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ショートストーリー№8「彷徨う女」

彼女は彷徨っていた
たった一人何も持たず深い森の中を
その姿はまるで夢遊病者のようだった
どこへ向かっているのだろう
ただひたすら歩いている
振り返ることもなく前だけを向いて

何かを覚悟しているような
探し物を見つけに行っているような
そのような強い意思が感じられた
よく見ると靴さえ履いていない
本当に夢遊病者なのではないだろうか
誰も彼女のことを知らないのだろうか

彼女は夢遊病者ではなかった
ただ夢遊病者のふりをしていた
誰にもばれないように完璧に
そして今日ようやく決行したのだった
自分の生まれ育った家を出て自由の身となった
家の者達は誰も気づいていない

彼女は裕福な家庭で育った何不自由なく
しかし厳格な父親と自分に無関心な母親
憐みの目で自分を見る執事やメイド達
子供のころは何も分からなかったけれど
今はそんな生活に耐えられなくなっていた
今日は17歳の誕生日

周りの状況が分かってきてからは
彼女なりに考えて家を出る準備を始めた
夢遊病者のふりをして家の中を散策しては
必要なものを一つずつそろえた
そして偶然出会った村の少年と仲良くなった
少年は彼女の話を聞くと協力を申し出てくれた

彼女は必要な物を預けた少年の家に向かっている

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