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BJステアリングホイール レストア日記 第1回 ステアリングの状態確認と考察

前書

ねんがんのBJステアリングをてにいれたぞ!

と言われても意味がわからない人がほとんどだと思う。最初の記事からマニアック過ぎなのは承知している。万人受けする記事は検索するとたくさん出てくるので、稚拙な文章の私が改めて書いても仕方ないのだ。検索しても出てこない一部の人だけに需要がある内容を目指している。

簡単に解説すると、ランドクルーザー70の初期型(1984年~)型式BJ**だけに付いていた部品がある。ステアリングホイール(ハンドル)もこの初期型だけに採用されたモノであり。中期型以降のモノとは形状・構造が全く異なる。どんな工業製品でも初期はデザイナー・開発者の想いが投影されコストが掛けられている。ランドクルーザー70の初期型は5年しか製造されてなく40年前のクルマということもあり部品の残存数は極めて少ない。また残っていても状態が良くないモノがほとんどである。この初期型のステアリングホイールはBJステアリング(BJハンドル)と呼ばれている。

ランドクルーザー70オーナーでもこのBJステアリングを欲しがる人はあまりいない。というか、その存在を知らない人がほとんどだろう。一部のマニアが強烈に欲しがるモノなのだ。私も例に漏れず探し続けてようやく手に入れた。
昔は解体屋巡りをして探していたのだが、今は町中にヤードもなくなった。中古部品もネット上で流通するようになり、素人でもヤフオクやフリマアプリで簡単に手に入れることができるようになった。ただし条件は皆同じなのでマニア同士で競い合いになりそれなりの価格になってしまう。業者もそれを知っているので売値も高い。
ランドクルーザーは人気車種なので、残存数が少ない部品でもヤフオクに出てくる。BJステアリングも年に数本は出品されるので新品定価以上の価格を積めば手に入れることができる。

状態確認

機能確認のため仮装着
スポークは塗装剥がれあり・ホーン内部機構は問題なし

手に入れたBJステアリングはかなり状態が悪かった。ネット販売はお手軽だが、現物ではなく写真で判断しなければならないのでイメージ通りにはいかない。手が触れるウレタングリップ部分表面のシボは無くなりツルツル。中身の鉄芯とウレタンが剥がれてグニグニと回ってしまう。革を巻く予定だからツルツルの表面は問題ないけれど、ウレタンが回ってしまうのは危ないので直さなくてはならない。スポーク部分は鉄に塗装が施されているが、これも擦れて剥がれている。ホーンボタン・中の接点などの状態は良い。これは単体でも入手困難な部品なので助かった。

先駆者の失敗からの考察

なぜウレタンと鉄芯が剥がれるのか?

おそらく長年の使用でステアリング表面が擦れる → 中のウレタンが露出する → ウレタンが吸水し加水分解する → ウレタンと鉄芯が剥離する。だと推測する。実際ウレタン剥がれしているのは表面が擦れやすい上半分のみである。また露出したウレタンは紫外線にも弱い。日が当たる右側のほうが劣化が激しく表面がヒビ割れてしまっている。

ハンドル表面のヒビ割れ

ウレタン剥がれを直す方法は色々考えた。ネット情報をかき集めて考察を重ねた。基本的には接着剤で固定するのだが耐久性に欠けるようである。

先駆者の失敗を見て考えた原因

1.接着剤の選択
多くはゴム系接着剤(コニシ G17、Gクリア等)を使っていた。ウレタンと金属の接着に適していて手軽に手に入る。しかし本来は両面塗布後、少し乾かしてから圧着する接着剤である。密閉された空間に充填して硬化・接着されるのか疑問が残る。

2.隙間の充填
できるだけ表面の損傷なく接着剤を充填するなら注射器を使うことが常套である。しかしどれだけ充填できたのか分からない。充填不足は接着力不足につながってしまう。

3.ウレタンと鉄芯の表面状態
接着剤が付く部分は汚れのないキレイな状態でなくてはならない。しかしウレタンに切り込みを入れない限り中は見えない。

ウレタン剥がれ補修計画

1.最適な接着剤の選定
条件は、
・ウレタンと金属が接着できること。
・密閉空間に充填して完全硬化すること。
・流し込める粘度であること。
・硬化した後も弾性があること。

これらの条件を満たす接着剤はあまりない。ステアリング修理業者が使う接着剤は謎である。飯のタネをオープンにする訳がないよね。
散々探した結果見つけたのは、トーヨーポリマーのルビロンKという二液型ウレタン系高強度接着剤である。業務用接着剤は量が多すぎることが難点だが、これは小分けパックがある。価格もそれなりでamazonでも購入できる。

2.接着剤の充填方法
ウレタンのまま使うのであれば、なるべく表面の損傷を小さくして注入しなくてはならない。しかし今回は手触りと質感向上を兼ねて革巻きにするつもりなので、多少目立つ損傷ができても後で埋めたら良いのだ。
ステアリングホイール裏側に接着剤が抜ける穴を数ヶ所開ける。ステアリングホイール横側(外側)に接着剤の注入穴を数ヶ所開ける。端の注入穴から順番に接着剤を注入し、裏側の抜け穴から接着剤が溢れるまで入れる。全ての抜け穴から接着剤が溢れたら隙間なく充填されたと考えることができる。

3.接着面状態の確認
接着剤の抜け穴を開けたら多少見えるが、ウレタンに切り込みを入れないと確認は不可能である。鉄芯周辺のウレタンがボロボロになってないことを祈るしかない。中は紫外線も当たらないし水分も染み込みにくいところなので大丈夫だろう。切開すると後の処理が大変なので今回は無視することにした。

事前にシミュレーションは何度も行い、必要なものは全て入手するが、実際にやってみないと分からないことも多い。次回は接着剤注入の具体的な方法と結果について書いてみよう。乞うご期待。

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