自分らしく生きるために

4人兄妹の3番目として産まれた私。

小さい頃から父親の理不尽な暴力がある中で育ってきた私は、いつ父親の暴力があるかを警戒しながら毎日を過ごしていました。私にとっての「家」というのは、帰りたいと思う場所でも安心できる場所でもありませんでした。

一番上の姉は高校卒業後すぐに就職して家を出ていきました。兄も大学は都内の方に行ったので、私が一番父親から干渉されることも多かったように思います。妹はというと、基本的に普段からあまり父親から何かされるというのはなく、暴力されたのは一回でした。一度だけでも許されるものではありませんが…。要領よく父親と関わらないようにもしていたと思います。

私は干渉されることも多かったからか、今まで生きている中で自分で好きなことを選んでやった覚えは正直ありません。習い事も部活も、就職も…、親の顔を見て親が求めるであろうことを選択してやってきました。そうしないと殴られたり、自分が見捨てられてしまうような、そんな恐怖感が常にあったのです。親が思う「いい子」を常に演じてきました。

一見周りから見れば「元気で明るく、いつも笑顔で楽しく過ごしている」「親の言うことも聞くし人当たりもよく良い子だ」と思われるのか、私の印象として言われることが多いです。確かにその私も本当の私かもしれないけれど、私にとってはそれは自然と周りの目を見ながらやっている行動であり、もしかしたら本当に自分が思うように行動している、やりたいことをしている自分じゃないのかもしれないとも思います。でもそれすらよく分からないくらい、「自分」というものを私は持っていません。

そんな中時々、「自分」の気持ちと向き合って壁にぶつかることがあります。というより多分常にぶつかっているんだけど、それを定期的に自覚してるという感じなのかな。特に父親との関わりについて考えた時にぶつかることが多い気がします。

当然父親は人としてやってはいけないことを長い間してきたこともあり、今家族とは別居して一人での生活をしています。寂しさもあるんでしょう、よく連絡もしてきます。他の兄妹は当然父親とはあまり関わりたくないので連絡を返さなかったり相手にしないことが多いですし、私もそうしたい気持ちがあるのに私は父親にマメに連絡を返してしまいます。なぜかいつも「私まで相手にしなくなったら父親は本当の孤独になってしまう」というマインドなのです。連絡するだけでなく、一緒に遊びに行く、ご飯を食べる、そういうことを父親のことを思ってなのか分かりませんが企画しようとしてしまうのでした。

自分は小さい頃からそうでした。姉も兄も妹も、みんな父親とはなるべく関わらないようにしていたのに、私はなぜか父親と関わろうとしてしまうのです。いつか父親と仲良く過ごせるんじゃないかと思っていたし、そのいつかの希望や、たまに見える優しさに縋ってひたすら関わっていました。

でも父親のことは好きかと聞かれたら好きではありません。むしろかなり嫌いのほうに傾いてます。実家にいる時はよく夜中に台所から包丁を持ち出しては父親の部屋の前で突っ立っていました。毎日のように「父親を殺せばみんなが幸せになる」「私がやるしかない」と父親の頭に何度も包丁を刺す想像をしては、頭に刺したとしてもやり返されて殺される想像や、直前になって結局ビビって刺すことができずに父親にバレてボコボコにされて殺される。そんな想像をしては諦める、この繰り返しでした。

当然父親から逃げることも考えました。ただ幼い自分にとって頼る場所は祖父母の家しかありません。しかし祖父母の家に逃げたとして、たかが車で1時間ほどの距離です。当然父親は場所だって知っています。逃げたことがバレたら祖父母の家に来て殴られて、最終的にはきっと殺されてしまう。そう考えて結局行動には移せませんでした。

今思うと本当に異常な家庭で過ごしてきたんだなと思います。実家にいるのが本当に嫌で、社会人になって1年間でお金を貯めて、2年目になる時には勝手に家を決めて荷物を運び、逃げるように神奈川に引っ越してきましたが、家を出てきて神奈川で仕事をしながら色々な人と知り合って話をしていくうちに、どんどん自分の実家の異常さを自覚していったのです。私にとっては当たり前と思って生活してきた空間は酷いものだったんだと改めて実感しました。

こうしてようやく実家から逃げるように出てきて約7年。それでもやっぱり私は父親から逃げられていないんです。物理的に逃げてきたのに心理的に逃げられていない。自分でもどうしてなのか分からなくて、関わりたくないのに関わろうとしてしまうんです。孤独が寂しいのは想像できますし、父親がどんどん孤独になっていくのを見ているとそれもつらく、やっぱり関わろうとしてしまうのです。

