【短編】 セルフカットがおすすめ
私の髪の毛は、この九十年で十メートル以上の長さになっていた。
髪を切ってくれる店へ最後に行ったのは九十年前の十五歳の頃だし、その店はきっともう無いだろうと思っていた。
「中華飯店の娘娘です。出前のご注文ですか?」
「あの、髪を切って欲しいのですけど、中華飯店なら無理ですよね……」
「いえ、うちの店長は九十年前にカリスマ美容師だったみたいで、髪を切って欲しい人が電話してくるかもしれないと接客マニュアルに書いてあって、その」
電話の向こうにいる店員は、興奮気味にそう話す