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朝と名指すには未だ暗い 空には雲が低く垂れ込め ラジオの天気予報が雨を告げる 駐車場に 一台の車があり それを見下ろす高さの窓に ともった灯りが消える 街は 何ものにもならない顔をして 静かだ 高速を過ぎるトラックさえ 闇に紛れる気がして それを見送ると 管理室の灯りを残し 老いた男は煙草を吸う ガラスの灰皿に 今時マッチを放るのは 何てことはない ライターを忘れて引き出しを漁った それだけのこと 仕事が終われば 何ものでもなくなるようで 鍵は握ったまま ガラスの底に映る部屋