日記0442あるいは肉詐欺家風そして
「だいたいわかった」
私はぼんやり宙を見ながらひとり呟いた。悟った、とは違う、だいたいわかったという高慢な諦観にも似た感情。
「わかったわかった」
しっていることの範囲は狭い。でも、知り尽くせたと思えるのなら。
「わかったよ」
予想通りがつまらないなら、お前が混沌になるしかない。
「できるかな?」
強い風が吹く。盗っ人たちが列をなして狭い部屋に入っていき、色んなものを運び出す。
「そんなことのために……」
部屋では人がきっと殺されている。たかだか数万円を盗むために。
「なんでぇ」
盗っ人が残したバレーボール。少し転がしてみた。
坂をどんどんボールは下っていき、追いかけているうちに昔懐かしいおもちゃ屋についた。日焼けしたガシャポンが並んでいる。私は適当にコインを入れた。何も出なかった。
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