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『君たちはどう生きるか』、感想とおすすめポイントを書いてみる。

『君たちはどう生きるか』を観た、と話すと、パートをしている会社で「どんな感じ?」と聞かれることが多いので、どんな感じだったか、書いてみようと思います。

※ほんの少しだけネタバレありなので、その箇所の導入部に明記しました。

映画もアニメも宮崎作品も、そこまで詳しくはない、あくまで、個人の感想です。
※画像はジブリ公式の公開フリー素材から

映像:映画館で観る想定で作られている

今や、映画も公開から半年程度で各種サブスクサービスで観ることができ、公開翌年にはテレビ放送もある場合があります。
ただ、私は「この画面は映画館で観ることを意識して作られているな」と、鑑賞中繰り返し感じました。

大きい画面に、空間の広がりを目いっぱい描いて、人物は画面の端のほうにいる……という構図が何回かあり、とても印象に残りました。

画面の外まで果てしなく続いているであろう、物語の空間。その景色や風のそよぎは、テレビ画面や、ましてやスマホではおそらく味わいきれないな…と感じました。

ワラワラというキャラクターが画面いっぱいにいる場面

ストーリー:個人的にはわかりやすかった。

「寝てしまった」「わからなかった」といった声もちらほら見聞きするので、「話の筋のわかりやすさ」は、かなり個人差がありそうです。

私としては、『ハウルの動く城』や『もののけ姫』『風立ちぬ』『崖の上のポニョ』の初見よりは、シンプルでわかりやすい話だと思いました。

第二次世界大戦のことや、昔話・物語の類型にどのくらい触れているかで、その部分は感想が少し分かれそうかな、というのが私の感想です。
個人的には宮沢賢治原作の『銀河鉄道の夜』のアニメ映画版とも重なる感覚もありました。全体的に夢の中っぽく、行って帰ってくる物語「往還記」の一種です。

主人公の思春期の少年の気持ちや表情から何を読み取るかも「筋」のわかりやすさと関係しそうです。

小ネタ:過去の宮崎&ジブリ作品全部乗せ……はその通り!

SNSなどでもよく見た、「過去の宮崎作品、ジブリ作品へのオマージュが多い」というのは納得でした。
ジブリ作品、宮崎作品に多く深く振れているほど楽しめるのは間違いないと思います。

「あ、トトロっぽい。ここポニョっぽい。マーニーっぽさもある、アリエッティもある、ナウシカ、未来少年コナンやカリオストロっぽさ、ほかにもほかにも……」となる場面がたくさんあります。

私は1970年代生まれで、世界名作劇場時代からそれと知らずに宮崎作品に触れ、未来少年コナンをリアルタイムでそれなりに視聴、小学校高学年でナウシカ公開……という世代です。
子育てとともに、トトロやポニョのDVDも何回も見ています。

ですから大画面で今の作画技術で、過去作品のオマージュ映像を観ることができるだけで、十分わくわくでした。

私の感想:ちょっとだけネタバレ

以下の段では少し内容面に触れます。

主人公が、何かをにらみつけている場面

こういうのが苦手な人は見ないほうがいいかもポイント

まず、冒頭で母親が死ぬので、「親が死ぬ」系がダメな方にはお勧めしません。
あと、鳥がたくさん出てくるので、鳥が苦手な人もやめたほうがいいです。
小さいお子さんも、ちょっと難しいかもしれないです。小さい子がわくわくするような場面もあんまりないかな……と思います。

「ひとつだけ積み木を加えられる」のは誰か

私が一番印象に残っているのは、「大叔父」の積み木の場面です。
主人公に向けての語りになっていますが、あれは映画を見ている人全員、または世界中のすべての人々に向けられた場面だと思っています。

悪意が宿っている「積み木」を組み合わせて、不安定な「塔」のようなものを作っている「大叔父」に、「お前はひとつだけ積み木を加えることができる」といわれる場面は特にハッとしました。

白髪の大叔父。長いひげや髪が風になびいている。

世界は、色々な人の思惑や、すでにある制度やシステムで成り立っている。けれど誰もが、1ピースだけ、そこに自分の意思を持って付け加えることができる。
たった1ピースだけれど、そこには意味がある…。私にはそう聞こえました。
ひとりの持つ力は小さくても、その1ピースをみんなが意識して選んで加えていけたら、世の中は少しずつ変わっていく……というメッセージを受け取りました。

そして、その「積み木」は人の骨でできている…とかそんなセリフがあった気がしますが、確か主人公はその積み木を現実世界に持って帰ってきます。(やや記憶に自信がなくすみません)

主人公は、世界の管理者になり「積み木」を付け加えるのは拒否したけれど、現実世界に加えたいピースを持ち帰ったのではないか…。そんな気がします。
今の世界は悪意に満ちていて、不安定でとても変えることができないように感じるけれど、「こういう世界で生きたい」という意思を、ほんの1ピース加える…それが世界のバランスを変える一助になるかもしれない。
私がこれから、大人として親としてライターとして生きる上で、大事にしたいメッセージでした。

ただ、全体的には万人受けする内容ではないかな……というのが正直な感想なので、ほかの映画作品と迷ったら、『君たち…』を観たい気持ちが7割以上でない限り、ほかの作品を優先したほうがいいかな…と個人的には思います。

私は、「大満足」でした。


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