ワールドカップ予選の放映権料は高騰or吊り上げ?
今やサッカーは世界最大のスポーツにしてスポーツビジネスにおいても世界最大の市場になっている。放映権料で世界で最も稼いでいるのはイングランドのプレミアリーグで100億ポンドを超えるという日本円にして約1兆8745億円である。
ここ数年の放映権料高騰は度々世界中のニュースで取り上げられている。
日本でもワールドカップの放映権料が高騰しているために放送できないのではないかと問題になっている。そんな中で2026年ワールドカップ北中米大会の2次予選であるシリア戦が放映権料が高過ぎて地上波で放送できないとJFAが発表したのである。UAEの代理店が提示してきたのがシリア戦の放映権料で要求された額は1億円と言われている。
このUAEの代理店の人間は日本代表の会見場に来場してシリア戦の放映権料の額については高くないし、JFAはむしろ減額を要求してきてキャンセルしてきたと批判してきたとのことだ。
今回のJFAの対応には日本人の反応は概ね賛同的だ。
「深夜帯に行われる2次予選のシリア戦で1億円は高過ぎる」
「シリアはイスラエルと揉めているからお金がないので、吹っ掛けてきているのだろう」「放送しなくてもYouTubeで観戦すれば良い」などだ。
そんな中で2次予選の相手である北朝鮮戦の放映権料に対して1.5億円も要求されているという。シリアに続いて北朝鮮まで見れないということか。問題がある国というのはスポーツまでも外貨獲得の手段として使うということか。本当に迷惑な話である。
私の気持ちとしては2次予選で勝って当然の相手に大金出してまで放送する必要はないと思うし、そのお金が武器やテロに使われるかもしれないのなら尚更である。
しかし、その一方で思うところがある。
日本代表の試合が1億円。深夜帯とは言え高いのだろうか?
もちろん、相手は格下のシリアである。試合の価値は2次予選で勝って当然で、深夜帯なのだから視聴率も低いことは予想される。おそらく放送していたとしても赤字になっていたに違いない。だが、これは日本代表の価値が1億円以下でしかないということになる。
この1億円以下という価値についてJFAはおそらく国内でしか見積もっていないか交渉できる相手が地上波とABEMAなど国内メディアしかないのではないのだろうか。例えばだが、海外のDAZNは払わないのだろうか?amazonPrime、BEIN、SkySports等と交渉したのだろうか?もし、JFAが日本代表のブランド価値をアジア1に高めていたらアジア諸国に放映権料を売って1億円集めることが出来たのではないだろうか?
ここ1年の日本代表の躍進は目覚ましいものを感じる。スペイン、ドイツ、トルコとヨーロッパの強豪に打ち勝っているのだ。おそらくEURO2024の予選に出たとしても勝ち抜けるくらいの実力があると思っている。戦術、テクニックはヨーロッパクラスの試合と遜色ない。
そして、ここ2年の間に円安が進んだのも理由の一つだと思う。
放映権料の支払いドルベースになると思うので、自ずと円安で放映権料も高騰することになる。もしかしたらUAEのエージェントは本当に吹っ掛けているつもりはなかったのかもしれない。今のご時世、日本代表は強豪国だから1億円くらい取っても回収できるくらいのブランド力があると思っていたのかもしれない。
そう考えると日本が貧しくなっていると思えてきて悲しくなってくる。
JFAが日本代表の試合を世界に売ることが出来ない交渉力に悲しくなってくる。
私は今の日本代表の試合は深夜帯でも1億円以上の価値があると思う。世界中に放映権料を売ることができるメディアにアクセスする能力がJFAにあればシリア戦だろうと北朝鮮戦だろうと放映権料を1億円支払っても黒字に出来たに違いない。だから今回は2次予選だし、武器の資金になるかもしれなから仕方ないと思おう。
しかし、JFAが最終予選でも同じような理由を述べるようなら、私は本当の責任は円安誘導した黒田日銀前総裁のせいであり、JFAの努力不足だと思うことになるだろう。
すでにサッカーのレベルはヨーロッパの強豪クラスに近づいている。30年間でドイツやブラジルをお手本にして、ヨーロッパのリーグに選手を送り出してきたJFAの努力だと思う。今度はJリーグの経営や日本代表のブランド力をヨーロッパのレベルに近づける必要がある。
久保選手や伊東選手、冨安選手のプレーを見て日本のサッカー界に明るい希望を抱かずにはいられない。彼らの能力は世界のトップレベルと張り合えると思っている。
しかし、ブランド力とは選手の能力だけではなく世界に対する発信力なのだ。JFAに求められているのは彼らをより魅力的に見せる手腕だと思う。そして、日本代表の試合には1億円以上の価値があると放映局や配信会社に思わせなければならない。プレミアリーグが世界一の放映権料を稼ぐ理由はFAの発信力であり、クラブチームの努力だと思う。ブランド力の目指すべきお手本はイングランドにあるのかもしれない。
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