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オントロジー買ってよかったという話

追記:素敵な記事があったのでぜひこちら読んでください🙇‍♂️解説と考察が詳しくて面白かったです!

いままで音楽といえばYouTubeや音ゲーで聞くという発想だった私が、欲望にかき立てられてRain Drops 2ndアルバム「オントロジー」を買っちゃったので感想をまとめておく。

雨言葉

アルバム一曲目は自然の敵Pことじんさんによるバラード。なんと既にMV付きであがっている。Rain Drops…雨粒ということで、傘をさし出す関係にかけて、「辛さに寄り添うこと」をテーマにした曲である。MVでは、勝くんが涙を流す緑仙に傘を差すというシーンが象徴的だ。

特にここっていう聴きどころをあげるとすれば、間奏直前のわらべだ→アッキーナの歌うこの部分である。

僕らは煩わしいくらいに 陽が出ているから
今日もまた 開かない瞼を こじ開けて進む
誰の歌う 愛でも 希望でも 理想でもなく
僕たちは この悲しさを 正しさと呼ぼう

この曲に関しては聞けば聞くほど良さが伝わると断言できる。これはアルバムの構成上、最初と最後がじんさんのそれも雨を題材にした曲で、曲の構成を対比して楽しむこともできる。そしてうまくは言えないが、歌詞にはどこをとってもちょうどいい表現をしていて、だんだんとそれが耳に馴染んでいく感覚もある。非常に美しい一曲である。


ラブヘイト

アッキーナが作詞に関わったこの曲は、愛情の二面性をアップテンポな曲調とともに歌っている。アッキーナは曲にこめた思いをあえて隠しつつ、聞き手の解釈に委ねたいと言っていた。しかしそれでも、インタビューなどで小出しにされていた部分から、これは「憧れのあの人」に対する叶わない愛、それこそ特に「バーチャルに生きる推し」をテーマにしていると推測される。この歌詞に刺されるVリスナーも多いと思う。

切り抜きや非公式wikiづての知識によれば、アッキーナ自身がにじさんじを志望したのは男性ライバーの活躍、特に葛葉・卯月コウによる影響だと語っている。実際葛葉とのエピソードとして、初通話のときにファンとしての自分を捨てきれず、葛葉に引かれたなんていうものもある。その後「もうちょっとファンでいたいと思った」と語るところまで、リスナー目線を理解している。

ラブヘイトという感情は先ほど述べた通り、ある程度普遍的な感情である。その解釈の一つである、バーチャルライバー解釈はいろいろと面白い。バーチャルに夢見る私たちを刺すとも言えるし、距離感を測り間違えがちな私たちへの警告かもしれないし、歴戦のファンからすればジャブだろう。しかし、自身がバーチャルとして「向こう側の人」になったアッキーナが伝えることは、もっとポジティブである。歌詞をしっかり辿ればわかるように、最後にはこう述べられている。

照り返す月のように僕は 語りはじめていた
これからのStyle あなたと一緒に飛ぶよ
大嫌いで大好きです

この流れで変に思い出してしまったのは、卯月コウの「お前らはコウとか気軽に呼びやがって」っていうリスナーを刺し出すくだりである。こういうのもあり。

歌としての聴きどころはたくさんある。力一以外「若者色」の強いメンツであるからこそ、この人ここ歌うのかっていう感じもいいし、曲調の主題歌感が強くて、例えば緑仙や勝くんならソロで歌っても「合う」んだろうなみたいな妄想もしてしまう。Aメロのえるえるのパートも非常によいし、各サビのコーラスも美しい。自信を持っておすすめできる曲である


ソワレ

意味は舞台用語で「夜公演」である。昼、仕事で上手くいかなかった男が車で街まで出掛け、ダンスホールに迷いこみ・・・という背景で曲は始まる。お洒落でなおかつ少し時代がかったこの歌詞は、力一のお手製だ。

