ただの黒ペン

俺は、どこにでもある黒いペンだ。0.5mmのノックして芯を出すペン。

今は机の上にうっちゃなげれて、ぼんやりと天井を見上げている。
「そろそろご飯できるよ。机片付けて」
家主の声が聞こえた。
この声が聞こえると、爪が長めの手が俺を掴む。
ラバーの部分をガリッとやられると痛いので、俺は痛みに備える。……今日は大丈夫みたいだ。
机からおり、また天井を見上げる。
家族の団欒している声が聞こえる。
バレーボールだ。
バレーボールでペンが使われるのかは知らないが、大会会場にあるペンは気の毒だ。
固くてひらべたい汗に塗れた手に握られなくてはいけない。市役所のペンがつい前に「1日で複数に握られるのはくたびれる」と言っていたが、どちらが大変なのだろうか。
ま、どちらもやりたくはないな。

ご飯終わり「黒ペンがほしい。」という声が聞こえた。机にうっちゃなげれていたので、少々いじわる心が頭をもたげた。

「ほいっ」と俺は、家主のカバンの中に潜り込んだ。
さて、いつまで隠れてられるかな……?

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