見出し画像

ラジオ体操を聴くことについて

私の子供の頃はラジオ体操をやる習慣がなかった。
夏休みの名物といっても過言ではないのに。「僕の夏休み」シリーズでは必須項目でさえあるのに。
運動会の準備体操で第一だけやるか、ゆとり教育に入る前の数年間の半ドンの日にやったような記憶がある程度だ。

それが最近、職場でよく耳にするようになった。
朝の一定の時間になると、必ず全館放送で流れるのだ。
初めは、いまだにこの風習が残っているなんて変わっているところだ、なんて思っていた。しかし、毎日聞いていくと、なんとなく心地よい。自然と体が動く。音楽的に捉えるようにもなってきた。
それはまるで、最初は意地悪だったクラスのイケメンが実は悲しい事情を抱えた一人の男であり、日を追うごとに彼のことを好きになる少女漫画のように(べ、別に好きなってなんかないんだから!!)
……と言うほどロマンティックでもないが、ラジオ体操のことが気になってしょうがない私である。

流れてくるのは、ラジオ体操第一・第二だ。youtubeを軽く浚ってみたが、ピアノのリズムやアレンジ、号令のタイミングなど、やはりちょっとずつ違いがある。Spotifyにあったものが、私のいつも聞いているものと限りなく近いので、リンクを貼っておく。
指導者は柳川英麿さん、ピアノは大久保三郎さんだ。

柳川さんは非常によく通るお声でいらっしゃり、音楽上での身体表現が端的でわかりやすく見事である。それに呼応するようにゆったりと、また軽やかにリズムを刻む大久保さんのピアノもまた、押し付けがましくない演奏で良い。

元々はアメリカ発の健康体操で、1928年(昭和3年)逓信省簡易保険局(かんぽ生命保険の前身)を中心に日本放送協会、文部省等の協力の下「国民保健体操」として放送された。
GHQからの示唆などで、1946年(昭和21年)戦前から続けてきた初代のラジオ体操の放送を自粛したのち2代目を作成するも、号令なしの体操だったため、難解すぎて普及せず。
現在一番馴染みのある「ラジオ体操第1」は3代目のラジオ体操だそうで、1951年(昭和26年)に始まり、1952年(昭和27年)6月に「ラジオ体操第2」が放送となったらしい。
※ソースはこちら(かんぽ生命HP

話は逸れるが、ラジオ体操で思い出すのは、『ノルウェイの森』の吃音の少年だ。主人公と同じ寮の部屋に住んでいて、ラジオ体操が好きだった「突撃隊」である。彼は話の途中で急に登場しなくなったが、きっと、あれは主人公が多くの身近な(あるいは日常的な)ものを失うことのメタファーだったのだろう。
密かに私の日常に侵食してくるラジオ体操の存在が「突撃隊」と重なり、朧げに寂しさをも感じている。

閑話休題。
私は、音楽的に、ラジオ体操第二の片足跳びの部分が特に好きだ。
時間で言うと1分43秒のところ。
まるでウサギが飛び跳ねるようなはずむピアノに「かけあし足踏み!」の掛け声が絶妙な間合いで入ってくるこの一瞬がめちゃくちゃアガる。毎朝の楽しみといえばもっぱらこれである。
またぞろ変な趣味を開花させてきたものである。

どうだろう、皆さんも今一度ラジオ体操を聴いてみてはいかがだろうか。
そして、どこが一番アガるかを、ぜひ教えて欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?