上手くなる方法は一つしかない

『20人に一人の法則』の続編になります。
前回の記事をまだ読んでいない方はお先にこちらから。

https://note.com/akari_monster/n/nf8532fbfdb99

中々重たい内容になると思いますが、必ず再現性のある内容にすることを心がけています。
特に、マインドセットみたいな話題に触れるのはあまり好きじゃないんですよね。
結構SNSなんかにもいるけど、なんか新興宗教感ない?
こんなん言ったらなんですが、あんな胡散臭いのに騙される方も騙される方だと思うんだよなぁ(´Д` )
恐らく本人たちは騙してるつもりじゃなくて本気で言ってそうなもんだから余計に気色悪い…

ちょっとただの悪口みたくなってきましたが、実は全く関係ない話でもなくて、「近道出来る方法なんてない」というのを正しい意味で理解して頂きたいなと思っております。
昨今ネット上に多種多様な情報が混在している中、皆様もその中から取捨選択し情報を得ていると思います。
規模の違いがあれど、1日に相当な数の正誤判定をしてるという事です。
そこで問題なのは、何を基準にジャッジしているのかという点です。
音楽学習に限った話ではありませんが、「なんか前向きに聞こえる情報」、「何となくラクできそうな情報」を“正しいこと”と勘違いし、選んでいる事はありませんか?
上に挙げた教祖様達の良いカモですよ。

例を出しましょう。

EQやコンプレッサーの使い方は非常に難しいです。
設定する値は状況によってケースバイケースですし、特に学習初心者には聴覚的な効果や、そもそも何のために使うものなのかが非常に分かりにくいです。
実際には、周囲にどんな音が鳴っていて、どのような出音の時に、どのような処理をすると、どんな音になるのかを何百パターンも耳と体で覚えて初めて操れるものです。
よく、ツマミの位置なんかを必死で覚えてる人いますが1ミリも意味ないのでやめましょう。
エンジニアになる方というのは、何年も、耳の肥えたベテランの仕事を隣で見て、時にはああでもない、こうでもないと言われながら修行し、やっと技術を手に出来ます。
だからエンジニアさんって凄いんです。

以上の点を踏まえて、

『ボーカルコンプセッティングの決定版!』
『ロックギターが映えるおいしい周波数EQレシピ!』

みたいな記事が、いかに的外れで、こんなのを安直に信じるのがいかに危険か分かりますか?

敢えて皆んなが平等に分からなさそうなエンジニアさんの話題を出しましたが、楽器の演奏にもほぼ同じことが言えます。

寧ろ、楽器の練習に関してはスタート地点では正しいやり方してるのに、どんどん道を逸れていく人が本当に多い印象です。

少し引っ張りましたが、ようやく本題です。
上手くなる唯一の方法、答えをお教えしましょう。

あなたの演奏技術というのは「どんな楽曲」を「何曲覚えて演奏できるか」に全てが比例します。
つまり、
様々な楽曲をコピーし、ひたすらに覚えるという作業を繰り返すこと
これが、上手くなる唯一の方法です。
これ以外あり得ません。

上記にも述べたように、楽器を始めた当初は様々な楽曲に触れ、正しい方向に進んでいるのに、ある程度弾けるようになってくると段々とベクトルがズレてくる人が多いです。
ギタリストの成長が止まるときにはパターンがあります。

・楽器を持ったら弾けるフレーズを弾いているだけで、新しく楽曲を練習していない。
・既に弾けるレベルの曲にしか触れず、高難易度の楽曲にトライしていない。
・新しく曲をコピーするときにコードネームだけザックリと拾って、細かいフレーズまではコピーしていない。
・アドリブやオリジナル曲のフレーズを作ることに傾倒し、音楽理論やスケール練習に時間を割いているため、そもそもコピーをしていない。

伸び悩んでいる人の九割九分は上記のパターンのいずれか、もしくは複数に該当しています。
まぁ簡単に言えば練習してないから上手くなってないだけってことです。

特に最後のパターンの人は要注意です。

まず知っておいて頂きたいのは、音楽理論やスケールを沢山覚えることは、あなたの音楽的な引き出しを増やすことには殆ど繋がりません。
マジです。
つまり、演奏技術の成長が止まっているだけでなく、あなたの目的だったアドリブや作曲の技術を伸ばすことにも繋がっていないということです。
今すぐやめて下さい。

昔レッスンしてて、
「〇〇の△△って曲のBメロのバッキングみたいなフレーズ作りたいんですけど、どんな理論覚えればいいですか?」
みたいな質問をよく受けたんですが、
「ちょっと聞いたことないんで弾いてみて!」
と私が言うと
「いや、弾けないんですけど」
みたいなのよくありました。
作れないのは弾けないのが原因です。
弾けるもの以外作れないと思って下さい。

