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CMU RISS:学部生用ロボティクス研究プログラム

この記事はけいひぐさん企画の研究留学アドベントカレンダー2019 11日目の記事です。

こんにちは。九州大学工学部4年のみなみです。機械工学専攻で手術ロボットに関する研究をしています。2017年9月11日から2018年9月10日までちょうど1年間 (学部3年の前期と後期の間)、アメリカに留学していました。

この記事では、この留学のラスト3か月で参加した カーネギーメロン大学 (CMU: Carnegie Mellon University) の Robotics Institute Summer Scholars (RISS) programについてご紹介します。

私にとってlife-changingな経験をくれたプログラムなので、より多くの人 (特に学部生) に知ってもらえたらと思い書きました。簡単な紹介にとどめるつもりが長くなりましたが、これを通してRISSに興味を持ってもらえると嬉しいです。

留学概要

まずはテンプレートに沿って概要から
・いつ行ったか:2018年6月1日~2018年8月31日 (本来は8月9日までだったが延長)
・どこに行ったか:The Robotics Institute, School of Computer Science, Carnegie Mellon University (アメリカ・ピッツバーグ)
・何をやったか:自動運転車開発用シミュレーションの環境構築 (with Dr. John M. Dolan)
・どうやって行ったか:Robotics Institute Summer Scholars (RISS) programに応募


RISSとは

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Roboticsの名門CMUのRIが2006年から開催しているロボティクス研究プログラムです。対象は学部生で国籍や専攻は問わず、5月末/6月頭~8月頭の11週間にわたって開催されます。毎年世界中から35人ほどの学生が採用され、それぞれがRoboticsやAIの分野をリードするリサーチャーの指導のもと最先端の研究プロジェクトに取り組み、最後にその成果を発表します。リサーチのサポートはもちろん、ワークショップやNREC見学、学会参加など、Roboticsにどっぷり浸かる機会が豊富にあるのも特徴です。


手厚いリサーチ環境

学部生用研究プログラムということもあり、以下のような本格的ながらもはじめて研究するひとに優しい環境が整っています (研究ひよっこの私の主観ですが)。

 ・ひとりひとりにメンターとしてfacultyがつく
 ・実際の研究プロジェクトに参加できる
 ・成果発表の場が用意されている
 ・学生の研究活動へのサポートが手厚い

参加学生はメンターであるfacultyのガイダンスのもと研究に取り組みます。PhD学生のアドバイザーの有無やミーティングの頻度は人によりますが、小耳にはさむ他のインターンの話と比べてPIと直接関わる機会が多い印象です。
私はArgo AI Center for Autonomous Vehicle Researchで自動運転車の研究をおこなっているDr. John M. Dolanにお世話になりました。このラボでは週に1回ずつ全体ミーティングとグループ別ミーティングがあったため、最低でも週2回はJohnと話す機会がありました。さらに、PhDのアドバイザーをつけたり必要に応じて個人ミーティングに対応したりしてくれたため、かなり助けられました。

またRISSでは、日本企業の短期インターンでよくみられるようなインターン用〇〇ではなく、実際の研究プロジェクトに参加することができます。PhD学生の手足としてただ研究のお手伝いをするのではなく、各々に研究テーマや研究課題が与えられることも多いです。まれではありますが、このプログラムでの研究成果をICRAやIROSで発表する人もいます (ここでトップ学会しか狙わないのがさすがCMU感…)。またRISSが終了してもCMU滞在を延ばしたりリモートで研究を続けたりすることができます。

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さらに、プログラムの最後にはオープンなポスターセッションとRISS Working Paper Journal用のペーパーの執筆が待ち構えています。大きな成果がでようとでまいとポスターとペーパーは必須なので、途中でたるんだりやりっぱなしになったりすることがなく、適度なプレッシャーのもとで研究の一連の流れを体験できるようになっています。

このポスター発表やペーパー執筆、研究を始めて間もない学生にとってはなかなかハードルが高いと思いますが、それらをサポートする体制もしっかりとあります。RISSの学生向けにペーパーの構成や書き方、ポスターのデザイン、エレベーターピッチなどのワークショップが開かれたほか、Global Communication CenterにRISS専用予約枠が開設され、ペーパーの添削をお願いしたりピッチの練習をしっかりと行ったりすることができました。また、研究倫理や著作権、大学院(生活・resume・SoP)や心身の健康についてのワークショップもありました。


