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コメディカルのための採血データ

血清総タンパク質(TP)

基準値 6.5~8.1g/dl

  • 血液中に含まれるタンパクの総量

  • 肝臓(タンパクの合成)や腎臓(タンパクの排泄)の異常診断に用いられることもあるが、主には栄養状態の把握に用いられる

  • 低タンパク血症になると体腔内に水分が漏出し (浮腫、胸水、腹水など)、息切れや消化器症状の原因となる

血清アルブミン(Alb)

基準値 3.8〜5.1g/dl

  • Albは血清総タンパクの約50〜70%を占めるためTP同様に栄養状態の指標に用いられる

  • 臨床上は低値が問題となり、高値で問題になることはほとんどない

低タンパク血症、低Alb血症では栄養障害の進行を防ぐことが重要であり、必要に応じて摂食嚥下や栄養サポートへの介入を行う

  • 過度な負荷は疲労や栄養障害を助長するため、負荷量の設定には十分注意が必要である

  • 高タンパク血症で脱水の場合には水分摂取を促す

  • Albが2.5g/d以下になると身体所見上、浮腫がみられるようになる(特に下腿〜足背部)

  • 浮腫が長期化すると関節可動域障害や筋力低下の原因にもなるため、関節可動域練習や自動運動を考慮する

総コレステロール(TC)

基準値 130~220mg/dl

  • 高コレステロール血症は動脈硬化のリスクファクター

  • コレステロール値の測定は生活習慣病検診に欠かせない

HDLコレステロール (HDL-C)

基準値 男性37~57mg/dl 女性41~66mg/dl

•動脈硬化を抑制する効果があり善玉コレステロールとも呼ばれる

LDLコレステロール(LDL-C)

基準値 55〜140mg/dl

• 動脈硬化を促進する作用があるため悪玉コレステロールと呼ばれる

LDL/HDL比
・近年ではコレステロールの管理にLDLとHDLの比であるL/H比(LDL÷HDL)が用いられる
・L/H比は動脈硬化進行の指標として注目されており、L/H比が高ければ動脈硬化が進展しやすく、心筋梗塞などを起こす危険性が高くなる
・動脈硬化を防ぐためにはL/H比2.0以下、高血圧や糖尿病など複数の生活習慣病を持っている人であれば1.5以下で管理されることが望ましい

クレアチニン(Cre)

基準値 男性0.7〜1.2mg/dl  女性0.6〜1.0mg/dl

  • Creは糸球体濾過能と密接な関係があり、腎機能障害の指標として極めて有用な検査である。

  • 一般的にはBUNとの比を腎機能の指標として用いられることが多い

  • BUN/Cr比が10以上:脱水、ショック、心不全、消化管出血など

  • BUN/Cr比が10以下:肝不全、慢性腎不全など

  • 水分出納(水分摂取量、尿量、体重)を観察し、腎不全や心不全の徴候に注意する

  • 腎臓は血圧調節にも深く関与していることからVital signの変動にも注意が必要である(特に透析患者)

  • 過負荷な運動は腎血流量を減少させ、腎臓への負担を増大させるため、負荷量の設定に注意が必要である

  • 脱水、大量の発汗、嘔吐、下痢など水分出納に注意する

  • 高齢者では容易に脱水に陥りやすいので、少量頻回に水分補給を行う

尿素窒素(BUN)

基準値 8~20mg/dl

  • BUNは肝臓での尿素窒素合成の低下や、腎臓での排泄減少などによって変動し、腎機能あるいはその他全身諸職器の機能の指標になる

赤血球(RBC)、へモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Hct)

赤血球(RBC) :血液中の赤血球数
 基準値 男性430万~570万/μl    女性380万〜500万/μl
へモグロビン(Hb):赤血球中のヘモグロビン濃度
 基準値 男性14〜18g/dl      女性12~16g/dl
ヘマトクリット(Hct):血液全体に対する赤血球の容積比率
(貧血や多血症など赤血球造血異常の診断に用いられる)
 基準値 男性40〜50%        女性36〜42%

  • 貧血が問題となることが多い

  • 特に外科術後や外傷など出血傾向にある場合には貧血を起こしやすく、動悸、息切れ、頭痛などの自覚症状を訴える

  • 立ちくらみやめまいによる転倒に注意が必要である

C反応タンパク(CRP)

基準値 0.6mg/dl以下

  • 急性炎症(細菌・ウイルス感染)あるいは組織崩壊病変(手術後、熱傷、心筋梗塞など)で増加する炎症マーカー

  • 疾患を特定することはできないが炎症の存在・活動性・重症度の判定に有用

白血球数(WBC)

基準値 3500〜9000/ul(成人)

  • WBCは組織傷害の修復などに関与

  • 炎症など急性的変化の場合にはCRPと相関することが多く、外科術後や外傷など急性炎症期には炎症反応の指標となる

発赤、腫脹など局所的な炎症症状が強い場合にはリハビリ前後に寒冷療法を行うなど炎症の改善を図る

  • WBCが減少している場合は免疫機能が低下し感染しやすくなるためスタッフが感染の媒体にならないよう注意する

  • 抗生物質や抗癌剤など使用している場合には全身倦怠感、関節痛や筋肉痛を訴えることもある為、リハビリの負荷量を下げることも考慮しなければならない

血小板(Plt)

基準値 15〜40万/μl

  • PLTは損傷した血管に粘着し、止血を促進する作用がある

  • PLTが低下すると出血傾向になるが、逆に多すぎると血栓傾向になり脳梗塞や心筋梗塞のリスクになる

  • 血小板数が70万/μlで血栓症の危険性が高くなる

  • 血小板が低下している場合には摩擦、打撲、外傷などにより出血を起こさないように注意する

  • 貧血を伴う場合にはめまいによる転倒にも注意する

血糖(BS)

