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THE 戦闘員 第4話

~戦闘員の仕事 斎藤という戦闘員 辻という戦闘員の改造手術結果~

テーブルに置かれた携帯電話がブーンと揺れた。

小野剛は携帯を見る。仕事だ。いつもメールで、秘密結社サタンから仕事の依頼がくる。今日の仕事は、秘密結社サタンへの勧誘だ。街中に出て、ビラ配りをする。時給1000円の仕事だ。小野剛は現場へ向かった。

「小野さん、おはようございます」

元気な声で斎藤が挨拶してきた。斎藤も戦闘員である。まだ新人で体もひょろひょろだが、格闘の技術はなかなかである。体ができてきて改造手術したら、いい怪人になるだろう。

斎藤「小野さんもビラ配りですか?」

剛「そうよ」

斎藤「いい人材見つけましょうね。そして一刻も早く、憎っくき仮面バスターを倒しましょう」

斎藤はどっぷり秘密結社サタンに全てを捧げている。

斎藤「小野さんは戦闘員になって長いんですか?」

剛「そうだね、長いかな」

斎藤「じゃあ、そろそろ怪人にならないんですか?」

剛「あー、まあ、そうね、うん」

小野剛ははぐらかした。気まずい雰囲気を醸し出して、これ以上聞いてくるなオーラを出した。が、どっぷりサタンに捧げている斎藤にはおかまいないしだった。

斎藤「なんでですか?確実に強くなれるんですよ。給料だって上がるんですよ」

斎藤の勢いがつく。

剛「…まあね」

小野剛は煮え切らない返事をする。ここで説明しよう。改造手術は失敗する恐れがあるのである。

斎藤「ひょっとして、手術、怖いんですか?」

剛「そ、そ、そ、そんなわけねーだろ。な、何を言ってるんだ君は。そ、そ、そ、そんなん怖くてサタンに一員なれませんよ。あ、悪の組織名乗れませんよ。バ、バ、バカなこと言ってんじゃないよ、ま、ま、全くもう。さ、最近の、わ、若い、や、奴と、き、きたら」

小野剛は汗だくだった。

斎藤「あ、そういえば聞きました?辻さん」

剛「辻君がどうかしたの?」

斎藤「改造手術、失敗したらしいですよ」

剛「え?…あ、そうなんだ。ふーん。…で、辻君は?」

斎藤「サタン首領が食いました」

剛「!!!。ふーん」

斎藤「でも辻さんも、サタン首領の血と肉になれて満足ですよ」

先ほどの汗はさーっとひいていった。

街の公園に公衆便所がある。凄い汚いというわけではないが、公衆トイレというよりは公衆便所である。そこで小野剛と斎藤は戦闘服に着替えている。

剛「更衣室で着替えたいね。公衆便所って。誰か入ってくるよ。こういう中途半端な状態見られるの、かっこ悪くない?」

小野剛はタイツは着たが、手袋と覆面はまだしていない。

斎藤「まあ確かに。完成されたかっこいい戦闘員を見てほしいですからね」

そこに一人に男性が入ってきた。しかし途中で足が止まった。体が震えだす。そして男性は段々と顔がこわばり、変態と微かにつぶやき、逃げていった。男性が見たものとは。

タイツに手袋と覆面はまだしていない小野剛と、裸に手袋と覆面だけしている斎藤の姿だった。

他の戦闘員たちも交じり、5人くらいでビラを配っている。

【君もサタンの一員になりませんか?】【特別手当あり】【改造手術者優遇】など書いてある。斎藤はどっぷりサタンに捧げているので、声を掛けるテンションも高い。

「よろしくお願いします。どうですか?一緒にやりましょうよ」

斎藤はどっぷりサタンに捧げているので、断られてもしつこい。

「そんなこと言わないでお願いします。一緒に世界を征服しましょ?ね?お兄さん。お友達と一緒でも全然いいんで。どうですか?…」

「やめるんだ!」

小野剛は聞き覚えのある声に反応した。仮面バスターだ。

斎藤「出やがったな、仮面バスター。いい機会だ。お前を倒せば、ビラを配るより、よっぽどいい宣伝になりそうだ」

斎藤は最近入ってきたばかりだが、能力が高いと戦闘員の中でも一目置かれている。斎藤自身も、一目置かれていると認識している。

剛「よせ、斎藤君。まずここはサタンに連絡した方がいい」

斎藤「大丈夫ですよ、小野さん。せっかく仮面バスターさんが来てくれたんじゃないですか。俺、おもてなししますよ」

斎藤はゆっくりと戦闘の構えをとった。小野剛は流れるような斎藤の構えに思わず見惚れてしまった。

剛「うーん。確かに斎藤君なら、勝てるとは思わないがいい勝負はしそうだ。よし、勝負してるその間に、サタンに連絡だ。蜂男さんが来るまで、斎藤君、持ちこたえてくれ」

小野剛はそう願った。次の瞬間。

「うわーーーーーー」

斎藤が吹っ飛んだ。早い。小野剛は後悔した。仮面バスターが出てきた時にこの言葉を発していればよかった。

「全員退散」

小野剛は斎藤を担いで逃げた。


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