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その他の不思議な小説

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#兄妹

【短編】 ちょうどいい距離感

 白い服を着た男が、いつも私の後ろに付いてくるようになった。  顔は黒人男性のように見えるし、ストーカーや探偵にしては目立ちすぎる。 「アイムソーリー。フーアーユー?」  私は、男が気を抜いた瞬間に腕を掴み、とりあえず知っている英語で話してみた。 「あ、俺ふつうに日本語話せますよ」  男が笑顔でそう言うので頭が混乱し、思わずまたアイムソーリーと言って腕を離した。 「俺はダニエルで、あなたを守護するためにやってきた者です。ちなみに、俺の姿はあなた以外の人間には見えていませんから

【短編】 ハル・ナツ・アキ・フユ

 ハルは猫の名前で、いま蝶と遊んでいます。  この家にハルがいつやってきたのか、私は覚えていません。  ずっと前からいたような、今初めて見たような……。 「それにハルって名前、誰がつけたんだっけ?」  そう話す女性は、私の妹で、この家に一緒に住んでいるのですが、自分に妹がいた記憶が私にはありません。 「ハルって名前は自分でつけたよ」  声のするほうを向くと、猫のハルが、頭に蝶をのせながら喋っています。 「ハルは春に生まれたからハル。猫はみんな自分で名前をつけるよ」 「へえ、ハ

【短編】 冷蔵庫と妹と、二週間の出来事

 ある朝、私は変な夢から覚めると、自分が冷蔵庫になっているのに気づいた。  目が覚めたのは、一緒に住んでいる妹が、牛乳パックを取り出すために冷蔵庫のドアを開けようとしたときだった。 「あれ、なんかドアが固いんだけど」  妹は、朝起きると牛乳パックから直飲みするのが習慣になっているから、妹用と、私がたまに飲んだりする牛乳パックは別に用意してある。 「あ、やっと開いた。ぐびぐび……はぁ。でも、ちょっと足りないから兄さんの牛乳も飲んじゃえ!」  私用の牛乳パックを直飲みする妹の頭を