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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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2022年1月の記事一覧

【短編】 魔女の血筋

 私の家系で実際に魔女をやっていたのは、私の祖母の、祖母の、そのまた祖母までらしい。 「だからあたしも、魔法なんて使えないの」  そう、祖母は笑顔で言った。 「でも子どもの頃は、その気になれば魔法を使えるかもしれないって思っていたのよね」  学校が夏休みになるたび、私は、祖母の家に行っては魔女の話を聞いた。 「そういえば、あたしのお婆ちゃんのお婆ちゃんが使ってた魔法のステッキとホウキが、まだ蔵の中にあるわよ」  小学五年生だった私は、祖母の話を聞いたあと、蔵の中で埃にまみれな

【短編】 少女連邦共和国

 人口は十万人程度で、面積は東京二十三区ぐらいのかなり小さな国だ。 「少女連邦共和国は、外交的には一つの国だけど、内部的には複数の国をまとめたもので、旧ソビエト連邦や、アメリカ合衆国と同じ国家形態なの」  少女連邦共和国のホームページを見ると、親切にそう書いてあった。 「わたしたちの連邦は、普通少女国、ツンデレ少女国、魔法少女国、超能力少女国、そして異世界少女国という五つの国でできていて、政治経済の中心地になっている首都は普通少女国だよ」  この国は、原則的に少女という存在

【短編】 放課後の神隠し

 学校の放課後、集落の裏山に遊びにいったら道に迷ってしまった。  キレイな景色が見える場所があるということで、男子と女子、十人の同級生で楽しく山に行っただけだった。 「ぜんぜん知らない道だけど、まずは下へ降りてみよう」  山道に一番詳しい同級生はそう言ったが、道を下った先にあったのは、まったく知らない町で、同級生の誰も来たことがないという。  辺りはもう薄暗くなっていて、早く家に帰りたいと言ってめそめそ泣く子も出てきた。  同級生の何人かが、携帯や公衆電話で自宅に電話をかけ