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不登校特例校、「学びの多様化学校」に名称変更 ~特例校出身の子を持つ私が、周りにも聞いて考えたこと~

私の息子の出身中学は「不登校特例校」(当時)です。
先日、あるニュースが息子の出身中学の親同士のグループLINEで話題になりました。

不登校特例校が名称変更。新しい名前は「学びの多様化学校」らしい。

私の第一印象は「イマイチ…?」

「学びの多様化学校」……

私の正直な第一印象は「なんかイマイチだな?」でした。なんとなくふわっとしていて、あいまいな印象に感じました。

それは、「高輪ゲートウェイ駅」や、まったく定着しなかった「母さん助けて詐欺」の時に感じた違和感と似ていました。

「母さん助けて詐欺」を知らない方のために、当時の記事のリンクを貼っておきます。2013年だったんですね。しかしほぼ使われているのを聞かなかった気がします。

ただ、私のこのときの第一印象は徐々に変わることになります。

冒頭で、私の息子が「不登校特例校」を卒業したと書きました。

いま在学中の子の保護者とも知り合いですし、卒業後も息子と同窓の特例校周辺の人たちと、頻繁にやり取りをします。
そんな中で、現在も不登校特例校に直接関係している方たちから話を聞けました。

「学びの多様化学校」(=不登校特例校)とは

名称変更の話の前に、「学びの多様化学校」(=不登校特例校)について簡単に説明します。
文部科学省が正式に認可している学校で、教育基本法第一条に定められた、いわゆる「一条校」にあたります。カリキュラムの内容などを、独自に設定できるので、不登校の子どもたちが通いやすいように、始業時間を遅めにしたり、授業コマ数が少なめだったり、授業に選択の要素があったり、さまざまな工夫をしている学校が多くあります。

フリースクールのように別の在籍校に籍を置く必要がなく、通った学校から卒業資格がもらえます。
令和5年時点で全国に24校あり、公立も私立もあります。

新しい名称は、現在通っている子どもと働いている職員の応募から選んだ。

全国で24校の学びの多様化学校。新名称のアイデアはそのうち15校から86件が寄せられたといいます。

選ばれた「学びの多様化学校」という名称は、現在、多様化学校で働いている職員の方が応募した名称だそうです。

実際に通っている子どもたち、先生たちがアイデアを出し、所属の不登校特例校(当時)を通して応募をしたと聞きました。

通っている子どもの中には、「不登校特例校」という名称にネガティブな気持ちを持っている場合もあるのだそうです。「不登校特例校に通っている」というのは、他人に話しづらいと感じる子どもや保護者がいることは、なんとなく想像できます。

私は、息子が在学中にほかの不登校特例校(当時)の事例を聞く機会がありました。ひとくちに「不登校特例校」といっても、学校によって教育の内容や考え方には違いがあることも知っています。
全寮制の学校もあれば、既存の学校の中の一部を特例校にした「分教室型」の学校もあります。

不登校特例校の在り方は、現時点ですでに一様ではなかったのです。

一般の学校は「多様化に対応しない」の?

SNSではこんな声も見かけました。

特例校だけでなくて、すべての学校が「学びの多様化」に対応してほしいのに。

一般的な学校は「多様化しません」という皮肉のきいた新名称だ。

これらの声には、私も同意できます。

子どもは一人ひとり違うので、今主流の「全員が同じタイミングで、同じことを、同じようにできる」ことを目指す学校はすでに限界で、だからこそ不登校が増えているのだろうと感じます。

しかし、現在主流のこうした「学校の在り方」を本当の意味で変えていくには、法律、制度、働き方など、様々なことを変革し、さらにその根底にある考え方も、すべての自治体、教育委員会、管理職と教員、そして社会全体に浸透しなくては実現しないでしょう。

それには膨大な時間がかかり、今現在不登校であったり学校に行きづらい子どもを少しでも笑顔にするためには、なかなか間に合いそうもありません。
で、あるならば、今現在すでに施行されている制度を活用しながら、他方で制度全体を時間をかけて変えていくのがベストではなくともベターだと、私は感じます。

そして、「学びの多様化学校」が存在していることがそもそも、学校自体の「多様化」の一歩でもあると感じます。

「不登校特例校」から「学びの多様化学校」になることで期待できること

「学びの多様化学校」は、独自のカリキュラムが認められています。

名称が「不登校特例校」ではなくなったことで、既存のオルタナティブスクールが、「学びの多様化学校」の認可を取ることも考えられます。

オルタナティブスクールとは、イエナプランやシュタイナー教育、モンテッソーリ教育などの理念に基づいた学校で、どちらかというと「不登校の子が行く」というよりは、理念に共感した保護者や子どもが積極的に選ぶ学校である、と私は思っています。

しかし、これらのオルタナティブスクールは「一条校」ではないため、卒業資格を得るには地域の学校に在籍だけしたり、高等部の場合は「高卒認定」を受ける必要があります。
また、制度上、国や自治体の補助なども(おそらく)受けていないはずです。

こうした学校が一条校になることで、別の学校に在籍だけをする必要がなくなるでしょうし、保護者の費用負担の軽減も期待できます。

多様化学校が300校に増えたら、もう学びは多様化しているだろう

学びの多様化学校(=不登校特例校)を増やす計画自体は、昨年発表されていました。
下のリンク先の記事によると、2022年6月の政府の発表で「不登校特例校の全県設置」が掲げられています。

今回の名称変更時の発表では「将来的に300校にまで増やす」とされています。
当然、すべて新規に学校を開校するばかりではなく、学区内から一部の学校が「学びの多様化学校」になったり、分教室型の「校内・学びの多様化学校」ができることになると思います。

前項で書いたような、既存のオルタナティブスクールやフリースクールの一部が、多様化学校認可を取ることも考えられます。

300を単純に都道府県数の47で割ると、6.38(以下四捨五入)です。
多少都市部に集中はするにしても、少ない県でも2校から3校は「学びの多様化学校」がある。数字上はそんな予測も可能です。

数が増え、「不登校」の名前が外れた「学びの多様化学校」が多くの自治体に存在するようになったら。それは、一般的な多数派の過ごし方が合わない子どもにとって、選択肢のひとつになるのではないでしょうか。不登校にならなくても、もうひとつの学校の在り方として、「学びの多様化学校」が存在してほしい。私はそう思いました。

ぜひ、そんな未来が来てほしいと思います。


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