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週末エッセイ#45「春の終わり、夜の公園」

春の終わりの休日。友人とカラオケに行き、しこたま遊んで、しこたま喋った後、なんだかまだまだ名残惜しくて、夜の公園にくり出した。


腕時計を見ると、もう21時半を回っている。こんな時間にまだ家路にもつかず公園に行くなんて、なんだか少し背徳感がある。


都内の1日利用者数ランキング1位の駅の近くにあり、高層ビル群に囲まれたその公園は、遊具がたくさんあって、広場や池もある。昼間は子供たちやサラリーマンの憩いの場になっているようだ。


さて、今の時間はというと、ベンチに座って談笑しているカップルや、かなり幅のある大きな滑り台をすべっている、少しやんちゃな大人たちがいる。暗くてちょっぴり怖いけど、楽し気な雰囲気だ。


「きゃはは!この滑り台、ウォータースライダーみたい!」

20代前半くらいの女の子が楽し気な声をあげている。

ウォータースライダー…

すごく気になる。でも、さすがに滑り台を滑って服がどうなってしまうのかとかそういう事をを考えると、私たちは滑りには行けなかった。


この公園は遊具が相当充実している。ブランコも何台もあるし、スプリング遊具も、動物の形のものから船の形をしたものまで、色んな種類を取りそろえている。アスレチックも結構な高さだ。
でも、今の時間帯は子供はほぼいなくて、周りにいるのは大人たちばかりだ。


外はもう暗いから、遊んでいる人たちの顔はあまり見えないが、楽しそうな声があちらこちらから聞こえてくる。


私たちは幸い先約がいなかったブランコに落ち着くことにした。昼間の公園だったら当然子供たちが乗っていて、「いいな~ あんな時代もあったね~」と遠目に眺めながらベンチでおとなしく談笑していただろう。

でも、今はほんの少しだけ、私たちがこの場所を貸してもらうね。


ゆーらゆらと揺られながら、私と友人は今日の楽しかった1日を振り返ったり、また明日から日常に戻ったときに見返す用の楽しい動画を撮影する。


楽しく揺られていると、どこからともなく誰か(もちろん大人)がやってきて、ブランコから数メートル離れた場所にあるスプリング遊具にまたがり、ハーモニカを吹き始めた。曲というより、ハフハフと音を鳴らしているだけのようだが、不思議と癒される。

ふぁー…

ふぉー…

ふぁー…

ハーモニカの音を聞きながら、私たちは休日の余韻をたっぷり楽しんだ。

ずっとこの時間が続けばいいのにと思いながら、ブランコに揺られた。

高く漕ぐと気持ちがいいけれど、さすがに子供の頃のような高さで漕ぐと、少し耳がもわわんとなる。

もうすっかり大人の三半規管になってしまったのだろうか。

子供の時だから出来たこと、大人になって出来るようになった色んなことに想いを馳せた。

となりのブランコに、犬を散歩させている親子が来た。小学校低学年くらいとみられる少女がブランコにヒョイと飛び乗った。一緒に居たお母さんは、手に持っているリードの先にいる犬と、自由に遊ぶ娘を交互に気にしていた。

思う存分漕ぐと、少女は少し先に歩き始めたお母さんと犬の所へ合流した。


私は本当に名残惜しくなってしまう性格で、なかなか「腹八分目」の時間の使い方が出来ない。おなかいっぱいになるまで、楽しい時間が続いてほしいと思ってしまう。
明日があるとわかっていても、話題は尽きないし、帰りたくない。ずっとブランコに揺られながら、今日の思い出と目の前の風景を、飴を舐めるようにじっくり味わって余韻に浸っていたい。

「したいようにさせてもらう」「したいようにさせてあげる」って、難しいなぁと、大人になってから痛感するのだが、

夜の公園は、大人も子供も「したいようにさせてくれる」場所だなぁと思った。


……22時を回った。
もうさすがに帰らないと、明日に響く。

私たちは公園を後にして、駅の方に向かった。

夜の公園は、束の間の現実逃避に最適な場所だった。




…なんでこの話を9月に…??

ただただ筆が遅過ぎて温めてしまっていただけです……

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