玉骨遥 字幕版感想

いつか弟子が師匠を殺してしまう運命にある師弟のラブストーリーという設定を聞いたときから楽しみにしていた作品です。
一気見しましたので感想を。
あまりネタバレではない感想を書きますと、
朱顔が「シファ」と時影を呼ぶのがとんでもなくかわいい(中国語全くわからないのですが、漢字では師父とかなのでしょうか)
マスコットキャラクターこと(そんなことは言われていない)重明様が最高
時影の愛情深さが、私にはとっても刺さった
という感じでしょうか。
以下はネタバレあります。


全体

各キャラクターの言動がはっきりしていて、悪事やら悪事っぽいことに手を染める理由に納得感があるのが個人的に大変好みでした。
大悪党がいるというより、小悪党というか自分の利益を優先したい人たちの欲望がごちゃごちゃしていて、いってみればみんな「普通の人間」なのが物語としてとてもいい。
時影の周りだけでも、
・神に仕え、静かに生きていきたい時影
・かつての恋人の名誉回復のために、どうしても時影を還俗をさせたい大司命
・時影を危険に晒すことで、后土の指輪を見つけたい氷族(自分たちが虐げられているので、空桑を敵視している)
・時雨を世子にしたいので、時影が生きているなら亡き者にしたい青族
・少司命がかつての世子と知り、近づいて皇后になりたい白雪鷺
と、もうごっちゃごちゃ。
これが絡み合って物語が進んでいく中、誰も矛盾した動きをしていないし、納得感のない動きもしていない。
唯一、虚遥だけは「なんで雲荒を滅ぼしたいんだっけ?」感がありましたが、そもそも破壊神なのと、空桑が心の底からいい国ってわけでもないことを考えると、そう簡単に「悪」ともいえないこの感じがとてもいい。
この人間味のあるキャラクターたちの中で、その頂点にいるのは帝君かなと。
色々とダメなところが多すぎる人ですが、愛は大切だからと言って時雨に自ら正妻を選ばせて祝福したり、青王に青罡、白王に雪鷺を指名したり……結構普通にいいこともしています。
皇帝の器ではないかもしれないですが、人として最低過ぎる、とかまでは思えず。
みんな抱えた背景があって、それが語られるので、ストーリーに厚みが出て、とてもおもしろかったです。
メインどころで綺麗に回収されなかったのは海皇である蘇摩だけだったので、これが鏡につながるのかなと思って、最終回後に調べましたが、そちらの主役でした。まあ、そうですよね(納得)

青罡と白雪鷺

清廉潔白と生真面目が服を着て歩く男こと青罡と、自身の生き残りと母の名誉のために悪女を演じ続ける白族のお姫様の雪鷺。
こじれにこじれて、最後に一緒になれるパターンでは!?と序盤からドキドキ見ていました。
基本的に悪女ムーヴまっしぐらな白鷺ですが、表情で彼女の複雑な気持ちが全部伝わるし、雪鶯があまりにも純真無垢すぎていじめ抜けなかったり、努力家だったりするところがあって、それが序盤から垣間見えるのがとてもイイです。
だから最初から2人を応援できるんですよね。
ただの嫌な女だと、青罡の恋も全く応援できず「あんたにならもっといい人いると思うよ」とか言いたくなっちゃいますからね……笑
1番好きなシーンは、白王の前で青罡が
「夫婦になると約束したので」
「私が贈った玉佩、持ち歩いているな」
と言い切るところでしょうか(この裏でメイン2人は大変なことになっているんですが)
雪鷺にとって、青罡を選ぶということは自分のこれまでの人生のほぼ全てを否定するということです。
母の位牌を白王府に迎えるため、彼女は法術も勉強も必死に努力をしていますし、皇后になるために心の底から楽しんでやれるわけでもない悪事に手を染めてもいるわけです。
青罡の手を取るということは、そうやって積み重ねて手に入れようとしたものを全て諦めるということなんですよね。あの時点では。
それを諦められなかったからこそ、1度は玉佩だって捨てたと言って、青罡を拒絶したわけで。
それを聞いた上で、それでも「持ち歩いているな」と信じてくれたから、彼女はこれまで望んでいた全てを諦めて、彼を選んだんです。
そこまで彼女のことを信じ抜ける青罡もすごいし、これまでのことを捨てられる雪鷺もすごい。
ラスト、青罡が雪鷺と一緒に暮らしたいので青王は辞めますとスパッと言えちゃうところも含めて、この2人は本当に見ていて気持ちがとってもよかったです……!

