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『虎に翼』第6週感想 ~寅子の演説に感じた、普遍性とやるせなさ~ 

2024年4月期の朝ドラ『虎に翼』、私も毎日楽しみに見ています。
あくまで、私個人の体験や生活に引き寄せての感想なので、その点をご了承ください。第6週目の感想です。(ネタバレを含みますのでご了承ください)

第6週のあらすじ・公式ダイジェスト動画は、下記のリンクからどうぞ。

寅子の演説に向けて上り詰めた、第6週

第6週は、やはり金曜日放送の第30話・寅子の演説の場面がすべてだろう。

しかし、まだ第6週とは。もう何年も寅子たちの頑張りを見てきた気持ちだ。これを書いているのはすでに第7週が放送中の火曜日。
第6週の前半は、明律大学女子部の6人組のみんなと試験合格を目指して学ぶ日々だった。しかし、様々な理由(これもマイノリティ性によるもの)で、一人二人と試験を受けることがかなわず去っていった。

ともに笑い、学んだ青春の日々。その場面を思い浮かべると、はるか彼方に、少しくすんだ色で、小さく輝く美しい結晶のように見えてくる。(実際にそういう色彩の演出なのだろうか?)

試験に合格したあとの第30話で、寅子の演説がある。
長文の長台詞でもあるので、全文の書き起こしはしないが、ネットで検索すると全文書き起こしているサイトもある。(公式が許可しているものか確認しづらかったのでリンクは割愛)

第6週のまとめ動画でも演説の要点は見ることができる。
また、記事としてまとめているリンクを参考までに下記に記載する。

寅子の演説を聞きながら、今も闘っている人たちを思う。

寅子の演説は素晴らしかった。これが朝ドラで、今放送されていることも含めて。
ただ、私は今もかなわない、性別以外のマイノリティ属性の人たちのことも考えずにはいられなかった。

法改正がなされても結局、女は不利なまま。女は弁護士にはなれても裁判官や検事にはなれない。
男性と同じ試験を受けているのにですよ? 
女ってだけで、できないことばっっっかり!

『虎に翼』第6週・第30話 寅子の演説のセリフより

私は、第4週の感想で、下記のように書いた。

今年2024年4月から、民間事業社にも、障害者への合理的配慮の提供が義務化された。

しかしSNSでは、誤解も含めて「合理的配慮」に抵抗感を持つ人の発信が吹き荒れている。障害者各個人の「性格」や「かわいげ」を「私個人」が感じられるかどうかによって、支援や配慮を「したくなる」「したくならない」といった感情論が渦巻いている。

また、障害者の出産や生死に関して、関係のない赤の他人が、平然と口出しをしている。優生思想的な意見を表明していることを「個人の感想」と言い切り、差別や人権侵害である自覚すらない。

『虎に翼』第4週感想 ~100年先への希望と絶望~(aki)

この内容に補足すると、日本には優生保護法という法律があった。この法律によって、障害者が本人の意思に関係なく強制的に不妊手術を、中には騙されて受けさせられたのだ。それは戦後の1948年に成立しバブルが崩壊した後の1996年まで続いていたのだ。

障害者が子育てできるかとか、そういった懸念には個人個人の考えもあるだろうが、国の法律で、強制的に、中には騙されて、自分の体をいじられて、生殖にかかわる内臓の機能を取り除かれていたのだ。そう書けば、この法律の怖さが少しは伝わるだろうか?

この法律がなくなって、約30年たつが、SNSでは第4週で書いた私の文章のような現実が、いやでも目に入ってくる。

少し困った現実を嘆けば叩かれ、多数派の人間が何も考えずに利用できている公共・民間のあらゆるサービスも、事前に連絡し、問い合わせをし、時には断られ、何度も断られ、それが日常で、時間を余裕を大幅に見てもぎりぎりになってしまう、そんな毎日を送っている障害者は大勢いる。

まさに、「法改正がなされても、できないことばっっっっかり」だ。

100年先にまた会いましょう。覚えてるから

『虎に翼』は二次大戦前から戦後にかけてのドラマなので、「障害者の人権」に関しては、描かれるかどうかはわからない。戦後の傷病軍人の描写はあるかもしれないかな……くらいの淡い期待ではある。

だからといって『虎に翼』の面白さが減るわけではないし、価値が下がるわけでもない。「女性」以外に当てはめても、あらゆる社会的マイノリティに同じ問題が当てはまる。普遍的なテーマを描いていると感じている。

障害者の人権に関しては、日本においてはまだ『虎に翼』がスタートした時代と似たような状況だと思う。だからこそ、米津玄師の主題歌の歌詞のように「100年先にまた会いましょう」「100年先も覚えてるから」という期待を持っている。

……と、思っていたら、同じNHKで始まったドラマで「障害者」にフォーカスをあてた『パーセント』が始まった。
私がどうしても感じてしまう「やるせなさ」は、こちらのドラマが応えてくれそうである。うれしい驚きだった。興味ある方は下記リンクを。
なんと、この記事を公開する今日の深夜(明日5月15日水曜日00:15~)第一話再放送。

すでに放送中の、第7週の予告は下記のリンクから。

アイキャッチ画像:(UnsplashBlake Meyerが撮影した写真)

優生保護法については、五十嵐大さんの『聴こえない母に訊きにいく』が、読みやすくてお勧めです。(法律の解説ではなく、エッセイでありルポルタージュです)


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