![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13942189/rectangle_large_type_2_f06a0b048efa8677aaaa909b56db074e.jpeg?width=800)
THE 戦闘員 第4話
~戦闘員の仕事 斎藤という戦闘員 辻という戦闘員の改造手術結果~
テーブルに置かれた携帯電話がブーンと揺れた。
小野剛は携帯を見る。仕事だ。いつもメールで、秘密結社サタンから仕事の依頼がくる。今日の仕事は、秘密結社サタンへの勧誘だ。街中に出て、ビラ配りをする。時給1000円の仕事だ。小野剛は現場へ向かった。
「小野さん、おはようございます」
元気な声で斎藤が挨拶してきた。斎藤も戦闘員である。まだ新人で体もひょろひょろだが、格闘の技術はなかなかである。体ができてきて改造手術したら、いい怪人になるだろう。
斎藤「小野さんもビラ配りですか?」
剛「そうよ」
斎藤「いい人材見つけましょうね。そして一刻も早く、憎っくき仮面バスターを倒しましょう」
斎藤はどっぷり秘密結社サタンに全てを捧げている。
斎藤「小野さんは戦闘員になって長いんですか?」
剛「そうだね、長いかな」
斎藤「じゃあ、そろそろ怪人にならないんですか?」
剛「あー、まあ、そうね、うん」
小野剛ははぐらかした。気まずい雰囲気を醸し出して、これ以上聞いてくるなオーラを出した。が、どっぷりサタンに捧げている斎藤にはおかまいないしだった。
斎藤「なんでですか?確実に強くなれるんですよ。給料だって上がるんですよ」
斎藤の勢いがつく。
剛「…まあね」
小野剛は煮え切らない返事をする。ここで説明しよう。改造手術は失敗する恐れがあるのである。
斎藤「ひょっとして、手術、怖いんですか?」
剛「そ、そ、そ、そんなわけねーだろ。な、何を言ってるんだ君は。そ、そ、そ、そんなん怖くてサタンに一員なれませんよ。あ、悪の組織名乗れませんよ。バ、バ、バカなこと言ってんじゃないよ、ま、ま、全くもう。さ、最近の、わ、若い、や、奴と、き、きたら」
小野剛は汗だくだった。
斎藤「あ、そういえば聞きました?辻さん」
剛「辻君がどうかしたの?」
斎藤「改造手術、失敗したらしいですよ」
剛「え?…あ、そうなんだ。ふーん。…で、辻君は?」
斎藤「サタン首領が食いました」
剛「!!!。ふーん」
斎藤「でも辻さんも、サタン首領の血と肉になれて満足ですよ」
先ほどの汗はさーっとひいていった。
街の公園に公衆便所がある。凄い汚いというわけではないが、公衆トイレというよりは公衆便所である。そこで小野剛と斎藤は戦闘服に着替えている。
剛「更衣室で着替えたいね。公衆便所って。誰か入ってくるよ。こういう中途半端な状態見られるの、かっこ悪くない?」
小野剛はタイツは着たが、手袋と覆面はまだしていない。
斎藤「まあ確かに。完成されたかっこいい戦闘員を見てほしいですからね」
そこに一人に男性が入ってきた。しかし途中で足が止まった。体が震えだす。そして男性は段々と顔がこわばり、変態と微かにつぶやき、逃げていった。男性が見たものとは。
タイツに手袋と覆面はまだしていない小野剛と、裸に手袋と覆面だけしている斎藤の姿だった。
他の戦闘員たちも交じり、5人くらいでビラを配っている。
【君もサタンの一員になりませんか?】【特別手当あり】【改造手術者優遇】など書いてある。斎藤はどっぷりサタンに捧げているので、声を掛けるテンションも高い。
「よろしくお願いします。どうですか?一緒にやりましょうよ」
斎藤はどっぷりサタンに捧げているので、断られてもしつこい。
「そんなこと言わないでお願いします。一緒に世界を征服しましょ?ね?お兄さん。お友達と一緒でも全然いいんで。どうですか?…」
「やめるんだ!」
小野剛は聞き覚えのある声に反応した。仮面バスターだ。
斎藤「出やがったな、仮面バスター。いい機会だ。お前を倒せば、ビラを配るより、よっぽどいい宣伝になりそうだ」
斎藤は最近入ってきたばかりだが、能力が高いと戦闘員の中でも一目置かれている。斎藤自身も、一目置かれていると認識している。
剛「よせ、斎藤君。まずここはサタンに連絡した方がいい」
斎藤「大丈夫ですよ、小野さん。せっかく仮面バスターさんが来てくれたんじゃないですか。俺、おもてなししますよ」
斎藤はゆっくりと戦闘の構えをとった。小野剛は流れるような斎藤の構えに思わず見惚れてしまった。
剛「うーん。確かに斎藤君なら、勝てるとは思わないがいい勝負はしそうだ。よし、勝負してるその間に、サタンに連絡だ。蜂男さんが来るまで、斎藤君、持ちこたえてくれ」
小野剛はそう願った。次の瞬間。
「うわーーーーーー」
斎藤が吹っ飛んだ。早い。小野剛は後悔した。仮面バスターが出てきた時にこの言葉を発していればよかった。
「全員退散」
小野剛は斎藤を担いで逃げた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?