それもこれも、そもそも母親が離婚してくれたら縁だって切りやすいんじゃないかと思ったこともあります。勇気を出して母親に離婚してほしい気持ちを伝えたこともありますが、結果ははぐらかされてしまって終わり。理由は聞いてませんが、正直遺産が目当てなのかなとしか思えず、私より遺産が大切なんだなと勝手にショックを受けたりもしました。もしかしたら母親はもう父親ととにかく関わりたくない、それだけなのかもしれないですが、本人にしか分からないので真相は不明です。ただ離婚したとしても、このままの私だとおそらく縁を切れずに結局グダグダ関わることでしょう。縁を切りたいなら離婚してようがしてなかろうが自分で決めて切れるはずだから。結局私は言い訳して関わってしまってるだけなんですよね。

さて、ここまで長々と自分語りをしてしまいましたが、なぜこんな書き込みをしようと思ったかというと、義母と話をしたことがきっかけです。

私は自分の家庭について義母とよく話をしているので、事情については一通り知っている状態です。その中で来年あたりに結婚を機に家族の顔合わせをするのに、どんな感じに進めるのか話をしていました。その時に私が「主人と結婚できるってなった時に、初めて産まれてよかったって思ったんです。だから顔合わせの時にこの気持ちを両親に伝えようかなと思って」と話したら、「私はそれをしたらお父さんが自分が許してもらえたと思ってしまうと思うんだよね。あきちゃんがお父さんに関わろうとすればするほどそういうのも全部」と義母は答えました。それと同時に義母は私の父親に対して許せない気持ちでいっぱいで、「顔合わせの時にお父さんに言いたいこと全部言ってしまうかもしれない、あんたはどんだけ周りを苦しめたのか分かってるのかって」とも言いました。

義母はお父さんに対して一生かけて反省させるべきだと思うと、それがお父さんのためだと思うと言います。私は「それをしたとしてもお父さんは結局『どうして俺ばっかりこうなるんだ』というマインドで反省なんてしないと思う」と伝えましたが、義母もそれはそうだとは思うと答えつつ、それでも伝え続けるべきだと。確かにそうなのかもしれないと思いました。ただそれをする勇気がなかなかもてないのが今の私の現状。ですが、もし顔合わせの時に義母が父親に思いをはっきり伝えてくれたとしたら私もその時に思う存分言いたいこと伝えたい!という気持ちもあります。そしてその反面、そんなことしたらあとでボコボコにされるんじゃないかという恐怖感もあります。やっぱりまだまだ私の心は父親に支配されっぱなしなんですよね。本当に異常だと思います。

ただ、それが現実にならないとしても義母が「顔合わせの時に父親に何か言ってしまうかもしれない」って言ってくれたことと義母の気持ちは正直めちゃくちゃ嬉しかったんです。私は父親からの暴力に母親から庇ってもらった記憶がほとんどありません。だからこそ本当に嬉しかったんです。初めて私のことを庇ってくれる母、という優しさを感じました。

結局ここまでひたすら長文を書き込んでおいて明確な結果なんて出ないけど、とにかく家庭の在り方が人間を作っていくんだなと痛感しているってこと。

私の場合は身体的虐待、精神的虐待が主で、性的虐待が少しという感じでしたが、どんな虐待でも心に傷が残ることは間違いないです。自分にとっては特に、自分が暴力されたり何かされることよりも、兄妹や犬、猫に対しての暴力を見ることの方が正直つらかったです。止めたくても恐怖で身体が動かず止められない、悲鳴や泣き声、つらそうな音を聞くことがどんなにつらかったか…。兄弟の中ではおそらく私が一番暴力を受けてきたと思いますが、それを長い間近くで見ていた妹は本当につらかったと思います。私は見ている方よりもやられているほうが多くてまだマシだったのかもしれないと思うくらい、見ている方は本当に本当につらかった…。

また私は父親と一番関わってきたこともあり、一番父親に似ています。実際に暴力とかはしなくても、キレて手を出しそうな感覚を理解はできるんです。正直義母に父親の話をされるまでは、いつか介護することになった時のことも考えて、今までの虐待のことは自分の中で消化して流して、新たな気持ちで父親とも関わっていかなくちゃと本気で考えていました。でもそれをするということは、義母が言うように逆に父親に「自分のやったことは許された」と思わせてしまうのかもしれない。私が父親を許してしまうということは、父親のやったことを肯定していることになる。そうしたらもしかしたら私はまた父親と同じことを繰り返すことになるかもしれない、と思いました。

実家にいる時に自分がどんなことをされたか、どんなことを言われたか、今でも覚えているし、多分一生忘れられることは無いと思うし、むしろ忘れないで伝え続けないといけないんだなとも思います。私は父親を許すことなく、一生をかけて伝えていくべきなんだなと。それが父親のためでもあるし、なにより自分のためでもある。

私は何より自分のために生きたいし、自分のために生きるために父親と離れたい。父親を許すことが必要と思っていたけど、許さなくたって良いんだよね。それを教えてくれた主人とお義母さん、ありがとう。

これから私は周りの誰かのためにじゃなくて、自分の本当の気持ちと向き合って、自分が本当にやりたいことをやっていく、そういう練習をしながら生きて、少しずつ自然に自分が生きたいように生きていきたいと思います。


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