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短編小説の棚

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1話完結の短編小説を並べています。気になるタイトルがありましたら、手を伸ばしてみてください(*^^*)♪
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#カクテル

【短編小説】ズブロッカの男

水曜日。 今夜も彼はやってくるだろうか? カクテルグラスを拭きながら、「BAR BLUE」のオーナーバーテンダー大久保は考えていた。 あの「ズブロッカの男」のことを。 1 謎の男 ごく普通のサラリーマンだった大久保が、脱サラしてBARをオープンしたのは8年前のこと。オープン当初は「1年もったら盛大に祝ってやるよ」などと元同僚たちから嫌味たっぷりに笑われた。口下手な大久保は腹の中では奴らをぶん殴りながら、反論もせずヘラヘラと苦笑いを返していた。 月日は人を変化させ、環

【短編小説】ブルームーン

「決めた。もう、終わりにしよう」 天井との話し合いに結論が出て、私は勢いよくベッドから起き上がった。 ****** 彼と出会ったのは15年前。 25歳の時、大阪支店から東京本社に異動してきた2つ上の先輩。関西弁の明るいノリが楽しくて、あっという間に恋に落ちたっけ。 2年後、彼が大阪に戻ることになって一時は遠距離恋愛に。 「東京大阪? 近い近い!」 彼はそう言って笑い飛ばしたけど、結局続かなくなって5年で別れた。 その後ずっと音信不通だったけど、彼が会社を辞めて独立すると