【短編】 猫川俊太郎の死
「福島出身」と告げるだけで、その場を嫌な気持ちにする。そんなとき、私の真ん中に空いた大きな穴は虹を食べている。
「だけど福島だけが汚染されてる訳じゃないでしょ。東京だって毎日被曝してるのよ」
などと会社の同僚は言ってくれるのだけれど、私は福島を誇りに思っているわけでもないし、勝手に同情されるのも迷惑な話だ。
「ねえ、あんた達まだ放射能とか気にしてんの?」ともう一人の同僚が、うっすらと赤い鼻水を垂らしながら話に割り込んでくる。「だけど自分の不安を放射能のせいに出来る人って、逆