あわゆきかんてん

あわゆきかんてん

女1「あわゆきかんてん、かんてん、ほーい。」
女2「何それ?」
女1「覚えてない?昔あったCMの歌」
女2「そんなん、あったっけ?」
女1「あったよ」

女1「ほら、白い牛乳固めたようなお菓子でさ、
ふるふる。っていってて、で、冷やして食べるやつ。」
女2「んー、覚えていない」
女1「そっか。」
女2「それっておいしかった?」
女1「うーん、それが味しなかったんだよね。」
女2「なんじゃそりゃ。」

ソファに座って二人でテレビを見ていた。
お笑い番組の勝ち抜き戦。
彼女はお風呂上がりのホカホカした湯気を立てながら、
髪にバスタオルを巻いている。
テーブルの上には甘い缶チューハイ。
桃のイラストが描かれている。
蛍光灯の灯りがこうこうと光る、
わたしの一人暮らしのアパート。

わたしたちはたまにこうして互いのマンションに泊まっている。
どちらがというわけでもなく、
なんとなく「この日空いてる?」
みたいな感じで連絡がきて、
それで互いの部屋に泊まっていく。

ごはんも特に気を使わないから、
冷蔵庫にあるものでカンタンに作って食べる。
それが楽しかったりするんだけど。

桃の缶チューハイを飲み終わって、
今度はレモンの缶チューハイをあけようと冷蔵庫を開ける。

「ねー、これあけてもいい?」
無邪気に笑う姿がかわいい。
同じ年ながら、ついつい、かわいいなぁ。って思ってしまう。
なんの疑いも持たずに今まで生きてきたみたい。
なんだか甘やかしたくなるふわふわした生き物だ。

「あ、そうそうマロンパイ食べる?
おみやげでもらったんだ。二つあるしーーーっ。」
「そこは淡雪寒天じゃないの?」
「もう淡雪寒天はどこで売っているかわかんないよぉ。」
「話が飛ぶなぁ。」
「ねぇねぇ、誰が決勝に残ったの?」

テレビではまだお笑いの番組が続いている。
ベテラン芸人審査員が若手芸人の出演者に向かって感想を述べている。
マロンパイはごつごつして大きい。
わたしと彼女は視線をテレビに戻した。

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