豊富なイベント

RISSは研究プログラムですが、Roboticsを中心にイベントも多く用意されています。参考にRISS 2018でのイベントを列挙してみました。Wednesday Lunch以外は自由参加だった気がします。

 ・Wednesday lunch
 ・Robot Operating System (ROS) Workshop
 ・DJI Drone Workshop
 ・UBTech Humanoid Workshop
 ・Robotics: Science and Systems (RSS) Conference
 ・National Robotics Engineering Center (NREC)Tour
 ・AuroraOpen house
 ・RI Lab Tours
 ・RI BBQ
 ・小学生・中学生・高校生への研究紹介 (outreach活動)

毎週水曜日には、CMU内外のリサーチャーやエンジニアによるトークやRIのPhD学生による進路相談など、Roboticsやキャリアにまつわる様々な話をfree foodとともに聞く会が設けられていました。DJI WSとUBTech WSはハッカソン形式で、優勝賞品がMAVIC AIR、参加景品がヒューマノイドロボットと豪華な報酬も (ドローンでまだ遊べてない…早く遊びたい…!笑)。

また、CMUで行われたRSSという学会 (初学会!) にはRISSの学生の参加も認められていたため、とても楽しませてもらいました。特にポスターセッションでPhDの学生さんたちとお話をするのにはまり、安直にも「研究めっちゃかっこいいじゃん!!」と思うようになりました。ネットワーキングもちょいちょいできたり、学会のバンケットや会社のパーティーでしこたまお酒をいただいたり、全体としていい想い出しかないです笑。

ほかにも、普段は見ることのできないNREC内を見学させてもらったり、自動運転車のスタートアップAuroraのOpenhouseに参加させてもらったり、通常の研究インターンじゃできなかったであろう経験をたくさんさせてもらいました。

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結局たくさん書いてしまいましたが、研究以外にもいろんな方向からRoboticsの世界をのぞいたり楽しんだりすることができるよ!というのが肝です。また、人が多すぎず顔を合わせる機会も多いため仲良くなりやすい、というのもRISSの特長だと思います。


ここからは、RISSに参加したくなってきた方々が気になるであろう諸々について書いていきます。


参加者どんなひと…?

ここでは RISS 2018 参加者のbackgroundを紹介します。こんな人たちが集うのか~というのを感じていただけたら嬉しいです。メンターをしてくれるFacultyについてはRISSのHPをご覧ください。

RISS 2018 には1年生から学部卒業直後の人まで、私を含め35人が参加しました (FAQからその項目が消えたので要確認ですが、当時は卒業直後の人も参加可能でした)。とはいえ9月から3年生または4年生の人がほとんどだった気がします。

出身国・所属大学も様々で、アメリカの大学所属の子は半数ほど、あとは中国やインド、メキシコをはじめ、カタールやカザフスタンなど世界中から集まっていました (50カ国以上から参加してるそう)。

専攻はCSが大多数でしたが、ECEやMechE、BioEやApplied Mathもいました。なかにはすでに undergraduate researcher として研究に取り組んでいたり、RISS含め研究プログラムに参加したりといった経験のある子もちょくちょくいましたが、私のように今回がはじめての研究活動の人も多かったです。

ただ、約800人の応募から選ばれた人たちということもあり、Roboticsおよびその技術への強い興味Robotics/AI/MLについての知識/スキル/経験はっきりとしたresearch interestsのいずれかは持っているという印象でした。


どうやって参加するの?

RISSプログラムHPから応募してください。だいたい11月ごろから募集を開始し、1月半ばから末にかけてが締切です。応募に費用はかかりません。

応募に必要な書類は、
 ・所属大学での成績通知書 (英文)
 ・Resume/CV (履歴書的なもの)
 ・Statement of Purpose (志望理由書的なもの)
 ・英文推薦状 (1通以上)
です。変更の可能性もあるため詳しい情報はかならずHPで確認してください。

ResumeやSoPの書き方については、米国大学のwriting centerやcareer centerのサイトを参考にしました。日本語でアドバイスを書かれている海外院PhDの方もいらっしゃるので、ブログの出願記事を調べるのもよいかもです。
推薦状は「申請者のことをよく知っている人に書いてもらうこと」とよくいいますが、当時の私には指導教官も特に親しい先生もいなかったため学科のクラス担任の先生お2人にお願いしました。基本的に先生方はお忙しいですし、初めて英文推薦状を書かれる方もいらっしゃるので、応募を迷っているとしてもとりあえず早めにお願いすることを強くお勧めします。


滞在中のお金は…?

