石原千秋「線を引くことーたった一つの方法」『大学生の論文執筆法』

要約
石原は本稿において、論文執筆のたった一つの方法として、「線を引くことを」を提唱する。石原は本論において、「線を引くこと」とは二項対立の概念を作成し、論じる方法である。例えば、人間という概念に対して<男と女>、<黒人と白人>、<浪費家とケチ>などと、いくらでも線を引くことが可能である。それは自分なりの世界を持つということで、自分なりの世界を創るということでもあるため、知的能力を必要する。
また、いくつも線を引くことによって論を重ねあわせることによって扱う対象と対象項に差異を作り出し、対象の輪郭をはっきりとさせることができる。すでに論じられている概念や対象に対して、すでに引かれた線を引き直す、引かれた線を消す、引いたことでできた差異を問題とするなど二項対立の概念を作成する。石原は杉田敦の論文を例にとりそこで、国境における、「私」と「彼」の問題、そして「私」と「われわれ」(国のアイデンティティ、ナショナリズム)の二項対立を論じ、さらに「彼」と「彼女」の二項対立を論じ、そのうえで、「彼」と「われわれ」という二項対立を構成しているのだ。さらに論を進める上でポイントなのは、一つの対象を、水準を変えて説明をすると論に厚みができることになる。
また同時に、石原は線をひくことの暴力性についても述べる。概念をひとつ線を引くことによって、ある対象を規定した外部が生まれる。

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