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紙に書く効果


デコボコの紙の感触


「仕事の引き継ぎ、LINEでよくないですかー?」

前職で、若いメンバーに尋ねられた。
当時、業務の引き継ぎは紙のノートで行っていた。
7名ほどがシフト制で勤務していたため、出勤していないメンバーに向けて何かしらを書き残す。
これは私が勤める前からの習慣だった。

「ダメってわけじゃないし、そうしたいならやってみよう。」

こう答えたのは、新しいメンバーにしか出ないアイデアを試すのは良いことという思いから。
または、古い習慣に固執して、老害と言われることを恐れたのかもしれない。

この提案からグループLINEでの引き継ぎを試したが、程なくして紙ノートがメインとなった。

明確な理由があったわけではないが、メールやLINEは、本部やクライアントとのやりとりで埋もれるとか、小さい文字で見にくいといった声があったから。

わたしはノートでも別のツールでもどっちでも良かったのだが、

「馴染んだ習慣はなかなかやめられないよなー」

とその時は軽く流していた。


しかしある日、紙のノートの効果はこれかと思った出来事があった。


朝出勤してノートを開くと、あるトラブルがあり、マネージャーからチームメンバーへメッセージが残されていた。

ノート1ページを使って、トラブルの経緯や再発防止するためにどうするか、みんなに向けて書いてるけど、自分もできなくて悔しいと、個人的な思いも綴られていた。

思いついたまま、感情にまかせて書いたのか、何度か読み返さないと理解はできなかったが、要は

「他人任せにせず、主体的に仕事しよう」

ということだった。

間違った文字を粗く修正テープで消し、そのテープが削れて盛り上がるほどの筆圧で、また上から文字が重ねられていた。

筆圧に押されて、デコボコになった紙の感触が
数年経った今でもこのメッセージと共に思い出される。

紙に書くことは、書いた人の思いがことばだけでなく、筆跡や筆圧から感覚的に伝わる。


身体的な感覚として圧倒的に記憶に残るのだ。


声を聞くように感じる


普段は、感情的なことばを仕事の引き継ぎノートに書くことは少ないので、このようなケースは稀だ。

しかし、淡々と業務内容を書き連ねた文字も本人の個性がでる。

早口で簡潔に話す人
真面目で固い人
フランクで柔らかい人

仕事中は雑談をする機会が少ないが、ノートに残された文字や文章から、その人の声を聞くようにその人らしさを読み取っている。

もし職場や家族、友人同士など、密なコミュニケーションが必要なったときは、手書きのノートは有効な手段になる。


デジタルは効率的で生産性が高い、アナログはその逆という側面はあるが

《目的》や《大事にしたいこと》

に合わせてツールや方法を決められるようになりたいと思った経験だった。


紙に鉛筆で描く下絵


今回、この紙の引き継ぎノートのことを思い出した理由は、わたしが最近iPadでデジタルイラストを練習するにあたり、

「下絵もデジタルでよくないか?」

とじぶんに問いかけていたから。


お絵描きアプリには、鉛筆ツール、消しゴムツールがあるのに、わたしはわざわざ、紙と鉛筆を用意して下絵を描いている。

消しカスを掃除したり、下絵をスキャンしてデータを取り込むといった手間をかけているのだ。


じぶんにとってどちらがいいのか
またじっくり考えてみたい。

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