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【台詞集】小説『明鏡の惑い』第十一章「濁り水」より

どうして美帆さんはぼくにあんなことを要求したのだろう

   人間の価値なんちゅうものは、頭の強さと体の強さのふたつに尽きる。

 そうしておまえの父親から受け継いだ悪魔の性質を、根絶やしにするんだよ。

真壁! 引き手がなってない!

   動くことによって、動くことのなかで行なわれる直観があるんだ。

 ずっと力を入れていることが、努力することだと思っていました

力を入れることと同じくらい、力を抜くことも大切だ。その点は音楽とよく似ているな

   真壁、あなた、あれが弾けるんでしょ?

 美帆さんに聴かせるほどの腕はありません

弾きなさいよ

   では弾きます。ブルグミュラー作曲の〈さようなら〉です

 まあずおめえは、女の腐ったような奴だな!

それにしても、大きくなるとは嫌なものだな。俺はなんだか自分が濁った水にでもなってしまったような気がする。

   サカエさん、どうしよう。そば湯をくれってお客が言うんだよ
   何? 捨てちまった?

 ぼくは死にましぇーん!

ぼくは嫌だ。ぼくは認めない。ぼくはこれらのすべてを、絶対に認めない。崩れてゆくものがあるなら、その崩壊を食い止めなければならない。失われていったものは、何もかもひとつ残らず取り戻さなければならない。

   その条件とは?
   株式会社浅間観光の即時立ち退きです!

 平和で静かだった私たちの桃源郷を、よくも長いあいだここまで荒らしてくれたな。だがそれももうおしまいだ。楢沢の池があのざまでは、浅間観光も商売あがったりでしょう。滅亡の時は近いですぞ。さあどうされる真壁理事、いやさ株式会社浅間観光の真壁永久名誉顧問。増田ケンポウの犬め、戦争屋の手先め。悔しいか? 恐ろしいか? もっと深々と頭を下げろ。泣き叫んで助けを求めろ。這いつくばって赦しを乞え!

リスが通ってハイリスク

   桜井さん! 照月湖の水が、水が、水が……!

(作品はこちら)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/703314535/113741973