出資元や支給形態・支給額は異なりますが、US/International問わずなんらかの形で生活に十分なだけの financial support を受けることができます。ただ大学院出願や研究室インターンでもよく聞く話ですが、自分で奨学金を獲得できているとより採用の可能性が少し上がるのかも…?とも思います。

少しイレギュラーなケースですが私のお金事情についても。3か月間の滞在のうち、6~7月の2か月間は「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」という留学奨学金からお金をいただいていたので、CMU側から資金援助は受けませんでした。トビタテの支給がない8月分はJohnから$1000を奨学金としてもらう予定でしたが、滞在を伸ばしてもらった関係で奨学金ではなく時給制のお給料をいただきました。


滞在中の宿泊先は…?

大学の寮など宿泊先の提供はありませんが、夏休み中インターンなどで家を空ける RIの学生のサブリース情報がプログラム側から提供されます。また、近くにピッツバーグ大学もあるため学生の住む家は多く、RISSのSlackでメンバー同士でのシェアハウスの話がでたりFacebookグループで家を探したりと家探しの手段も多いので、住む場所がみつからないことはほぼないと思います。ただ、秋学期の開始まで滞在が食い込むと学生のサブリースがだいぶ減るので注意してください。

それからCMUにはかなり心強い Escort Service (18時半~翌6時半の間30分おきに走る 学内の指定の場所から家の近くの交差点まで送迎してくれるバスサービス)があるので、サービス対応のエリアに住むことをおすすめします(これには大変お世話になりました)。また困ったときはPittsburgh便利帳とpgh-jメーリングリストを使うと便利かもしれません。


さいごに

よく聞く話ですが、割と早い時期に留学したり研究に触れたりできたのはよかったです。惹かれる分野に出会ったり、逆に好きだけど研究したいわけではないなと気づいたり、やってみてはじめてわかったことがいっぱいありました…。おかげで進路の選択肢が増えたり思っていた道からそれたりして少し迷子になってしまいましたが、ふわっと進むよりは悩めてよかったなと思います。(いまもまだ迷走中だけどきっと大丈夫だと信じてます…笑)

開催時期からして日本の大学に通っている人には厳しいかもしれませんが、Roboticsの研究に興味がある人にはぜひとも参加してほしいです。私は「研究がどんなものか体験する」「Roboticsの世界をexploreする」ことを大きなテーマに参加しましたが、想像以上にぴったりなプログラムでした。もちろんもっと具体的な研究目標がある人の期待にも応えてくれると思います。研究経験やpublicationなどの業績がないことを理由に臆する必要はないので、面白そうかも?と思ったらとりあえず応募してみてください。

参加した経緯や感じた・学んだこと、大変だった応募・宿泊先・ビザ・お給料の話同期たちとの素敵な想い出など、RISSについて書き残したい個人的なことは山ほどありますが、大好きなプログラムの紹介だけでかなり長くなってしまったのでまた今度の機会にしたいと思います。拙い文章ですが、RISSについて少しでも多くを伝えられていたら幸いです。ここまでお付き合いくださりありがとうございました。


Special Thanks
森先生・山口先生・若山さん・ひでさんをはじめとするRISSとの縁をつないでくれた方々、ピッツでの生活を楽しく&サポートしてくれたRISS'18のみんな・青木さんを含むCMUで出会った方々、ありがとうございました。
特に、この大きな経験を与えてくれたJohn・Rachel・Ziqi、研究をサポートしてくれたJohn・Chiyu・Jordan・Emily には大変感謝しています。
Aidan・Mono・Eagle・Ham・Gaini それから 赳人には本当に本当にお世話になりました。たくさん支えてくれてありがとう。めちゃくちゃ楽しかったし、一緒に参加できて本当によかったです。
最後に、このアドベントカレンダーに誘ってくださったけいひぐさんカユカワさん、肉会もこの記事書くのもすごく楽しかったです。ありがとうございました。またどこかでお会い出来たら嬉しいです。
それからこれを読まれることはたぶんないけどせっかくなので…パパ・ママ、たっっっっくさん心配かけながら強行突破していくおてんば娘をなんだかんだいつも応援してくれて本当にありがとう。もう少ししたら落ち着くつもりなのであともう少しだけ許してください笑

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