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Weekly Quest 2021年12月6日号

毎週月曜日にWeekly Questと称し旬な話題を深く掘り下げて投資のヒントにしていければと思います。


米国株暴落の歴史を学ぶ


12月です。早いものでいよいよ今年もあと1ヶ月足らずで終わってしまいます。みなさま年初に立てた目標は達成できましたか?

コロナウィルスの変異体やFRBの金融政策方針により市場が大きく変動しています。直近高値から安値までのNYダウの下落率は約7%、Nasdaqの下落率は約5%のところです。この後の動きはどのようになるのかはわかりませんが、過去の暴落の歴史を振り返ることにより現在の状況がその前兆としてあてはまるのかを見ていきたいと思います。


過去の暴落は?

20%以上の下落として考えると米国株式市場でNYダウの暴落として概ね4回ぐらいいままでに暴落しています。

①1929年10月 ウォール街大暴落 下落率35%

②1987年10月 ブラックマンデー 数時間で下落率22%

③2008年9月 リーマンショック 下落率22%

④2020年3月 コロナショック 下落率37%

番外編:2010年5月 フラッシュ・クラッシュ 36分間で6%下落

と言った具合に分けられます。今回は番外編のフラッシュ・クラッシュについて説明していきたいと思います。

 "フラッシュ・クラッシュ"というのはHFT(High Frequency Trading)と呼ばれる高速売買による暴落です。

HFTについては「 フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち」という書籍に詳細にその手法が書かれていますがいわゆるアルゴリズム売買になります。デイトレーダーやスイングなどといった言葉がありますが、売買頻度からするとHFTには敵いません。だいたい1分間に5万回ぐらい裁定取引等を行うbotです。

最近日本株でもよくあることですが、「注文を出した瞬間にあるはずの板がなくなる」という現象があります。簡単にいうと我々が出した注文を見て我々よりも先にbotが売買してしまうことが原因です。(例えば買い注文を出したところに、我々よりも先に1円高い値段で買い付け、1円高く売りを出してくる)

一時期は米国でも問題になりましたが流動性を提供しているという理由でお咎めなしです。HFT業者というものは取引所の同じ敷地内にサーバーを設置することで、それ以外の投資家よりも板状況を1/1000秒早く見ることが可能になり売買できます。これを受けて米国の機関投資家などはまとまった注文を出さずに小分けにして注文を入力するようになりました。なぜなら注文の伝送速度と時間から取引所まで注文がやってくる距離が判明し、どこが大口注文を出したのか地図を見るとバレてしまうのです。

さてこのアルゴリズム売買も完璧ではありません。人が作ったプログラムですから当然予期しないトラブルが起きることがあります。アルゴリズムが何かの拍子で手仕舞いと判断してしまうと全部売却を始めます。さらに1社が大量に売り始めると他社も追従するようにプログラムされていますのでさらに売りが出るという流れになり一気に大幅にしかも短時間に下落してしまうということになります。

しかし中にはこういうイベント・リスクを待ち構えていて安値で買いを入れているプログラムもあります。暴落しきったところで全てを買うわけです。最近全面安でも売り気配のまま値段がつかないということが一部の小型株を除いてほとんどなくなったのは、安値をbotが買うからです。流動性を供給しているというのはこの事を表します。

さて、2010年5月のフラッシュ・クラッシュは36分間で株価が6%も下落しました。6%といえば例えば今のNYダウで換算すると$2000以上、たったの36分間で下落したということになります。人間の出る幕はありませんね。

この件については「なりすまし売買」も原因の一つだと言われていますが詳細は不明です。

このHFTが取引所の売買に占める割合が現在では70%〜80%ぐらいを占めています。取引所は売買してくれれば儲かりますので "HFTさまさま" ということになります。我々が市場で相手をしているのはアルゴリズム売買だということになります。こういった一種のプログラム売買が暴落時に拍車をかけた例では②のブラックマンデーです。今ほど高度化していませんがプログラムによる売買が盛んに行われ始めたのもこの時期です。

詳細は次回以降の講釈にて。

最後までお読みいただきありがとうございました。