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その他の不思議な小説

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【短編】 夏のビールとセクシーな店員と奴隷

 看板に『ビール』とだけ書いてある、古びた店だ。  夏の日差しで熱くなった地面を這いながら、私はやっとの思いで店の引き戸を開けると、いらっしゃいという声が聞こえて、そこで意識を失った。  私は夢の中で、ジョッキビールを注文して口に流し込んだが、何杯飲んでも喉の渇きは癒されない。 「まあ、ここは現実じゃないからね……。だけど、夢の中で注文したビール代もちゃんと貰うわよ」  そう喋るのは店員の女の子で、私のテーブルの上にどっかり座りながら、短いスカートから出た長い脚を組みなおした

【小説】 なんとかなる(仮)第1話

1  一年ぶりに冷蔵庫を開いたら、中に道ができていた。  電源はつけたままなので、中に入るとひんやりしている。  しかし、薄暗い道をしばらく進むと夏のように暑くなっていき、その道沿いに商店が並んでいるのが見えてきた。  通りには人影がなく、店の看板やネオンだけがやけに主張してくる。  私は、夏のような暑さや主張の強い看板にうんざりしてきたので、「ビール」と書いてある店にひとまず入ることにした。 「いらっしゃい」  そう言ったのは、服を着た、人間ぐらいの背のあるウサギだった。

【短編】 一文字一円の小説

「あなたの小説を、一文字一円で買取します」という広告だった。 「誰にも読んでもらえない小説があるなら、思い切ってお金に変えましょう! 今なら、どんな素人が書いた、どんなにつまらない小説でも、一文字一円で高価買取を実施中!」  どんなにつまらない小説、と言われるのは不愉快だし、作品の著作権は業者側に渡ってしまうという条件付きだが、どうせ誰も読まない小説なら売ってもいい気がした。  しかし、信頼できる業者かどうかよく分からないので、とりあえず、昔書いたぜんぜん面白くない千文字の小