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最後に心が折れる時

 この記事を読んでいる人達は就きたい職に就けただろうか?僕は就けなかった

 僕にはクリエイターとして生きるしか道がなかった。過労で倒れるまでもなく、僕に定時出社という習慣は出来なかったからだ。どれだけ目覚ましを付けようと1ヶ月に1回は遅刻する。朝が起きれないのだ。

 僕が実家暮らしの時は学生時代どうやったのか?分からない。だが予想は出来る。起こしてくれる家族が居たのだ。実際にほぼ毎日無理やり起こされて食事を摂っていたと思う。集団下校というのも効いてただろう。

 大学進学時には本当に参った。友人がたまに気を利かして寮の朝食を持ってくれたりしてたが、それでも毎日世話を焼けない。友人も急いでいる時があったのだ。そしてめでたく単位が足りず留年、中退と成った

 中退後即、社会人になって交替勤務で家族とのリズムがズレたお陰で、家族が起きている時間に出社しなければならず、寝坊で遅刻のケースはほぼ減った。これしか無いとすら思った。もし愛する人と結婚できた時はクリエイターにはなれないのでこの交替勤務で寿命が尽きるまで働かなくてはいけない

 社会人勤めには『定期収入』があるが、それは『定時出社』という義務を達成できなくてはいけない。僕にはそれが無理なのだ。何も努力してないわけではない、必死に抗っても決まった時間に起きれない、だからこそ自営業に就くしか無く、そして僕には絵を書くしか能がなかった。だからこそ結婚相手には不定期収入の僕で納得して貰わねばならない。

 僕の女性への絶望は、ここの一点に集約される、金を得る能力が、朝を起きるという無能で達成できないことを納得して貰わねばならない。だが、そんな女性は僕の人生に皆無だった。一人くらいは?という疑い深い人は適当に女性の男性への要望に関して調べると良い。稼ぎのない男に存在価値はない

 だから結婚しないのであれば、話は別だ。中退後は働きながら絵の練習を重ねた、恐らく筆を執らなかったことはない。毎日頑張った、だが現在のネットに溢れる、もしくは書店にあふれる表紙を飾るイラストの美麗さに貴方は感動しているだろうか?だがそれは同じ絵描きにとっては地獄を突きつけられていることを理解して欲しい。恐ろしい速度でクオリティが上がっていき、市場に要求される水準に追いつかれて、最後には追い抜かれて遜色ないクオリティの『落書き』をネットにアップロードできるアマチュアが跋扈する現在は僕にとっての屍山血河に他ならない

 僕は腱鞘炎で長時間絵を描き続ける事が出来なくなったが、それを理由に筆を折る理由には成らなかった。もう既に全てのリソースを注ぎ込んだのだ。魂が折れない限り僕は絵を描くのだ

 その筈だった。腱鞘炎で痛む利き腕を意に介せず書き続けた甲斐が在ってプロの人に『次の作品を描いてきて』と言われた。そこで僕は力尽きた。僕の魂は折れないのではなく、痛覚がなかったのだ。

 僕の意志と関係なく今度こそ再起不能になった。鬱病である。これで僕はかつてのように起きている時間全てを研鑽に費やすことが出来なくなったのだ。

 そもそも働きながら、って時点で無理臭かったのだ。処方される薬で日中ボヤケた意識で全ての人生の場面で詰んでいた己を考えていた。生殖、つまり異性愛に負けて、就職、社会への参加も敗北し、人生、生命だけ何とか繋いだだけでしか無い己には何もない事に絶望した。もう、今の『お金が貰える絵』を見ながら心が折れたのだ。

 サボらないウサギに置いていかれる亀が僕だったのだ。それから常に自殺を考えている

この世界に怨念を振りまく(理想:現状は愚痴ってるだけ)悪霊。浄化されずこの世に留まっている(意訳:死んでない)