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愛は犬 #シロクマ文芸部

「愛は犬!」
「愛はー犬ーっ!」

群衆の高らかに連呼する声がスクランブル交差点のビルの谷間に広がった。

さて今日は、2月14日バレタライヌデーですね。
「今どんな状況か、中継がつながっています」
「渋谷にいる戌井いぬいさーん」

《中継先渋谷》
「はーい、わたしは今、ここセッツブームの聖地、渋谷の忠犬ハチ公銅像前にきています。
ハチの銅像にはですね、キャンディレイならぬポップコーンレイが掛けられて、多くの方々が記念撮影をしていまして12いぬ時のスタート開始時間を今か、今かと心待ちにしています」

12:00

「あいはーいぬーっ」「あいはーいぬーっ」

犬たちはカゴに入った色とりどりのポップコーンを一斉に投げはじめた。
それを大口を開けてキャッチしてはキャッキャと声を上げて渋谷の街はニクキュウの匂いに似たポップコーン臭に包まれた。

2xxx年

「ライカ様これがいまの地球になります」

「私が宇宙に向った1957年頃の日本の節分という行事は「鬼は外」「福は内」と云って鬼に豆を撒く行事だったと聞いていますが・・・・」

「えーそれがですね・・・」ゴールデンレトリバーが長い脚毛の前足でもじもじとこごもると
「私が説明申し上げます」と凛々しいダルメシアンが口を挟んだ。

『鬼は外」というのがですね。「鬼権擁護団体からの猛抗議によって消滅しまして、はとぽっぽさんのハト派からは豆を粗末にするな!とこれまた抗議がまいりまして、地球温暖化により、牛の飼育が困難になり、豆が高騰、また豆は貴重なタンパク源になるため、それを撒くことはまかりならんとなった次第で・・・』

「セッツブームとバレタライヌデーというのは?」ライカが聞く

「それは・・・いつしか宗教やらバレンタインも問題視されるようになりまして節分はセッツブームに。バレンタインはバレタライヌデーという曖昧な呼び方に変わりまして、そこにハロウィンも入ってもうよくわからないメチャクチャな行事になりました」

「でもいったいなんで人間が滅んでしまったのですか?」眉間に皺をよせライカが前のめりになる。

「人間はみんないっしょと多様性のはざ間でいろんなことが立ちゆかなくなり、ことあるたびに忠誠心ある私たち犬のせい、犬のせいといって犬族に押し付けてきました」

「そのうち、すべてのことはAIとロボットが担うようになり、ベーシックインカムという時代が到来して人々は働かなくなり、こどもは試験管で受精させて人工的に生育できるようになったため、生殖能力も消滅しました・・・それで・・・」ダルメシアンが詰まると

「それで?」ライカが訊き返す。

「いまは・・・犬世界に・・・」ダルメシアンもレトリバーもうなだれてしまった。

「そうか・・・・それは残念だったね」とライカはいいました。


「オ・シ・マ・イ」

1000人は裕に収容できるであろうホテルの大広間のプレゼン会場は静まり返った。

カメラマンもシャッターを切る手が止まり、記者たちも固唾をのんだ。

いったいどうするつもりだろう・・・重苦しい沈黙の空気がどんよりと垂れ込める。


数秒ののち。

「ってーあの犬がいうてたよー」と司会のペッパー君がマイクの前で指をさす。

さし示した先には、ひな壇でスポットライトを浴びる新作お披露目会2023 AI搭載

「新型AIBO」

AIBOはAI機能で予見した未来をストーリー風に語るとちぎれんばかりに尻尾を振った。




♡「シロクマ文芸部」に参加してみたいと思っていたところ、「愛は犬」というお題に犬飼いとしてはとても気になってしまい初めて参加させていただきました。楽しいお題をありがとうございました。


「#シロクマ文芸部」「#愛は犬」











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