音楽理論を覚えると難解な曲もアドリブを取れるようになったり、オリジナル曲を自由自在にフレージング出来るようになると想像されている方が多いようですが、音楽理論はそんな万能な魔法じゃありません。
つまり、理論を覚えても近道は出来ないということです。

理論の正しい理解と扱い方に関しては別で記事にします。
薄っぺらいノウハウを売って金稼いでる奴らに私よりも理論に精通した人間などいないので安心して私の言うことを信じてください。

ちょっと本題とは逸れますが、誤解されがちなので少し補足しておきます。
アドリブソロって0から1を生み出す作業だと思われがちですが、実はそうではなく、何パターンも弾けるフレーズからその都度選択し、短いフレーズ同士を繋げていくことで全体を構築するといったイメージです。
なので、特にペンタを覚えたてのギタリストは次々に色んなスケールを覚えようとしますが、寧ろスケールなんか覚えずに、100曲くらいギターソロをコピーした方が早く成長します。
結局、ここでもどれだけコピーしたかなんですね。

ここで、「あれ?このフレーズ超カッコいいんだけど自分の知ってるドレミファソラシドと違うぞ?」となった時のみ、その部分のスケール名だけを調べましょう。
スケールの知識はこのレベルで全然足ります。

弾けるフレーズがない状態でスケールだけを覚えることに全く意味はありません。

というか、覚えたスケールを適当に上がったり下がったりしてるだけのものをアドリブソロと呼ぶのは大分無理があると思うなぁ私、、メロディてなんだっけ?リズムってなんだっけ?( ´△`)

特にジャズなんかは、「今まで聞いたことない響きするし、なんか敷居高そうだから理論必要っしょ!」て思われがちなんですが、ジャズセッションこそ名演のオマージュ大会みたいなもんです。
誰々がいついつの公演でこんなフレーズ弾いたよねぇ!みたいなのをソロ中に差し込める人が凄いし、分かる人も凄いみたいな楽しみ方です。
なので、中途半端な聴き込み具合で参加しようものなら「お前、このアルバムも知らないとかモグリか?よくもこんなところにノコノコと出てきたな」みたいな空気になるので私はもう二度とジャズなんかやりません。ん?←

さて、話が脱線してきたので戻しましょう。

コードや調号などの基礎的な楽典をある程度知っていて、スコアも無難に読めるよってレベルの方は是非、自分の耳でフレーズを採ってコピーして下さい。
そうです、耳コピです。
よくレジェンドギタリストのインタビューでも「昔レコードプレーヤーをスロー再生して何回も聴いて…」みたいな話出てきますよね。
結局、耳コピが究極です。

よく「耳コピなんて出来ないよ!」て言われるんですが、あなたはギターを始める前からギターが弾けたわけではなかろう。
最初は誰しも出来ないものですよ。
今日から始めればいいじゃないですか。
自分にはまだーとか言わずに始めるなら早い方がいいです。
(※コードの握り方分かんない、楽典って何?ってレベルの方は暫くスコアから覚えて下さい。その際どんなルールで譜面が書かれているのかを軽く意識出来ればベターです。)

因みに「絶対音感を身につけるのは外国語を覚えるくらい難しい」なんてよく言いますが、これは本当です。
幼少期から音楽やってないと身につかないと思われてるのもこれが原因です。
なんですが、絶対音感持ちじゃなくても耳コピは出来ます。
てか、私も含め大半の人は絶対音感持ちじゃないです。
持ってればとんでもなく有利であることには変わりありませんが。
(クラシックの世界だと絶対音感ないと生き残っていけないかなぁ…)

耳コピはスコアから楽曲を覚える数倍あなたのポテンシャルを高めます。
フレーズを採るために意識的に楽曲を聴き込む行為は、目的のフレーズとともに他のパートの響きごと脳裏にインプットします。
この時に刷り込まれた響きというのは、あなたがフレーズをアウトプットする段階でも非常に重要な感覚になります。
よく「フレーズが降りてくる」なんて言い方をしますが、フレーズが降りてくるという感覚を作る源が、このフレーズを響きごと刷り込むということなのです。

そして、あなたはきっと、採ったフレーズを五線譜に記譜するはずです。
これは、勿論、譜面を綺麗に書く練習にもなるのですが、この“耳で採ったフレーズを記譜する作業”はあなたの読譜能力をもとんでもなく高めます。
取り敢えず、騙されたと思って2、3曲採って記譜してみて下さい。
結構大変だと思いますが、兎に角やって下さい。
採り終わる頃には自分でも驚くほどに譜面が読めるようになっているはずです。