時雨と白雪鶯

空桑の心優しき皇子と、控えめでかわいらしい白族のお姫さま。
傍系で苦労人な青罡と雪鷺の2人と違って、こちらは2人とも箱入りなので、純粋でかわいい恋を一生懸命している、という感じ。
個人的にこういうかわいいカップルがとても好きでして、この2人を幸せにできないならそんな国は滅ぼす!ぐらいの強火オタクとして序盤から応援していました笑
誰が雪鶯をたぶらかそうとしたのか、の話が出たときに時雨が
「私だ」
と名乗り出るシーンが1番好きです。めちゃくちゃ序盤ですが。
あそこでちゃんと言える人なら、かわいい雪鶯のことも預けられるってもんです(モンペの発言)
白族の地位は守りたいけど頭がキレる訳ではないし、人の心情は慮れないし、小物感しかない父と、功績を上げることが誠実さよりも勝ってしまっている兄、皇后になることに血道をあげる姉というトンデモ家族構成の中、これだけ柔らかく雪鶯が育ったのはある意味奇跡。彼女だけ兄や姉と立場が違ったというのもあるとは思いますが、理想のお姫様でした。
どうやら原作での結末はドラマと違っていて時雨が亡くなっているようでして、危うく私が空桑なんて滅びたらいいじゃない!と言いそうになったので、このラストで本当によかったなと思います。

赤淵/止淵

もう1つの師弟カプの片割れ、切なさNo.1な鮫族の好青年(200歳を超えてますが)
明確には語られてないですが、1人しか愛せない、というのは気持ち的な問題で、淵が心の底から「朱顔は生まれ変わり」と信じていると愛せるのだろう、と勝手に妄想しています。そもそも、顔もそっくりなので実は生まれ変わりじゃかない、と明かされたときにはかなり驚きました。
別に生まれ変わり設定でもよかったのでは?とも思ったのですが、本当の生まれ変わりではないからこそ、どれだけ術をかけられても朱顔が曜儀に変わることはなかった、という事実につながるような気もしているので、生まれ変わりじゃなくてよかったのでしょう(メインの2人からすれば)
朱顔とはいわゆる主従関係ですが、これまた私、恋愛としては結ばれないけど、絆は深い主従というのも大変に好みでして、この2人の関係性にも大変萌えました。
彼の1回目の死は本当にもう、どうしようもなかったと思いますし、本当にかっこよくて大満足でした。
まさか彼も蘇るとは思わなかったのですが、もしかして時影とライバルでありながら確かな友情もある、みたいな関係性でラストを迎えるんだろうか、そうしたら大団円だ!と妄想していました。
現実はそう甘くはなかったのですが、まあ、彼に関しては、ほかにラスボスの置き場もないのでしょうがなかったかな、と思うようにしてます……。

重明

玉骨遥の癒やし中の癒やし、マスコットキャラクター(個人の見解)の重明様。
全体のところに書いた通り、この物語は色々なキャラクターの思惑があって、ごちゃごちゃとしています。そのごちゃごちゃはこの作品に必要で、この作品の面白さ、奥深さの理由でもあるのですが、そんな感じで重いシーンが続きがちなので、なかなか「笑い」を作り出せないんですよね。
そんな中、緩急を生み出してくれるのが重明様(と朱顔)です。
ノリは軽く、優しく、信頼が置けて、そして何より、時影と朱顔の心に寄り添い、最初は時影の、そして途中からは2人の幸せだけを願ってくれる存在。
彼が画面にいるときの安心感たるや。
恋愛には疎いので、そこは全然頼りにならないのもご愛嬌。まだ2人に恋愛のれの字もなかったころから、薮をつつきまくっていた感もあって愛しさ倍増です。3人でわちゃわちゃしているシーンは、本当に癒しでしたし、なごみました。
なので、時影と朱顔が山を下りるときの別れは涙なしでは見られませんでした。
生きる長さも違う、場所も違う、でも確かな絆が3人の間にあって、それがとても尊くて、最後までずっと3人で一緒にいてくれたらいいのにと思って見ていました。
もしかしたら雪寒薇の咲くころには3人でまた笑い合える日が来たりするのかもしれないと妄想することにします。

