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音と匂いが連れゆくもの hario / “S.A.S”


 あなたは音を聞いて、匂いが浮かび上がってきたことはありますか。逆に、匂いを聞いて音が流れ込んできたことはありますか。

 今日紹介する曲は、音と匂いの曲です。


hario / “S.A.S”

 音や匂いは、記憶を呼び起こす切っ掛けになることがあります。頭の奥にしまってあった記憶を、無意識に引っ張り出してくる。

 この作品は、音と匂いに結びつけられた記憶(感情)が体中を一瞬で巡ったときのような感覚を思い出させます。

 歌詞を見ていきます。

「濡らした膝を見つめながら流した」
「震える手でかき鳴らした最初の」
「掃除の時間に何処からか近く」
「部屋まで染み込んだ灯油販売の」

 初めの歌詞たちに言葉を続けるなら、次のようになります。

濡らした膝を見つめながら流した
震える手でかき鳴らした最初の音
掃除の時間に何処からか近くの音
部屋まで染み込んだ灯油販売の音

 涙は自分が零すときは、つうっと伝う音を感じることができます。そのため、最初の歌詞の塊は、音についてが描かれているといえるでしょう。

 次の歌詞の塊を見ていきます。

「雨で湿った体育館の中」
「いつもの給食室から立ち込めた」
「小さいころ住んでいたマンションの」
「其処から遠く商店街突き抜ける」

 同じように言葉を続けるなら、次のようになります。

雨で湿った体育館の中の匂い
いつもの給食室から立ち込めたの匂い
小さいころ住んでいたマンションの匂い
其処から遠く商店街突き抜けるの匂い

 この歌詞の塊は、匂いについて描かれていると言えるでしょう。

 そうです。この作品のタイトルは、S.A.S=Sound And Smellです。歌詞は次のように続きます。

それはとある街角
それはとある縁の錆びたスピーカーから
確かな再現度で流れ込む

 ある街角で、記憶を呼び起こす音と匂いにこの曲の主人公は、出会います。その記憶は、恐らく小学校でしょうか。(掃除の時間や体育館、給食室といった学校を思わせる単語があるため。)

 サビで記憶と深く結びついた感情が、感覚が主人公の五感に流れ込んできます。

 そんな経験をしたことがなくても、この作品は追体験をさせてくれます。上手くいえませんが、この曲を初めて聴いたときに何かが流れ込んでくるのを感じました。

 また、ささやくような温かい重音テトの歌声とサビ前から癖のある力強い歌声に聴きいってしまいます。この曲は、重音テトさんの声の作品だと強く思います。

 さて、今日は重音テトさんの誕生日で天気が雨だったので、この作品を紹介しました。

 サムネイルのテトさんは、雨の中で何を思い出しているのでしょうか。そんなことをふと思う春の雨の日でした。

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