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僕ら出会わなければよかったのに

ついにイボ痔になった。なってしまった。こんな日が来るなんて誰が想像しただろうか。

これまでの奴は月に3日ぐらい嵐のように来て、すぐに去っていくだけの、風のようなものだった。(※生理前後の切れ痔のこと)
出血は大したことなく、痛みは瞬間的なものだった。10分も経てば忘れてしまう、ちょっとした突風のような奴だったのだ。

だから、心のどこかで甘く見ていたのかもしれない。痔という、人間に備わっている基本的で、極めて重要な機能を脅かす恐ろしいその存在を。

小学生の頃から愛読していた漫画『銀魂』では痔に悩む忍者がたびたび登場していた。服部全蔵という痔と戦う戦士(ソルジャー)たる彼は、ウォシュレットがないトイレでは、肛門から激痛を送り出してくる痔という悪魔によって耐えがたい苦痛を受けていた。(伏せ字をする意味は特にないが)ボラ●ノールなる薬(戦友)とともに、それと戦っていた。
子供のころ、わたしはその痔ネタに散々笑っていた。「大変なんだろうけど恥ずかしいな(笑)」ぐらいのノリであった。いま思えば、痔の想像を絶する痛みに苦しむのは当然であるし、恥ずかしいとかそういった感情を失うぐらいには辛いことで、もう笑えないぐらいしんどいのだが、仕方ないのだ。どれほどの苦痛を伴うものか理解できなかったのだから。
(痔を持ちながらもネタに昇華するその強さがほんとうにすごい)

さて。
何故、いまこのタイミングでイボ痔が誕生してしまったのか。
何度も何度も原因を考えた。放っておいた切れ痔が悪魔に変わってしまったのか。運動不足か。酒の飲み過ぎか。はたまた、座りすぎか。

考えられるものは複数あるが、思い当たるのはひとつ。環境の変化による座りすぎである。

環境の変化というか、テレワーク化によるところが大きかったのではないかと私は考えている。「痔になったのはテレワークのせいだ!」というのは、いわゆるクソリプ同然の、突然の飛躍なので、その間の部分を記していきたい。

いままでは、椅子に座って仕事をし、朝と夜には往復で3時間弱移動していた。しかしこの状況下においてテレワークに移行した結果、こたつで作業するようになったわたしは、日がな一日中こたつに入り、床に座りながら仕事をしていた。

椅子というのはすごいもので、重心を分散させていたらしいのだ。だから、痔になるリスクを分散していたともいえる。
そう、床に座るようになったことで、すべての重心は臀部にかかるようになった。そして、わたしを苦しめる悪魔が生まれる土壌を育てるに至ったのではないか。

テレワークのせいだ、というよりは自宅でテレワークを、長時間座ったまま勤務をするための環境が整備されていなかったことに原因があるといえるだろう。それが、イボ痔の誕生につながってしまったのではないか。

座椅子があれば、重心を分散させられる何かがあれば、(そして、もう少し痩せていたら、)この苦痛に出会うことはなかったかもしれない。この戦いに身を投じる必要はなかったのかもしれない。突風のように過ぎ去る切れ痔に時々苦しみながらも、ただ普通に生きていけたはずなのだ。

どうか、テレワークを始めるひと、すでに始めているひと、床に座り続けるひとびとが、良き戦友(とも/座椅子)に出会うことを願ってやまない。

どうか、この過ちを繰り返す人が出ませんように。そして、どうかボラギノールよ効いてくれ。(手術に至らずに済みますように。)

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