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食べられる幸せ

(排泄の話あり)

春日井市には美味しいお店がたくさんある。
特に私が推すのは下条町の「うま屋(ラーメン」
王子郵便局の隣に本店(王子町)が開店した時から食べ続けている。
元々豚骨ラーメンが大好きなのだが、ここのコクうまの美味しさはガッツリ、とまで行かずしかし存在感を存分に振るい、何よりラーメンのスープとチャーハンを一緒にかき込むのが我が流儀である。
待望の声が多かったのか、今ではチャーラーセットもでき(以前は両方食べたかったら単品でそれぞれ頼む)人気ぶりが伺える。
春日井本店 | 店舗案内|豚旨(とんこく)うま屋ラーメン (umaya.co.jp)

東野町の「ごま麺」も大好きだ。
担々麺、と看板に掲げているがよく見る真っ赤なだけの「タンタン」麺ではなく、ごまをたっぷり使用した香り高い「ダンダン」麺が売りである。
私はここの「排骨麺(ぱいこうめん」が大好きだ。ほろとろな豚肉を唐揚げのように揚げ、それがゆずがほんのり香る醤油スープに絡んで美味いったら美味い。CBCの「ミックスパイください」で取り上げられた時の人気の爆発っぷりは凄まじかった。色んなラーメン軒並み昼には売り切れで普通のラーメンしかないです!なんてこともしばしば。今でも大型連休とか油断して行くと売り切れてることがある。
【春日井市】LIVINから移転オープンした担々麺が人気の『ごま麺』に行ってきました。 | 号外NET 春日井市 (goguynet.jp)

軽食なら、勝川駅近くの松新町のたこ焼き和ちゃんは、私が物心つく前から食べている。名古屋風と言った醤油味のたこ焼きは小柄で冷めても美味しく、昨今の値上げラッシュを受け数は減らしても1皿200円を貫き続けている。以前は勝川駅の踏切のド真ん前に大きな赤ちょうちんを提げており、車で行って踏切に引っ掛かってる間に頼んで受取り、戻って来ると車は依然踏切で止まってるという思い出がある。今は高架と再開発で踏切は無くなりお店も移転したが、今でも愛してやまないお店だ
和ちゃん - 勝川(JR)/たこ焼き | 食べログ (tabelog.com)

何の話ししてるんだっけ

私は交通事故に遭い、両足はそらもうメチャメチャになった。
でも何の運命か、ライダージャケットを着ていた上半身は判るが膝から上は骨のヒビすら無くかすり傷や打撲程度で済んだ。今でも驚いて仕方ないのだが、トレーラーにぶつけられてよくもこれだけで済んだな、としげしげ感嘆してしまう。
右斜め後ろからの接触で前に放り出され、ガードレールに両足を巻きつける形で歩道に着地したためである。
万が一あぁなってたら、こうなってたら…
うひ、考えるのはやめよう。

病院で頂いた食事は普通に炊いたお米としっかりしたおかず、夕食にはゼリーなどデザートも付いた。
これを「常食」といい、自力で食事ができる、制限がないなどの条件に合致した患者さんが受ける事ができる食事だ。確かに頭に包帯巻いてる訳でなし、両手も点滴数本刺さってるけど利き手は使える、食事には影響はなかった。
無いはずだった。

固形を拒絶

なんか知らんがご飯粒がバサバサに感じ、食欲というのがどうも出ない。
スープや味噌汁を啜ってご飯を流し込もうとしたのが、胃が受け付けないのか飲み込めない。
利き手しか動かないのと上半身を起こせない事からくるめまいなどで箸を使えてもお椀や皿を抑えられず離乳食の赤ん坊状態。看護師と相談して片手で持てる串食(ご飯をおにぎりにし、おかずなどを串に挿してくれる食事)にして貰ったが、どうしても食が進まない。
どよどよとしたものが喉に絡んでご飯を受け付けない。
やがて食事が苦痛に感じ、遂にお茶の一滴も飲めなくなった。
看護師さんは食事介助や叱咤をくれたのだが、気力がどうにも起きない。食べるという行動自体を放棄するような、数日の拒食が始まった。
断食をしようと言うわけではない。今更そんなのしたってこの腹の贅肉は落ちやしない(自虐)

食べたくない。

ただそれだけだった。
今思えば、よっぽど体も精神も弱っていたんだろう。
しかし、これはアカンと自省するだけの理性はまだあった。固形がダメなら、お粥にしてみたら?と看護師さんにアドバイスされ、その日のうちに担当さんに伝え変更して貰った。

食べれる!食べれるぞ!?
スルスル入るぞ?!今までの固形拒絶は何だったんだ!!!!!?

もう一つ、食事を拒絶した理由があった。

排泄を恥じる

やっぱ排泄ですよ(ここからはシタの話)

尿はバルーンで吸い出されるんですけど、便は肛門にチューブ差し込む訳にも行かない。勿論両足包帯グルグル巻きで起き上がれないからベッドの上で寝たまま出さなきゃいけない訳で。

これがタヒぬほど

恥ずかしかった!!!!!!!!

