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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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#学校

【短編】 木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ

 小惑星に着陸すると、そこには小学校があった。 『木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ』という大きな看板。  校舎の一階を全て確認したが、人の気配がない。  じゃあ二階はどうだろうと階段を上ったら、廊下が壁で行き止まりになっていて『ここで宇宙服を脱いで下さい』と書かれたドアがあった。  ドアを開けると真っ白な狭い部屋があり、中に入ると「ドアを閉めて下さい、ドアを閉めて下さい」というアナウンスがしつこく流れるのでドアを閉めた。 「現在、空気充填中、空気充填中。絶対にド

【短編】 一日だけの転校生

 夏休み明けの朝の教室に、見知らぬ女の子が入ってきた。 「佐久間サクラさんは、サンフランシスコから引越してきたばかりで、いろいろ分からないこともあるから、みんなで助けてあげましょうね」  先生がそう紹介すると、彼女はペコリと深くお辞儀をしたのだが、そのときランドセルがべろんと開いて、筆箱や、何かの白い生物が床に落ちた。 「ててて、何だよサクラ。オイラ、気持ちよく寝てたのに」  彼女は慌ててその生物を拾い上げると、これ喋るぬいぐみなんだよねはははと笑ってランドセルの中に押し込ん

【短編】 家庭訪問の日

 今日は家庭訪問なので、私はちゃんと服を着て、呼び鈴が鳴るのをじっと待っていた。 「こんにちは。ミミさんの担任の小比類巻と申します」  担任の小比類巻は、玄関ではなく冷蔵庫のドアから現れたのでびっくりしたが、時間通りに来たのでまあいいかと思った。 「ところでミミさんが見当たりませんが、どちらに?」  ミミは空想上の自由な子どもだから、多分私の頭の中にいます。 「ああなるほど、そういうことなのですね。学校では普通にミミさんと接しているので、ご家庭にも居るものだと勝手に……」  

【短編】 小学生はつらいよ

 大人なのに、小学校へ入学することになった。  ランドセルについては、とくに決まりがあるわけではないので、私の場合はリュックサックでも構わないということになった。  しかしこの学校には制服が無いため、私の姿はどう見ても学校の職員か保護者にしか見えない。 「ねえ先生、あの子おしっこもらしちゃったよ」  登校初日に、クラスの子がそう話かけてきた。 「私は、先生じゃないけど」 「でも、大人なんだから何とかしてよ」  私は仕方なく、おしっこをもらした子を保健室へ連れて行って事情を説明

【短編】 放課後の神隠し

 学校の放課後、集落の裏山に遊びにいったら道に迷ってしまった。  キレイな景色が見える場所があるということで、男子と女子、十人の同級生で楽しく山に行っただけだった。 「ぜんぜん知らない道だけど、まずは下へ降りてみよう」  山道に一番詳しい同級生はそう言ったが、道を下った先にあったのは、まったく知らない町で、同級生の誰も来たことがないという。  辺りはもう薄暗くなっていて、早く家に帰りたいと言ってめそめそ泣く子も出てきた。  同級生の何人かが、携帯や公衆電話で自宅に電話をかけ