【物語】フリータイム
「お、今日は晴れてるな」
小さな幸せに喜べる小豆(こまめ)あずさ
「あ、茶柱が立ってる」
小さな幸せを穏やかに幸せに感じる大豆(おおまめ)とも子
そんな二人は親友同士
アパートはお隣同士
朝から晩まで一緒
だからと言って付き合ってはいない
姉妹のようなふたり
『トントン』
壁を軽く叩く小豆あずさ
アパートの壁が薄いので大豆とも子の部屋によく届く。
「もと子ちゃん、おはよう!起きてる?」
「おはよう。うん、今お茶飲んでる。茶柱がね、立ったの」
「良いね!今行く!」
パジャマ姿で隣の部屋に直行する小豆あずさ
「いらっしゃい」と迎える大豆とも子
「お茶ちょうだい!」
「良いよ。朝ご飯は?どうする?」
「パンが良いなぁ。ぐちゃぐちゃタマゴのやつね」
「はーい」
毎朝、ふたりはこんな風に過ごしている。
これがふたりの日常なのだ。
「あ、知ってる?あずき」
「んー?なあに?誰かの離婚事情?」
「惜しい。破局事情。はい、お茶」
「ありがとう。…これちょうどいい温度」
「良かった。あずき、猫舌だから」
ふたりはお互いを「もと子」「あずき」と呼び合っている。
ふたりの中では何もかもが遊び道具なのだ。
「それで?誰と誰が別れたんだって?」
「紀文くんと美南ちゃん!」
「え!?あの2人結婚間近だったんじゃないの!?」
「2人とも浮気してたんだって!」
「嘘!?ダブルで!?」
「そうなんだって!」
「はぁ~。」
「「そういうのがあるからひとりの方が良いんだよねぇ」」
そこからふたりの井戸端会議的会話が始まる。
「やっぱり1人がいちばんだよね」
「そっちの方が自由だしフリーだよね」
「フリーが一番!」
「「はぁ…やっぱりフリーだわ」」
結論はいつもこうなる。
「あ、朝ご飯作ろう」
「今日何かある?」
「ううん、今日は1日お休み」
「朝ご飯食べたら散歩行かない?」
「お、良いね!」
声が揃うほどにふたりはフリータイムがお好きなようだ。
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