注意事項があります。
必ず、自分が大好きな曲を採ってください。
勉強熱心な方は、学習のために好きでもない難解な楽曲を採ろうとしがちですがガチで音楽嫌いになります。
弾けないし、楽しくないなんて最悪の極みです。
そもそも、好きでもない曲を採ってもあまり身になりません。
前にも書きましたが、あなたのアウトプット能力まで高めることが目的です。
創作や、特に即興の場面で好きでもないフレーズを弾こうなんて発想にはなりませんからね。

あと、またラクしようとフレーズ集みたいなのを買ってきてお茶を濁さないことです。
そんな事しても、どうせ何も身につかないのでかえって遠回りになるとだけ忠告しておきます。
必ずあなたの好きな作品から生きたフレーズをコピーして下さい。

最後に、何故20人に一人しか継続出来ないのか私なりの見解を述べてこの話を終わろうと思います。

皆さん、音楽好きですか?
楽器を演奏するのは好きですか?

ったりめーよ!だから音楽やってんじゃん!ときっとお答えになると思います。
しかし、私は楽器をやってる音楽好きには二種類の人がいるんじゃないかと思っています。
一つ目は、楽器を弾くことそのものが好きなタイプ。
そして、もう一つは、楽器を弾ける自分が好きなタイプです。
馬鹿にしているわけではありません。
寧ろ、私の体感としては後者の人の方が圧倒的に多いと思っています。
これがもしかしたら1/20くらいの比率なのかもしれません。

何が言いたいのかもう少し深く掘り下げましょう。
私は自分の生徒によく、
「練習とは、弾けないものを弾けるようにすることだ」
と言っていました。
この記事をここまで読んで下さっている皆様はきっと既にご理解頂けると思います。
しかし、練習すれば毎日何かしらの成果を感じられる訳ではありません。
なんなら、何も身になっている気がしない、弾けない弾けないと悩む日々の方が圧倒的に長いわけです。
こんな日でもあなたは「今日もギターが弾けて楽しかった」と笑って言えますか?
明日も弾けなくても、来週も弾けなくても、同じ練習をし続けられますか?
これが全ての答えです。
ギターが上手い人というのは、他人より手が大きかったわけでも、握力が強く生まれたわけではありません。
ほんの少しだけ人よりもギターを弾くのが好きだっただけなんです。

「練習する遊び」だと割り切って楽しく練習出来れば最高です。

ギタリストの津本幸司氏が自身のブログで、ポール・ギルバート氏に同行した際、朝から晩まで音楽の話ばかりしていて、朝食の会話が「今朝弾いていたフレーズで気づいたんだけどさ!」から始まり、隙あらばギターを取り出し練習しているといった記事をあげられているのが印象的でしたが、天才と呼ばれるスーパースターはこんなにも練習しているのですよ。
昨日ギターを手に入れた少年のようでほっこりしますが、日々この様に鍛錬を積み重ねるライフスタイルを送っているのは本当に尊敬しかないですね。

前回の記事でも軽く触れましたが、商売的に成功するかどうかはまた別の話です。
モンスター級の実力を有しているにも関わらずご飯にありつけなくドロップアウトする人も大勢います。
エンタメというコンテンツの性質上、人々の生活にゆとりがなければ消費も渋くなるので、不景気である昨今、状況はより厳しいものになるでしょう。

しかし、音楽は間違いなくあなたの生活を豊かにします。
特に、出来なかったことが出来るようになる、この感覚は何物にも変えられない喜びがあります。
私は、RPGでどんどんレベルがあがり、お話が進んでいくような感覚を現実世界で味わっているようだと感じています。
高級な機材にさえ手を出さなければ実はお金もそんなに掛かりません。
大体の人はガンガン課金しまくりますが、それもまた人生のモチベーションかも知れません(笑)

繰り返しになりますが、兎に角コピーです。
それ以外何もしなくて構いません。
運指練習もやめていいです。
実はそんなに効果もありません。
というか、弾きたいフレーズ以外の運指なんか出来なくても問題ありません。

スコット・ヘンダーソン氏は自分の教え子に「ステージでやることだけ練習しろ」と常々言っていたそうです。
運指練習もスケール練習も理論の試験もステージでやらないのでいらないということです。

この記事を読んだ恐らく20人に一人くらいの方は、これから練習を始め、爆発的に上達するでしょう。
あなたがそうであることを願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?