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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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#宇宙

【短編】 妹と緑色の生物

 そいつはリスに似ており、緑色で、何かに反応して光ったりする生物だ。  小学生の妹が手を差し出すと、そいつは首を傾げたり光ったりしたあと、キューンと鳴き声を出した。 「きっと、ひとりで寂しかったんだね」  妹はそう言いながら、緑色のそいつを手のひらに乗せて指で愛撫する。  しかし、そいつはたぶん地球外生物で、見つけた場合はすぐに衛生当局へ通報しなければ、重い罪に問われる。  数十年前から地球人が宇宙に進出したり、宇宙人と交流を始めたせいで、宇宙船に入り込んだ外来生物が地球にや

【短編】 木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ

 小惑星に着陸すると、そこには小学校があった。 『木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ』という大きな看板。  校舎の一階を全て確認したが、人の気配がない。  じゃあ二階はどうだろうと階段を上ったら、廊下が壁で行き止まりになっていて『ここで宇宙服を脱いで下さい』と書かれたドアがあった。  ドアを開けると真っ白な狭い部屋があり、中に入ると「ドアを閉めて下さい、ドアを閉めて下さい」というアナウンスがしつこく流れるのでドアを閉めた。 「現在、空気充填中、空気充填中。絶対にド

【短編】 宇宙探偵

「ねえ、なんかここお酒臭いんだけど」  仕事の都合で女の子を預かることになったのだが、彼女はいろいろと文句が多い。 「それにさ、服とか食器とか本とかが絶望的に散らかっているんだけど、泥棒でも入ったの?」  この宇宙船は、いつも俺一人だからとくに気にしていなかった……。 「まずは掃除をして、人間が住めるようにしましょ」  彼女の口ぶりはまるで母親みたいで参ったが、二人で三時間かけて掃除をしたら、船内が見違えるように綺麗になった。  さらに彼女は、花を活けた花瓶を置いたり、ぬいぐ