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#超短編小説

【短編】 コンビニにはもう行かない

 十年ぶりにコンビニに入ったら、出口が分からなくなった。  私は、トイレの用で入ったのだけど、何か買わないと悪いと思ってビスケットを探していたら迷ってしまった。  三十分うろうろしても誰とも出会わないので、どうしたものかと悩んだ末、私は携帯電話でコンビニの電話番号を調べて掛けてみることにした。   「はい、ファイブトゥエルブ○○店です」 「あの、今店内にいる者ですが、何というか、その迷ってしまって……」 「ああ、遭難者の方ですね。本社のほうへお繋ぎしますので……」  意外とあ

【短編】 セルフカットがおすすめ

 私の髪の毛は、この九十年で十メートル以上の長さになっていた。    髪を切ってくれる店へ最後に行ったのは九十年前の十五歳の頃だし、その店はきっともう無いだろうと思っていた。 「中華飯店の娘娘です。出前のご注文ですか?」 「あの、髪を切って欲しいのですけど、中華飯店なら無理ですよね……」 「いえ、うちの店長は九十年前にカリスマ美容師だったみたいで、髪を切って欲しい人が電話してくるかもしれないと接客マニュアルに書いてあって、その」  電話の向こうにいる店員は、興奮気味にそう話す