寝転がったお尻の下に差し込み便器っていう器具を入れてもらって、そこに出すんですけど、出した後看護師さんに回収してもらうのがホント、ホント、もう…恥ずかしい。ひたすら恥ずかしい…!あなた方は慣れていらしても!こっちが!こっちが!ダメなんです!!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!出した物を見られて人様に処理してもらうなんて!恥ずかしい!!!ああああああああああああああああああああああ!どんな状態かカルテに残るんでしょうそれ!?いやああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

んじゃ、飲み食いしなきゃいいじゃん。

そんな極論に辿り着いてしまい、3日、介助や食事の一切も拒絶し居直った。あまり食べてないしそう出ないだろう。出ないなら恥ずかしい事もしなくていい。うん、そうだ。贅肉はあるんだタヒにゃしない…
私はそれでいいと、思い込んでしまった。

4日目に悲劇が襲う。

さぁ寝ようという時間帯に、大腸が暴れ出したのだ!!グォログォロ!と音がなったと思いきや、中身が出口に向かってなだれ込むのを脂汗を流しながら感じ、たまらずナースコール。 これだけゴロゴロなんだ、すっと出るだろと思ったが、ここで3日の排泄拒否が牙を剥く!

出口の便がガッッッッッツリカチコチになってワインのコルク状態!!!!

それでも暴れる大腸!

不動で腸運動を促さなかったため腹筋で押し出せないくらい硬い!固いじゃなくて硬い!!!!寝転がったままだとまーーーー気張れない!ベッドをリクライニングしたり腸もみしたり水を飲んだり両太ももを交互に上げたり…

オギャーーーーーーダメだ出ない!

Nurse Call FIRE!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

私「出ません…便が詰まってて出ません…」
看「…でしょうね」
私「何かできませんか…?」
看「もう消灯時間で先生もいないので…」

ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ

暴れる大腸、動かぬ門を蹂躙す

うおおおおおおおおお肛門が切れるううううううええええええおおおおおおおおおおおおおおおうわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

何十分気張ったろう。
気張りすぎて目が回る…ものが出る前に脳の血管がやられる…
あまり気張りすぎても出ない…力を抜きつつゆっくり押し出そう…

カコンッ

厚めのプラスチックの差し込み便器に、乾いた音が落ちる。
「カコン・・・?カコンだとぉ…?」
その後は背景に虹がかかるほどスムーズに終わった。
再びナースコールをして、処理してもらい、大腸の反乱は鎮圧された。

人の恥も75日!!!

ここは病院。
処置を受けるのは!恥ではない!!!
あんな大難産をまたやらなきゃいけないくらいなら排泄の恥をとる!!!!!!!!!

私ってPMSが強くて下痢と便秘を周回するため、せめての安定のため乳酸菌サプリや食物繊維を摂ったりしてたんですよ。事故って緊急入院してしばらくそれをやってなかったので、母に頼んでサプリを持って来てもらい、ヨーグルトを毎夜食べる事に。
私はビオフェルミンとイージーファイバー推しです

ビオフェルミン製薬 (biofermin.co.jp)
イージーファイバー公式サイト – |小林製薬 (kobayashi.co.jp)


歩けないと腸が動かないため、腸もみを取り入れ、水分は一日に500mlのペットボトル一本を摂取できるよう気を配った。排泄を「恥ずかしい事じゃない、看護師さんだって「平気だ」って言ってたじゃないか!!」と自分に言い聞かせ、でも恥ずかしいのはまだ消えないし、臭いがどうしても出るので扇子を持ち込んだ。
排泄は寧ろ人間として当然、恥ずかしくない。
ま、いつかは自分でトイレに行ってできるようになる。
幾度と差し込み便器を使った。
この頃にはバルーンも抜去されてたため、便器にトイレットペーパーをどう詰め込めば尻が濡れたり汚れが広がらず拭いてもらう面積を減らせるかとか、色々実験しだすようになった。

出せるようになると、食事も普通にできるようになった。固形はまだダメだったが、お粥の温かさは胃腸に優しく沁みていった。胃腸への負担も減ったためか、食欲も徐々に戻っていって、お粥なので利き手のスプーンだけで食べれるため、離乳食後のようにもならなくなった。

色んな「嫌なこと」を排除してやっと、私は「食事ができる」ようになった。

食べられるって、とても大事なことだった。
当然のように食べるものに溢れ、選べるくらいの飽食の時代に於いて「食」にどれだけ私は楽しみがあったのか、食べられるという事がどれだけ大切な事だったのかを痛感した。
そして排泄も「これは尊厳だわ…」としみじみ日本の衛生に感謝した。

今日も食事を各自の病状に合わせ作ってくれる人がいる。
ベッドにまで配膳してくれる人がいる
食べさせてくれる人がいる。
片付けてくれる人がいる。

トイレを掃除してくれる人がいる
清拭をして清潔を保ってくれる人がいる

私はたくさんの人のおかげで、入院できているんだ。
ならば治してみせねば。
そう思えるようになったのはもうちょっと後のこと。

おまけ

味にケチつけるな

私の父はこの辺デリカシーがない(笑)
私は母の味ではない知らない味付けがされてる食事が出てきて毎回ワクワクしてました。青椒肉絲が塩味だったりとか、幽庵漬けとか。食べれないものは書いて提出してましたけど、嫌いだから食べれない、という食材はなかったので毎回完食キメました。
調理スタッフさん、本当にありがとうございました!

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