時影と朱顔

この2人の恋は、とてもゆっくり進んでいきます。
どの言葉が決定的だったとか、どの行動が決定的だったとか、そういうことじゃなく、出会って、一緒にいるうちにお互いのよさを知って、恋に落ちていくからです。
時影の厳しさの中にある思いやりや優しさ、誠実さを素敵だなと思い、彼を慕い、少し融通の効かないところを愛しいと朱顔が思うようになるのも、朱顔の一生懸命さや無邪気さ、そして一心に世子を慕ってくれているところに時影の心が揺れて、表情が甘くなっていくのも、とても丁寧に描かれています。
想いが通じてからも、丁寧なシナリオ運びは変わらず。
例えば、大々的で楽しく、友人たちに囲まれた結婚式を望んでいた朱顔が、2人きりの結婚を最後の戦いの前に望むシーン。
「これから何かあるかもしれないから」なんていう漠然とした不安を理由にはせず、直前で「淵が式の真似事を迫ってきた」という流れがあって、次こそ、それが本物になってしまったらどうしようと思っているからこその行動だとわかります。

そういう1つ1つの丁寧な流れの先にあるラスト。
個人的には、
「いかなる運命も変えられぬことはない」
「愛があれば、人は天にも勝利する」
という時影から朱顔へ告白の台詞こそ、この物語の根幹だと思っていまして。
原作では2人は生きており、残りの人生を一緒に過ごすらしいので、普通にあそこから時影も生き残って、朱顔が
「時影が言ったのよ。いかなる運命も変えられないことはない。愛があれば、人は天にも勝利するって」
と言えばほぼ大団円だったのではと思わなくもなかったのです……が。
何度かラストを見返すうちに、もしかしたらそれは、運命を変えたとは、言えないのかもしれないと思うようになりました。
2人の間に横たわっている「朱顔が時影を殺す運命」は、1度目の時影の死があっても終わったわけではありません。だから朱顔は最初、時影を復活させた後、彼から離れようとしたわけですし。
ラストバトルで、2人は運命づけられた死に、正面から立ち向かっていきます。
朱顔は、師でもある時影と同じように民を救うことを1番に考えて私心を捨て、時影もまた、朱顔と民を救うために自らの命をかけます。
そしてそれをつないだものこそ、玉骨です。
玉骨の最初の持ち主である白薇皇后もまた「皇后の地位を捨てても、民を守ろうとした人」です。
時影が最期に言った、帰って来るという言葉を、彼が本気で言っていたかは怪しいと思います。最後の決断を朱顔にさせるための、説得のひとつでしかなくて、少なくとも確信めいたものはなかったのではないかと。
でもここで、奇跡は起きたのでしょう。
2人がそう「望んだ」から。
玉骨という法器に込められた、自分の写身を作ったり、誰かに変化できたりする力もたぶん、作用していると思います。
死の運命は避けられない。
けれど、2人は運命に敗北したわけではありません。
民を救い、虚遥を滅ぼし、2人は再会する。
この全ては、叶っています(じゃあ2人が時影が死なないことを望めばよかったのかというと、それでは虚遙は倒せないよ、になるのでバランスでしょうか)
大々的な婚礼は無理でも、雪寒薇が咲くころなら、2人で旅をすることだってできそうです。
2人のモチーフである宮商双星。最初から七夕伝説っぽいなとは思っていたのですが、恐らくそうなのでしょう。
70年後に空桑が滅びるという原作の「運命」も肯定しつつ、2人が運命の先で手に入れた幸せもちゃんとあるので、これはやっぱりハッピーエンドなのだと思います。
というか、そう思わないとやってられません!笑
最後に朱顔が時影に飛びつく終わりだったら、もっと超満足だったのは間違いないんですが、この後に幻のエンディングがあるんだなと思うようにします。

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