大社高校 ひと夏の物語の余韻に浸りたい【甲子園 夏の高校野球】

夏の高校野球、今年の島根代表の大社高校が本当に漫画の主人公のようで、胸が熱くなった。
余韻に浸りたい。

大社高校は出雲大社の近くにある公立の高校。
甲子園出場校は野球のために全国から球児を集める中で、ほぼ島根の地元の少年たちという、今時ちょっと珍しい学校だ。(1人だけ鳥取出身)

エースでピッチャーは3年生の馬庭くん。
お姉ちゃんも大社高校野球部のマネージャーで、3年間甲子園に行けなかった。
それを見ていた中学3年生の馬庭くんが、

「俺が甲子園連れて行くから」

と言ったそうだ。

馬庭投手の姉・歩未さん
「マネージャーでベンチに入っていて、弟はスタンドから応援してくれていました。甲子園まであと一歩というところで負けてしまったんですけど、それを見ていた弟が、私を甲子園に連れて行くというふうにずっと言ってくれてて、それを叶えてくれました」

Yahooニュース

他の学校からも勧誘が来ていたけれど、大社高校を選んだ。
漫画の第一話のようだ。

有言実行で、3年生の夏、93年ぶりの甲子園出場を果たした。
この時点で相当かっこいい。

当初の新聞社5社の出場校ランク付を見ると、特A〜C評価の中で、大社高校はオールC評価になっていた。 

↑一覧になっててわかりやすい↑

オールAは春優勝の健大高崎(群馬)、東海大相模(神奈川)、大阪桐蔭(大阪)、報徳学園(兵庫)、広陵(広島)の5校。

大社の第一試合は5強の1つ、報徳学園だった。

正直、「報徳学園は知ってるけど、大社ってどこ…?」という気持ちで、まぁ報徳学園が勝つだろうと、第一試合を私は見ていなかった。
後でめちゃくちゃ後悔した。
まさかの大番狂せで、大社高校が勝利したのだ。
少年漫画展開だ。ダークホースだ。

出雲大社の神様が大いに微笑んでいる。

続く第二試合、2年連続4回目出場の、創成館も、大社高校の勝利。



そして、球史に残る名試合、早稲田実業戦。
島根の公立高校の大躍進を聞いて、地元の人が駆けつけまくったアルプスは圧巻の人数。 


「島根の人全員来てる」

「いや全員は言い過ぎだ、半分くらいだ」
なんて言われ草も面白い。

声量がデカすぎるのと、トランペットがうますぎるのも話題になった↓



 大社高校へ寄付する人もごった返していたそうだ。↓


試合で印象的だったのは9回からだ。

9回表で2対1で早稲田実業がリード。
返せなければ、夏が終わる、と言う時に、
ノーアウト1塁3塁のチャンスを迎えた大社高校。
高橋双子の弟、とわくんのスクイズは、ファーストが塁を踏んでいなかったのでセーフとなり、1点でノーアウト1塁3塁の最高の展開に!
球場が沸いて、あと1点返せば逆転勝ちだ!と言う時に、早稲田の監督が動く。

野球の内野を5人にする特殊配置で、成功率3%という、3塁打球を1塁とホームのゲッツープレイを炸裂した。
強豪の意地と技を感じる激アツプレイ。
衝撃的な9回裏は、野球が好きな方は全員見てほしい。

早稲田実・和泉実監督
 「(5人シフトは)まさか甲子園でやるとは思わなかった。(成功する可能性は)3%かな。」

毎日新聞

延長線、タイブレークが始まる。
1塁2塁にランナーがいる状態から始まるので、守備の難易度はめちゃくちゃ高い。
1発打たれたら、一気に3点差になる可能性も十分あった。

1球投げるごとに、緊張感が走る。
大社高校はなんとか10回表を抑えたものの、10回裏で得点はできなかった。

11回表、早稲田実業の攻撃。
この時点で馬庭くんの球数は150球を超えていた。
暑さから、常連校は継投が当たり前の中、1人マウンドで戦い続ける馬庭くんの姿は、思い起こすと泣きそうになる。

早稲田実業の打線を彼は乗り切った。


11回裏、大社高校の攻撃。
会場のボルテージ最高潮、1つの動作で勝敗が左右される緊迫感の中、ベンチでこんなやりとりがあった。

 石飛監督「あの場面で選手を集めて聞きました。『ここでバント決められる自信があるもの手をあげろ』と。そうしたら、安松は手を挙げて『サード側に決めてきます』と言ってくれたので、私は信じるだけでした」

日刊スポーツ


甲子園初出場の2年生が大歓声の中出てくる。
「思い出づくりか?」なんて思った観衆の予想を大いに裏切る、宇宙一うまい神バントが炸裂した。
動画で見てほしい↓

高校野球を今年は毎日のようにみているけど、こんなすごいバントはどんな名門校もしていない。
犠打どころか、全員生還。
出雲の神様が奇跡を起こしてくれたのかと思った。

