェットな考え方の方。

常に考えているから、瞬時に自分が経験から身に付けたルールを元に決断と実行ができる。

また、いつも自分の視点を持ちつつ、自分が分からないことは質問して教えてもらう、そして時にはハッタリでも勝負する。

それが中野氏の魅力となり、周囲の関係者の方の中では伝説になっているのではないか?

日本には

「飛ぶ鳥跡を濁さず」という古くからの言葉がある。

人には求めるけれども、自分が飛び立つ立場になると、そうもいかないことが多い。執着することが人間の本質なのかもしれない。

両手に何かを握り締め、背中にまで大きな荷物を背負っていたら、重くてなかなか前には進めない。新し物を得ようと思っても、掴むことができない。

2020年は物質的にも精神的にも手放すことが多かったが、中野氏のようにただミニマムなもので生きるのではなく、持ち物は最小限に、夢や行動は最大に生き続けたい。

ミニマリストの考え方や人は増えているように思えるが、ただの流行ではなく、自分の生き方として追求したい方々に是非読んで頂きたい。

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