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論文の要約

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2023年6月の記事一覧

【要約】内山田康「芸術作品の仕事ージェルの反美学的アブダクションと、デュシャンの分配されたパーソン」『文化人類学』(2008)

【要約】内山田康「芸術作品の仕事ージェルの反美学的アブダクションと、デュシャンの分配されたパーソン」『文化人類学』(2008)

(1) 要約

本稿は、文化人類学者アルフレッド・ジェルが芸術作品を西洋中心主義に基づいた美学に反し、ジェルの独自の概念であるインデックスの作用をもたらすものであるということを明らかにすることを目的としている。

まず、本稿ではエージェンシーの働きを解説している。著者によれば「ジェルは芸術作品の中とその周囲に生ずるエージェンシーの働きに光を当てながら、作品が仕事をする仕組みと、その効力を試みている

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【要約】小田部胤久「ゴシックと表現主義の邂逅ーヴォリンガーによる「ヨーロッパ中心主義的」芸術史の批評とその行方」『美学藝術学研究』21(2003)pp.81-114.

(1)要約

本稿では、20世紀前半にスイス・ドイツで活躍した美術史学者ヴィルヘルム・ヴォリンガー(1881−1965)の理論的変遷を「ゴシック」と「表現主義」との関係に着目し考察するものである。特に1907年から320年代末までの、変遷について検討をし、彼が歴史を幾度にも重ね描きしたことへの理論的正当性を明らかにする。
第一節では、ヴォリンガーの有名な著作『抽象と感情移入』(1908)を主に取り

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【要約】R・クラウス「アヴァンギャルドのオリジナリティ」(1985)

(1)要約

本稿の目的は、20世紀以降発展していったアヴァンギャルド芸術がオリジナリティという要素を求めたことを考察するものである。この考察では、ロダン彫刻の複製制度を指摘し、新しさを求めるアヴァンギャル芸術の作品にはオリジナリティを見出そうとする試みであることを明らかにしていく。ここでいうオリジナリティとは、「形式的な発明というよりは、生命の源を指示する有機体論的メタファー」であり、「根源的な

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【要約】ロザリンド・クラウス「グリッド」『アヴァンギャルドのオリジナリティ』(1978)

(1)要約

本稿は、近代芸術作品における「グリッド」表現を考察している。この考察では、グリッドが近代以前に作品の表彰として現れなかった近代特有の表現であることを明らかにしている。

まず、クラウスはグリッド表現には、「近代(モダニティ)を宣言する方法」として二種類の要素ー空間的なものと、時間的なものがあると主張する。
空間的な要素
空間的な要素において、グリッドは芸術領域における自律性を示す。そ

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【要約と学術的意義】中島彩乃「クレメント・グリーンバーグの工芸観ー装飾との関わりを中心に」

(1)要約

本論は、アメリカのモダニズム絵画を唱えたとして有名なC.グリーンバーグの工芸に対する批判的な態度を、特に<絵画における装飾性>の観点から明らかにしている。
まず本論では、グーリーンバーグのミニマリズム彫刻に対する批評的な態度を例にだす。彼は、ミリマリズム彫刻をグッドデザインと揶揄し、徹底した職人技に見られるような表面仕上げ(=オブジェクト)を非芸術であるという主張に着目している。また

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