ご存知のようにジョー・力一というピエロは多才である。VTuberの中でも、所持するメイン武器が特殊なことで知られている。トークの場では、本人の高いアンテナと豊かな人生経験に支えられた知識をもとに、いろんな物事を上手いこと結びつけて、必ずユーモアを交えたコメントをしながら進める。物真似は上手いし、突飛な企画を考えつくし、即興力にも長けている。どこかで「その場のウケ狙いでここまでやってきた」なんて茶化していたが、だとしても達人級である。まさしく道化師だと思う。

オーディションでは出さなかったという迫真の歌唱力も忘れてはいけない。Virtual to LIVE 両国のライブパフォーマンスではそれが一際輝いていた。両国ライブにおけるまさしくジョーカーの立ち位置であった。ソワレを歌っているのはあっきーなと力ちゃん、そしてえるさんである。配信では面白人間のような印象を受けるこの三人が、夜公演として、歌ではそれぞれが洒落た雰囲気を作り出すという二面性こそがやはり彼らの、もといVTuber発アーティストの魅力なのだと感じさせる。


ミュウ

そして次に来るのは柊キライさんが作詞作曲を手掛けた「ミュウ」。こちらの曲はダークな雰囲気でバチバチにかっこいい。厚みのあるボーカルもいいし、疾走感のある曲調も虚無感と諦念をうたう歌詞も素敵で、いろんな要素が集まって作品になっている感じが伝わる。

たしか緑くんが一押ししているのがミュウで、実際緑くんの歌声に非常にマッチしているのもわかる。たぶん。正直声が混ざりに混ざっているので、勘違いしているパートもあるかもしれないが。緑くんといえば、にじさんじでは歌ってみたの人であり、投稿数だけでも飛び抜けている。特にオリジナル曲の「イツライ」は漫画を用いたMVの世界観と相まって、いちばんのお気に入りである。ゲリラで歌配信も多くおこない、にじロックや歌リレーの企画などからもわかるように、にじさんじの歌文化を支えてきた立役者だ。にじFes前夜祭 feat. FLOWにもVTuber Fesにもお呼ばれしていたと思う。

ミュウは特に、聞き流すだけで引き込まれるし、さらに丁寧に聞き込もうとすればしっかりと味がするような、作品としての完成度が高いように思える。挑戦のアルバム二作目にふさわしい一曲である。


ミスティック/マインワルド

いちばんのお気に入り!!!!正直な話この曲をクロスフェードで見つけなかったら、まさかアルバム買うなんていう決断には至らなかったんじゃないかな。それくらいに心に響いた曲だった。

やはりなんといっても、1サビでのえるえるの歌声が本当にかっこいい。力強い女性の歌声と歌い方のクセが気持ちよくはまっている。えるえるのにわか民からすると、えるえるといえば雑談である。にじさんじ初期からそのイメージはあり、話題があっちこっちに進んでいくことと、当時では珍しかった「配信時間延長」をよくしていたらしい。最近またミサトさんの即興劇などが話題になっており、そういうのは絶対にチェックするようにしている。

また他ライバーの絡みでいうと、変な盛り上げ方がクセになるため、複数人コラボにいると嬉しいライバーだと思っている。天然エンタメ人間みたいな捉え方をしている。ようするに、あまり歌を歌うような印象はなかったのだ。たしか元気になる歌リレーみたいな企画に参加していたのと、「えるえるフルネーム」ぐらいがにわか民の記憶である。あとはケリンさんとのコラボ歌ぐらい。それでもやはり個人的好みだと、Rain Dropsをキャリーしているといっても過言じゃないと思う。それぐらい、えるえるの声質の良さと歌い方のセンスが特にこの曲に表れているのだ

作詞作曲はツミキさんという方。私は不勉強であまり知らなかったので、この機会にチェックしてみようかな。CDの形で買った人曰く、歌詞カードを見て驚愕したそうだ。というのも、Aメロの歌詞の文字数が毎行そろっていて、ぎちっとつまった見た目になっているというテクニック。こんなのは初めて聞いた。

