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2.

車椅子を改造して横向きでも乗れるようにした。
君が散歩が大好きだったから。
車いすを壊すくらいやんちゃ坊主だったから。
家で壁だけ眺めて逝くなんてそんなのあんまりだ。
余計なお世話な日もあったかな、ごめん。

体調が大丈夫なら出来るだけ、元気な頃と同じように朝晩2回。
好きだった場所で立ち止まると鼻をヒクヒクして、表情も楽しそうに柔らかく見えた。

でも、可愛そうかわいそうとよく言われたよね。
おじさんから「お犬様だ」と笑われ。
子供から「消防車みたい」と喜ばれた。
昔、大型犬を飼われていた人に「犬に代わってありがとうと言わせて下さい」と声をかけられた。
駆け回ってた頃と変わらずに、可愛いねって撫でてくれたのが1番、嬉しかった。

老犬や不自由な犬はかわいそうなんだろうか?

だんだんと自由が利かなくなる体でも
動かないからと前足だけで動いて傷だらけになり
いよいよ動かなければ鳴いて向きを変えてほしいと訴えたり
相変わらず嫌いな場所を触れば噛みつき怒り
(怒られつつカピカピの目ヤニを綺麗する)
君なりに犬として「普段通り」生活していた。
何もかわいそうなことはない、と思う。
ひたすら生きていた。

目ヤニから排泄物までお世話だって、大変だねとよく言われた。
別にそれは飼い主として当たり前のことで、大変な事とは違う。
あ、筋力が落ちて小さくなる君を見るのは辛かったな。
ただそれ以上にどうしても、愛おしくて可愛かった。好きだった。

犬はかわいいんだ。