楽器の音の違い

 今回は楽器の音の違いがテーマです。エレキ・ギター&ベースには形や色の異なる様々なモデルがあり、(初回のnoteでも書いた通り)値段もピンキリですが、もちろん音色も違います。同じ形の量産品でも音が違う、いわゆるアタリハズレがあったりもします。そもそもなぜ楽器によって音色の違いが生じるのか、その要因をいくつか挙げて行こうと思います。

・ 楽器の種類が多いのは何故か?

 弦の振動を音源とする楽器を総称して弦楽器と言いますが、弦そのものの振動だけでは音量が僅かです。このため電気を通さないアコースティック系の生楽器(バイオリンやアコースティック・ギターなど)の多くは、弦の振動と共鳴する構造を持つことで音量を大きくする仕組みとなっており、構造や形状が音質の違いに直結するので、(多くのブランドが製作しているとはいえ)形状のバリエーションはそれほど多くありません。それぞれの長い歴史のなかで洗練され定着したモデルも多く、奇抜な形状はあまり受け入れられない、という側面もあるでしょう。

 これに対してエレキ・ギター&ベースは“弦の振動を電気に変換する”のが基本的な仕組みであり、音量の問題は(ハウリングしなければ)アンプ側でいくらでも対応できます。基本的な仕組みさえ踏襲していれば、ある程度それらしい、一般的に認知されているであろうエレキ・ギター&ベースの音が出せるので、構造や形状の自由度が高いとも言えるでしょう。

 また、エレキ・ギター&ベースはまだ歴史が浅く(と言っても80年くらい)、構造や形状が完全に定着しておらず、セールスの面でルックスやファッション性も重視されているという面も大きいでしょう。これから楽器を始めたいと思う方にとって、憧れのミュージシャンが使っているモデルは選択肢のひとつになりやすいし、ブランドに対する安心感もありますよね。

・ エレキ・ギター&ベースの定番モデル

 エレキ・ギター&ベースは構造や形状に自由度があるとは言え、もちろん定番モデルや人気機種が存在します。諸説あるとは思いますが、エレキ・ギターとしてはフェンダーのストラトキャスターやテレキャスター、ギブソンのレスポールが定番ですね。ベースではフェンダーのジャズ・ベースやプレシジョン・ベースに加えて、ミュージックマン社のスティングレイなどが定番とされているように思います。これらは全て形や構造が違いますし、同じモデルでも値段はピンキリですが、なんといってもそれぞれ音色が違います。

・ エレキ・ギター&ベースの基本構造

 エレキ・ギター&ベースの本体(ボディ)は木材が主流です。ボディには棒状のネック(やはり木材が主流)が取り付けられ、ボディ上に固定したブリッジとネックの先端部分(ヘッド)に固定したペグを両端として弦を張り、ボディ上に固定したピックアップによって弦の振動を電気信号に変換するのが基本構造です。

 エレキ・ギター&ベースはボディ構造とボディとネックの接合方法で大別できます。ボディ構造では、空洞のないソリッド・ボディの他、完全な中空ボディの天板にブリッジが設置されるフル・アコースティック・ボディ、センター・ブロック上にブリッジを配置し両脇に空洞部分を設けるセミ・アコースティック・ボディ、外観上は見えないがくりぬき部分を内包するチャンバー構造などがあります。ボディとネックの接合方法では接着によるセット・ネックのほか、ねじ止めのボルト・オン・ネック、ボディにネック材が貫通しているスルー・ネックなどがあります。

 エレキ・ギター&ベースが出力するのは電気信号であり、アコースティック・ギターなどのようにボディを共鳴構造とする必要もありませんが、楽器自体の形状や構造の違いが音色にも影響します。それは弦振動そのものが楽器の形状や構造の違いによる影響を受けるからです。筆者の実感としては、ボディ構造はアタック感や音色のふくよかさ、ネックの接合方法はサスティンの違いに顕著に現れるように思います。

 もちろん構造や形状だけでなく、ボディやネックの材質も音色に影響します。ピックアップがボディやネックの響きそのものを拾っているわけではなく、弦振動そのものに影響を与えたり、弦振動がボディやネックを介してピックアップ自体に伝わり弦の振動から得られた電気信号に影響を与えているのだと考えられます。

・ ピックアップについて

 エレキ・ギター&ベースの心臓部とも言えるのが弦の振動を電気に変換するパーツ、ピックアップです。磁気を帯びたポールピースにコイル状に電線を巻いたマグネット・ピックアップが主流ですが、マグネットや電線の種類、巻き方、形状によって音色の違いがあります。大別してシングル・コイル・ピックアップとシングル・コイル・ピックアップ2個を一体化させたハムバッキング・ピックアップがあり、搭載する位置によっても音色が変わります。一般的にブリッジ側に寄るほどトレブリーで、ネック側ほど太くこもった音色になります。複数のピックアップを混ぜることでも音色が変わります。何故そうなるかはまた別の機会に書きますが、それぞれのピックアップで得られた音の特徴が単純に合成されるわけではないということだけ、頭に入れておいてください。

 また、電装系のバリエーションとしては楽器自体に電池を必要とするプリアンプなどを搭載するアクティヴ・タイプと、電池を必要としないパッシヴ・タイプがあります。どちらにも一長一短あり、音色の特徴も異なるのは書くまでもありません。

・ 最後に

 今回はエレキ・ギター&ベースの音が違う要素をいくつか挙げてみましたが、“音が違う理由そのもの”についてはあまり言及しませんでした。まあ、それぞれの事象については書きたいことも多いし、長くなってしまうので改めて書いていこうと思っています(笑)。

 因みに以前のベースマガジン2004年11月号にて『音が出る理由/変わる秘密』という特集(我ながらかなりの力作)を書いておりまして、もう発売はしていない号ですが、何かの縁で見かけたら是非購読して感想を頂けると嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?