他にもサビ前のアッキーナと緑仙がぴしっと決まってたり、ラスサビのコーラスが美しかったりと、聴きどころはたくさんある。神曲に出会えて本当によかった


白と嘘

うってかわってこちらは落ち着いた曲調である。勝くんが作詞に関わっており、「優しい嘘と真実」というテーマのもとで大人の恋を描いたというのである。登場人物は誰でもない大人の男女で、綺麗でやさしい彼女が、失恋を経て心を傷つける存在になってしまう。情景としての雪が、嘘を隠していた雪になり、彼女の冷たさになり、失恋を経験した冬を閉じ込めた雪になる。こういった内容が主にサビで詩的に表現されている。

ひら ひら ひら 降り頻る雪たち
君 過去 未来 白く染め 嘘にする
何故 何故 何故 脆く 消えるのだろう
綺麗 嫌い 綺麗 雪のせいにしようとした

勝くんはおなえどし組の中でも中学生筆頭という印象で、歌詞や詩の経験があるというような話は聞いたことがなかった。また与えられたテーマも若者とはいえ大人が題材で、「なんで勝くんが?」となった人も多いと思う。しかし実際は逆にそれがはまったのではないかという気もする。大人でありながらどこか若々しい登場人物の感情を物語的に表現している。背伸びして書いたからこその味が出ている。

歌メンバーは勝くんとわらべだと緑くんで、何かとちょうどバランスがいいメンツだ。ユニット感があるというか、二次創作に繋がりそうという感じである。実際「白と嘘」組は遊びに行ったり食事したりと、裏での交流もあるみたいでつい嬉しくなってしまう。

白と嘘の聴きどころといったら、やはりわらべだの脆く儚く歌う箇所である。これを聞いたら「童田さん」としか呼べなくなる、というくらい他メンバーにも評価されている。ぜひ注目して聞いてほしい。

ひとつ ふたつ みっつ
二人の足跡(きおく)が
白く 晧(しろ)く 消えちゃう前に


オントロジー

こちらも既にMV付きであがっている。アルバムのタイトルでもあるこの曲は、作詞作曲が自然の敵Pことじんさん。この曲を聞いた友だちが「カゲプロ感を感じた」と言っていた直接的な理由である。全員集合の厚みのあるコーラスもいいし、キャッチーなメロディーもすばらしい。何よりもエンディング感があるこの曲は、アルバムの締めを飾るのにこれ以上なくふさわしいと感じた。

インタビューで語られた内容に、「6人ベストキーがばらばら」で、「全員の声が合わさって1つのハーモニー」が出来上がっているというのがあった。なるほど、6人が集結したRain Dropsの強みを存分に発揮しているのがオントロジーというわけだ。

そしてVリスナーとしてはどうしても触れたいのが、このアニメMVである。2次と3次の狭間を本当の意味で生きるVTuberが、2次よりの表現であるアニメを持ち出すというのがポイントが高いなと思った。一般的ににじさんじの魅力は、リスナーとの双方向の関係キャラクター性にあると考えられることが多い。2次の表現をするということは、双方向の要素をなくし、アニメで物語ることでキャラクターは3次から切り離され、独立したキャラクター性が強調される。そんな新たな体験、新たな解釈を与えるという点で、なんというか実写の人間には見出だしにくい魅力という気がした。ライバーが概念化すると言えばいいのだろうか。そんな魅力だ。

個人的に印象に残ったのは、アルバムの発売後、あのじんさんがツイートで「こういう曲が書きたくて音楽を始めたんです。Rain Dropsに出会えてよかった。ありがとうございます。」とまで呟いていたことである。後方腕組みファンとして、すごく嬉しくなった。というのも、Rain Dropsという存在が聞き手だけでなく作り手の側にまで幸せをもたらしてくれるということがわかったからである。Rain Dropsという新しい形の幸福の媒体。なんて素敵なことだろうか。



最後に、オントロジーというアルバムは私にとって、それぞれのメンバーそしてRain Dropsそのものの好感度をがっつりと上げた作品である。これからもRain Dropsから目が離せない。2月末のにじFesでは、二日目のライブステージをかえみとと同じ枠で任されている。ぜひなんとか抽選を突破して、生で見に行けたらいいな、と思っている。

もし良ければこちらの最強のクロスフェードも見ていってください。それでは。


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