・血液中に存在する糖質のことで糖代謝異常症や関連疾患の診断、経過観察などに有用
・血糖値は食物の摂取状況で変動するため、一般的に糖代謝の診断は朝の空腹時血糖で判定される

75Gブドウ糖負荷試験 (OGTT)

  • 空腹時にブドウ糖(75gブドウ糖液)を経口投与し、その後30分毎に採血し、2時間までの血糖値を測定する

  • 糖代謝異常を検出することにより、糖尿病の診断に有用

糖化へモグロビン(HbA1c)

基準値 4.3〜5.8%

  • 赤血球の寿命(120日)から、 糖尿病患者の1〜2カ月の血糖のコントロール状態を反映する重要な指標

  • 食事にも影響されないため、糖代謝の診断に最も有効な検査方法

  • 運動療法には血糖を下げる効果があるため、積極的な介入が望ましい

  • 糖尿病には合併症(網膜症、神経障害、腎症)も多く、さらに低血糖発作を起こす危険性も高いため、十分にリスク管理を行いながら進める必要がある

血清カリウム(K)

基準値 3.7~4.8mEq/L

  • Kは筋収縮・神経伝達において重要な役割を果たしており、特に心筋の活動に大切な働きをしている

  • 臨床症状として高K血症時は筋力低下、知覚障害、悪心、嘔吐の症状が、低K血症時には脱力、腸管麻痺、多飲多尿の症状がある

  • 低K血症では不整脈が出現しやすいため、必要に応じて心電図をモニタリングしながら行う

  • Kが異常を示す場合には補正後に運動を行うことが望ましい

血性ナトリウム(Na)

基準値 135〜147mEq/L

  • 細胞外液中の陽イオンの約90%を占め、水の分布、浸透圧の調節に関わる

  • 水・電解質代謝の失調をきたすような場合でNaの測定が必要

  • 低Naでは全身倦怠感、悪心、乏尿、循環不全の症状が出現し、高Naでは高血圧、息切れ、不穏などの症状が現れる

  • 1日の塩分摂取量を守るよう指導し、水分出納の変化に注意する

血清クロール(CI)

基準値 101〜109mEq/L

  • NaやKと同様に浸透圧の維持や酸塩基平衡の調節をつかさどる場台

血清カルシウム(Ca)

基準値 9~11mEq/L

• Caの99%は骨組織内に集まっており、骨の重要な構成成分である

  • 高カルシウム血症の症状は頭痛、消化器症状、筋カ低下で、低カルシウム血症ではテタニー、しびれ感、抑うつ状態がみられる

  • 長期臥床では骨からCaが遊離するので、早期離床や適度な骨負荷をかけることが重要である

KL-6、SP-D

KL-6 基準値 500未満(U/mL)
SP-D 基準値 110.0未満ng/mL

  • 間質性肺炎の血清マーカーの中で、KL-6は最も感度(94%)、特異度(96%)が高い

  • 間質性肺炎急性増悪時には、まずSP-Dが上昇し、KL-6は少し遅れて上昇する KL-6は、胸部CTのすりガラス陰影と相関するが、線維化病巣との相関がより強い

  • KL-6は、腺癌(肺腺癌、乳癌、膵癌)でも上昇するので、癌を合併した間質性肺炎のKL-6の解釈においては注意を要する

BNP、NT-proBNP

BNP     基準値 18.4(pg/mL)以下(CLIA法)
NT-proBNP 基準値 125(pg/mL)以下(ECLIA法)

  • BNP(brain natriuretic peptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、おもに心室で生合成されるホルモンで、心室負荷や心室肥大・心室虚血などの心不全により分泌が亢進する

  • BNP・NT-proBNPは心室の負荷の有無やその程度を把握することのできる鋭敏な心機能マーカーであり、おもに心疾患の重症度の把握や治療効果の判定のために行われる検査である

動脈血酸素分圧(PaO2)

基準値 80〜100torr

  • PaO2は動脈血中の酸素分圧を表す

  • 体位や年齢に影響を受けやすく、高齢者や臥床姿勢では低値になる

  • 室内空気呼吸時のPaO2が60torrを下回った状態を低酸素血症とよび、多くの場合は低酸素血症が問題となる

  • PaO2が低下すると不穏などの臨床症状がみられるため、酸素飽和度(SpO2)のモニタリングとともに臨床症状の出現に注意が必要である

  • 必要に応じて体位ドレナージなど呼吸リハビリを実施する

  • 人工呼吸器など吸入酸素濃度がコントロールされている場合にはPaO2から酸素濃度(Fi02)を除したP/F比(Pa02+Fi02)が酸素化の指標として用いられる

動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)

基準値 35〜45torr

  • 動脈血中の二酸化炭素分圧を表す

  • PaCO2は胞換気量と反比例の関係にあり、肺胞換気量が低下すればPaCO2は急速に上昇し、逆に過換気になればPaCO2は低下する

  • PaCO2は換気の状態を把握するために重要な指標

  • 多くの場合は高CO2血症(45torr以上)が問題となる

  • PaCO2が50〜60torr以上で頭痛、振戦、痙攣が起こり、80torr以上になると意議レベル低下、見当識障害などの症状が出現する

  • 陽圧換気療法など換気を補助する治療が必要となる

pH

基準値 7.35〜7.45

  • 体液の酸・塩基平衡状態を表す

  • 通常では7.35〜7.45の範囲に保たれているが、7.35以下をアシドーシス、7.45以上をアルカローシスと判定する

  • 酸・塩基平衡の異常は呼吸不全もしくは代謝障害(緩衝系や腎障害)で起こる

  • pHが異常値を示す疾患や病態は様々で、各疾患や病態に対応が必要になる

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