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気づいてないでしょ?あなたがいるのは、しあわせの頂点ってことを

バロッサバレーは、アデレードの歴史のあるワイナリーだ。比較的に温暖でシラーズが栽培されている。初めだけは、そうゆうウンチクをツアー参加者たちは、ありがたく聞いている。

「では、こちらの赤を」

小娘の和歌子には、違いなんぞわからないが、見ようみまねで、口にの中で転がしてみたりする。うん。ワインの味がする。

次は、シャンパンにしようかな?

シャンパンってめでたくて、高級なイメージ。いただこうではないか。そうそう、ここで、シャンパンって呼んではいけないんだった。

「あの、スパークリングワインを頂けますか?」 

シャンパンを初めて飲んだ。


それは小さな衝撃だった。

「ビールを初めておいしいと感じた日」をあなたは覚えていますか?それと同じような感覚。

夢のように美味しい。この世にこんな美味しいものがあるなんて!

金色に光る液体を眺める。小さな泡が下からぷくぷく弾ける様子を見つめる。これは確実に夢でてきている。

シャンパンをだれかにご馳走になるわけでもなく、乾杯のご発声のためにグラスに注がれるのではなく、私は

自分でこの街に降りたち、この街で生まれたスパークリングワインをいただくのだ。

この一粒一粒の泡には、私が頑張って働いてきた日々が詰まっているような気がした。

私自身、この時は、しあわせの意味も知らずに、毎日旅に酔いしれ、浮かれていたのだけれど、そんな私にピッタリな飲み物ではないか、頑張って働いた結晶が泡になって、しあわせの泡となって消えてゆく。

ワインの味はまだわからないけれど、スパークリングの泡が、大人になった私を祝福してくれたようだった。

フランス語では、立ち上る泡をペルル(真珠)といい。輪になったものをコリエ(首飾り)というのだと言う。ジュエリーやら、洋服につぎ込むのには、興味がないが、この真珠の首飾りは気にいってしまった。

さて、私はお酒に強くないから、一杯飲めばいっぱいいっぱいになってしまうのだが、ワイナリーツアーは、あくまでも試飲。少し飲んでは、バンにもどり、移動して、また、別のワイナリーに向かう。バンの揺れさえ心地よい。

「Sparkling wine, please 」

あぁ。言葉に出来ない美味しさだ。

◆◆◆◆◆◆◆◆

何軒回ったのか、あとは、気持ちが良すぎてあまり覚えていない。だからといって乱れていたわけではない。

シャンパンで作られたパールのネックレスをまとう私は、バンに揺られ、ドミトリーのベッドに帰り眠るのだ。

1人で旅をして、ワイナリーツアーで夢心地になるなんて、人生のうちに何回もあるわけではないだろう。

年をとったマダム和歌子は、試飲くらいでドキドキしたり、夢心地になったりしないだろう。

若き日の和歌子よ。自由なんて今だけだよ。謳歌しておくれ。

そして、日焼け止めくらいは塗ってくれ。未来のあなたからのお願いだ。


シャンパンとしあわせって似ているね。

赤 和歌子


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