爪の



心臓の鼓動がシーツに伝って
静かを掘り起こす
爪の白とピンクの間が柔く波打つ
硬質な海のような
そんな眠り方で
生きると生きないの間を
泳ぐものの顔をしている

頬に手を添えると
真昼の空き地みたいな静か
中指にある細いささくれは
風があたるとそよぎ
八月の草原のふりをする
痛みは見知らぬ顔をして
瑞々しく露をつくる
冷や汗を
引っ張ると長く流れて

皺が笑うと振り返る
日中乾いているあなたは
掌だけ湿らせて
爪の先に季節を伸ばす
睫毛が産まれるようにかすかに震える
眠る人を揺り起こさないように
夏の日差しに潜り伏せる



2023年7月 詩

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