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小惑星に着陸すると、そこには小学校があった。 『木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ』という大きな看板。 校舎の一階を全て確認したが、人の気配がない。 じゃあ二階はどうだろうと階段を上ったら、廊下が壁で行き止まりになっていて『ここで宇宙服を脱いで下さい』と書かれたドアがあった。 ドアを開けると真っ白な狭い部屋があり、中に入ると「ドアを閉めて下さい、ドアを閉めて下さい」というアナウンスがしつこく流れるのでドアを閉めた。 「現在、空気充填中、空気充填中。絶対にド
ペーターには住む家がありません。 戦争で村がすべて焼かれてしまったからです。 お父さんとお母さん、そして妹のビアンカも炎に焼かれて死にました。 ペーターは、大きな空き樽の中でいつものように昼寝をしていたから助かったのです。 妹のビアンカも一緒に樽へ入ろうとしたのですが、何となく鬱陶しくて妹を追い出してしまったことを、ペーターはひどく後悔しました。 「ようペーター、お前も生きていたか」 涙をぬぐいながら振り向くと、幼馴染のオスカーと、クリスティーナが立っています。
塔の入口には、古ぼけた椅子に腰かけた老人が一人いるだけだった。 私は、老人に声をかけたり揺すったりしてみたが、何も反応がないのでしばらく待つことにした。老人は入口の番をしているのかもしれないし、勝手に塔へ入ったことで後々面倒なことになるのを避けたかったからだ。 もっとも、塔へ入ることは誰にでも許されているのだから、何か手続きが必要だとしても名前を記帳すればいいという程度のことで済むはずであり、老人が番人であるなら、きっと名簿を管理するだけの簡単な仕事を与えられているに過
その駅にたどり着くまでに、すでに三十年が過ぎた。 大都市にあるような大きくて近代的な駅だったが、ホームに係員が一人立っているだけで、他の乗客は見当たらない。 「ペロ行きは、このホームでいいのかな?」 心配になって私が駅の係員にそうたずねると、彼は大きな溜息をついた。 「ペロ行きは三年に一回しか運行していませんし、それは昨日この駅を通過したので、次は三年後になりますが」 ああそうですか、と私は力なく言って駅を出たが、周りにはのどかな農村が広がっているだけだった。 あと