満塁の場面で、なんの縁か、打席が回ってきたのは馬庭くん。
ヒーロー登場に湧き上がる観衆。
いつまで続くんだと思うような、泥沼の熱戦、会場の気持ちはひとつ。

「お前が決めろよ」

大応援の声が響いて、止んで、シンとなった瞬間、馬庭くんの一打の快音が鳴る。
神秘的だった。
当たりは投手の股下を抜けてヒットになった。

逆転、延長からの、勝利。
馬庭くんの喜びのポーズはあまりにも大国主だった。

角度まで完璧


アナウンスも、最高だ。

佐藤修平アナウンサー
「神々の国からやって来た少年たちの快進撃は100年の甲子園でまだ続きます!!」

中日スポーツ

このセリフ、だいすき。
戦局がどんどん変わる中で、こんなに場面にぴったりな名ゼリフを叫べるアナウンサーって本当にすごいなと思った。


試合後もよかった。

馬庭くんがインタビューで「野球って楽しいな。甲子園って最高だな」って言っていたのも、監督が涙を浮かべながらインタビューに答えていたのも、胸が震える。


早稲田の監督さんのコメントも痺れた。

 早稲田実・和泉実監督

「いやー、ようやった。60(歳)過ぎてこんなにいい試合、いい経験させてくれて、もうこいつらすげえなって思いました。あー、甲子園のナイターってきれいだね。本当にお互いの生徒が美しかった。生徒の頑張りを見ると感極まるね。」

毎日新聞

気さくで素敵な監督だ。
退場の時に、大社の選手に声をかける姿もグッとくるものがある。
これが名将の貫禄だな…
動画を上げてくれてる人がいたので↓


本当にいい試合だった。
球史に残る名試合を、リアルタイムで目撃できたことは本当に幸運だと思う。


そして、昨日、準々決勝は神村学園との対決。
結果は、2対8で神村学園の勝利となった。
スラムダンクで主人公の高校が、山王戦で力を出し切り、次の試合、嘘のようにボロ負けした、みたいな感じだった。

そんなところまでジャンプっぽい。

さらに…

試合終了と同時に、出雲ではダブルレインボーがかかったらしい。
神話みたいだ。
そしてこの方、写真、うますぎる。

ラストシーンまであまりにもドラマチックだった。

神々の国から来た少年たちの大活躍は、本当に見ていて手に汗握り、1球1球に一喜一憂して、濃厚で感動的なシーンがいっぱい詰まっていた。
ただの外野のおばさんで、出雲は一度観光したぐらいのご縁しかないけれど、めちゃくちゃ心揺さぶられ、エネルギーをたくさんもらった。
大好きだよ甲子園、ありがとう大社高校!


甲子園のお気に入りの名試合は、あともう一つあって、
第1回戦の霞ヶ浦と智弁和歌山戦だ。
強豪智弁和歌山に対し、霞ケ浦は4回までヒット1つも許さず、先に得点した。
霞ケ浦の投手は剛速球ではなく、80キロの緩いカーブを駆使した緩急でタイミングをずらすという技ありのピッチャーで、強打者たちが何度も空振り、打ち取られていく様子は気持ちよさすらあった。
大社高校が漫画の『メジャー』だとしたら、霞ケ浦は『おおきく振りかぶって』のイメージが近い。

が、8回裏、智弁和歌山も黙ってはいない。
2打席連続ホームランは衝撃的だった。
完全に霞ケ浦に肩入れしていたので、「終わった…」と思うような絶望感があった。

そのあと、タイブレークを制して勝ったのは霞ケ浦!
1回戦で一番手に汗握る最高の試合だった。


大阪桐蔭を92球でマダックス(1試合を100球未満で完封すること)を達成した小松大谷の西川投手のインタビューもお気に入り。
「やってしまった」に思わず笑ってしまう。
大阪桐蔭の大演奏にも、強心臓というか、超ポジティブなセリフ。

西川投手「好きな曲ばっか演奏してくれるんで、『うわ、すげー』って思いながら投げました」

中日スポーツ

もっと投げているところが見たかった投手の一人。


超話題だった、滋賀学園の応援団も大好きで、何回も動画を見ていた。


絵をかきながらBGMに1回戦からの滋賀学園の応援を流したりもしていた。
とっても元気が出る。

 滋賀学園の応援団長、荒井くん
「メンバーがのびのび野球をできるように、自分たちの応援で球場を巻き込む」
 「誇らしい気持ちになるんです。こいつらに負けたんやったら、ええわって」

朝日新聞

エピソードを聞くとよりぐっとくる。


今年は運よくいっぱい甲子園が見れて本当に幸せ。
残すところ、準決勝、決勝。
強豪を倒したダークホースたちを、さらに倒した猛者たちの頂上決戦が始まるのかと思うと、どのチームも負けそうになくて読めない。
楽しみだ。

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