凧を飼う体





風が何かつぶやいて

うまく凪いでいるのに

擦れたわたしから声がしたのかもしれない

細い骨組みで

遠くから頭を見ている

束ねた髪の後れ毛が跳ね

かかとを浮かす子供たち


見慣れた場所を

飽和する青信号を

先を行く白いシャツは

爪の間から糸を伸ばし歩く

耳の中に台風

いない子供の笑い声

地図が記す場所を間違えたから

体と意識がずれて分かれる

体は先を

わたしは後を

同じ顔をした細い髪、つむじの周り方みたいに

いくつかの声が

大小を奏で混ざり合い

一本の道が見つかると

元の道に辿る記憶も無く

たぐりよせ導かれてしまう

用もなく

ずっと風の音を聞く

わたしであることをうごかせないまま 体に糸を引かれるまま

右回りに風が吹く


自転車が置かれると黒いものが入ってきます

だから袋に包んであげるんです

不安を

薄くつつまれて

丸く膨らむ

自分と体を結ぶ線がか細く

風に体を靡かせる

このままこの風に

飛ばされて見つからなくなっても体は進み

すると声は



2023年6月 詩

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